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野外フェス

 先日久しぶりに野外フェスに行った。5月の空はあくまで青く、心地良い風が頬を・・・残念ながら撫でてはいかなかった。既に太陽は夏の光と熱を放っており、暑いことこの上なかったからだ。過去には本格的な俗にいう『夏フェス』と呼ばれるクソ熱い真夏の催しにも何度か行ったことがあるが、次の日にまで影響してしまうに及んで、最近は控えている。

 この日は夏のように暑かった。案の定ライブ後半に差し掛かる頃には もはや笑顔は途切れ無口になってしまい、同行者には失礼なことになってしまうことを止められなかった。トリのミュージシャンの出番を待つ頃には精も根も尽き果てて、置物のようになってしまう私。ライブ参戦は春までと秋以降だと心得ていたのだが、最近の気候の前にはその認識さえ見直さねばならなかったのかもしれない。

 ところでファンというものの中には そのバンドのことならディープな情報まで全部知ってるのではないかとも思える ヌシのようなレジェンドがいたりする。そんな方々のXやインスタのアカウントには、自然にそのバンドが大好きなモノどもが集い 情報を交換したりしているが、野外フェスなどではそんなヌシたちが、そこここで周囲に存在感を放っている光景を見かける。とはいえ もちろん素人のコミュニティ故、その規模は最大でも50人程度の集団に過ぎないのだろうが、観客数が万を超える大規模フェスの場合には、色んなバンドのファンリーダーともいえるコアなヌシどもが観覧エリアに100人以上点在しているのだろうと予測する。

 フェスの会場としては 有名無名それぞれ色々あるけれど、今回参戦した在阪のFMラジオ局が主催したフェスの会場であった大阪 万博公園では、偶然そんなレジェンドと席(スペース?)を隣り合わせることになった。ほとんど話をする機会の無かったその方と親しく話ができたことで、はからずもミュージシャンの新鮮な情報の数々を仕入れることができた。

 フェスというものは30〜40分位のステージが次々に連続していくのだが、1つのバンドのステージが終わると、入れ替えのためにスタッフが慌ただしく次に出演するバンドの準備をする。楽器の音のバランスや 例の『ハ、ハ、ヒィーイ、ツィ、ツィ、アーア、チェ、チェ・・・という、素人にはよくわからない音声関連のチェックも出演者ごとにいちいち行われ、それらの音を聞きながら観客はイヤでも次のバンドへの期待感が高まってゆくのだ。

 バンドとバンドのインターバルの時間は、次の演者は誰なのかを予想するのが観客の楽しみでもある。今回私は隣のレジェンドに『次はだれでしょうね?』と話しかけてみた。しかし私よりやや年上であろうその女性は、『◯◯◯ですよ』と即答するではないか。『エ?どうしてわかるんですか?』と思わず訊いた私に、『機材でわかりますよ』とこともなげに答えるレジェンド。そのお方は用意されているキーボードやドラムを見てバント名が特定できるのであった。私はため息とともにその方の横顔を見つめた。

 帰り道 私は疲れ切ってはいたが、太陽の塔の横顔を見ながらその方とのやり取りを思い出し、レジェンドのレジェンドたる所以がわかった気がした。

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