仏談 ー七福神 by水曜日のカンパネラー
おめでたい象徴、それが七福神。友達の家に行くと、なんだかよくわからないけど 玄関に神様が乗った宝船が置いてあることが多かった気がする。なんなら今でもなのかな。
この神セブンの乗り合い舟と、もう一つの玄関オブジェの雄である シャケを咥えた木彫りのクマとでは、どちらの方が設置率は高いんだろう?
ということで今回は七福神の中から馴染み深い方を抜粋して紹介したい。7神もいらっしゃると、どうしても影の薄いお方もありますので(笑)
《毘沙門天》
大阪には信貴山という霊峰があって、頂上近くに開かれた朝護孫子寺の虎は関西ではかなり有名である。ここに祀られているのは戦いの神、毘沙門天だ。◯◯天という神様(仏様)の多くは、古くはインドあたりの神だったのだが、仏教サイドが勝手に自分たちを守護させるために子分にしているという事情があり、ズルいなぁと常々思っている。
実はこの毘沙門天、七福神の一員としての顔の他、四天王というユニットのメンバーでもあり、そっちでは多聞天という別名を使っている。さらに仏像界を見てみるとソロでの活動もあり、正に八面六臂(はちめんろっぴ。仏像関連の言葉で8つの顔、6本の腕という意味。有名な奈良興福寺の『阿修羅』は三面六臂)の超人気スターである。
《弁才天》
この弁才天=弁天さまにつきまとう 淫靡な感じは一体どこから来るんだろうか? 昔から美女を表す際に比喩として使われることも多い彼女は、仏像で表現される際にも全裸のものがあったりして驚く。かと思うと日本古来の神である『宇賀神』と習合(ま、くっ付いて混ざったんですね)して、頭に老人の顔をした蛇を乗せていたりするのである(さらに蛇だけの弁才天像さえある)。
元々はヒンドゥー教に登場する川の女神だったところに加え(だから水の上に祀られていることも多い)、色んなとこで色んなものをくっつけられたもんだから彼女のご利益は水に関わることはもちろん、学問や音楽などの芸術・芸能をもカバーしながら、日本に渡ってきた後は さらに財運の神様としても崇められるようになった(弁「財」天と表記されるのはそのこじつけだ)から、今やあらゆる願いを聞きとどけてくれる 万能の神みたいな様相を呈しているのである。
《恵比寿》
古事記の記載では、イザナギ・イザナミの2神が子をもうけようとした際、女神であるイザナミの方から男神のイザナギに声をかけた事が原因で、障害児が生まれたという。これだけでもジェンダー関連の活動家が騒ぎ出しそうなのに、あろうことかその子は葦船に乗せられ海に流されてしまう。神様ともあろうお方が、なんともやることは血も涙もないのだ。
しかしヒルコと呼ばれたこの憐れな子供は、流れ着いた地で後にエビス神となって 年中タイを抱えて笑っていることになる。どこでどうなったか商売の神様『えべっさん』はその地位を確固たるものにしているのである。大阪のバスケチームである『大阪エヴェッサ』の名も『えべっさん』が起源であることは間違いない。
私のウチからだと大阪の今宮戎や全国にある戎神社の本拠地ともいわれる西宮戎もいいのだが、賑やか過ぎてどうも合わない。だから毎年堺市にある菅原神社という比較的静かなお社で、家族や仕事の無事を祈り、熊手には派手過ぎない飾りを、多過ぎず付けてもらい、高過ぎない金額で買い求めることにしている。
《大黒天》
日本に渡ってきた時に『読み方が同じだからまぁいっか?』ということで、大国主命(おおくにぬしのみこと)と習合されてしまった神である。島根県出雲大社には巨大な大国主命の像が本殿に向かって右側の参道脇にあるが、完全に人の姿で表されている。
小槌と大きな袋を持った姿の大国様。しかしそもそも大黒天は大国主命とは全く違う神で、偉大なる暗黒の神という字の通りの『大黒天』は、その名前の通り青黒い身体に憤怒相(怒りの形相)をしている祟りをなしたりする鬼神なのである。因幡の白兎は有名な話だが、あの歌では『大国主命』と『大黒天』が見事に習合してしまっていることがわかる。
〽(中略)大黒様は 誰だろう 〜 ♪
大国主(おおくにぬし)の尊(みこと)とて 〜 ♪
国をひらきて 世の人を 〜 ♪
助けなされた神様よ 〜 ♪
(童謡『だいこくさま』より)
これは大ウソだ(笑)
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水カンの楽曲『七福神』では新年のカレンダーの撮影のために都内某所で、毎年7神が顔を合わせることになっているらしい。ちょっと狭い宝船(6人乗りに7人乗るんだと)には他に『布袋尊』・『寿老人』・『福禄寿』という尊格を含めて全員でナナレンジャーと歌われているのだが、いかんせんこの三尊は話題が無さすぎるので、いつあるかわからないけどまたの機会ということで(笑)
〽(中略)後光が差しちゃうから 〜 ♪
カメラのフラッシュは強め 〜 ♪
それぞれ異国の地からやってきた神様 〜 ♪
福を運ぶナナレンジャー 〜 ♪
特撮オファーも待ってる 〜 ♪
はためく大漁旗 〜 ♪
来年も幸あれ 〜 ♪
(中略)
少し詰めれば乗れそうだ 〜 ♪
宝船 ちょっと狭い 〜 ♪
(水曜日のカンパネラ『七福神』より)