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「W₂C₄」の暮らしとは?『女ふたり、暮らしています。』を読んで。


本をひたすら読みたい。

じゃあ好きなだけ読めば?なのだけど、家にいると何かと、やりたい事、やらなくてはいけない事、気が散る事、猫が気になる、、、などなど、「読書できないあるある」があって。
夜は夜でしょぼしょぼの目でなかなか字を追うのも辛く寝てしまう。。。。

読みやすい手軽なコミックエッセイや絵本系、雑誌などは読んではいたのだが、

一冊まるまる活字!活字祭り!!!っていう本は読めていなかった(どんな本だよ)

いい訳なのだが、そんな訳で最近小説やエッセイなどでも活字中心なものをじっくり読めていなかった。

そんな中、出会った一冊の本は結構分厚いにもかかわらず、スラスラと読めて、久しぶりになんだかいろいろなものを充電&開放してもらえた気がした。

【シングルでも結婚でもない、女₂ 猫₄ の愉快な生活】

帯を見ただけで興味津々。

キム・ハナさんは、「読んで、書いて、聞いて、話すこと」を生業にし、書籍出版やラジオ、ポッドキャストでも活躍している。
彼女はとてもきれい好きで、少ないものを厳選して、長く使う事に長けている。料理は苦手だけど、爆弾が落ちたようなめちゃくちゃに散らかったキッチンをまるで引っ越してきたばかりのようにピカピカにキレイにする事は大好き。
旅行先ではスマホを構う事よりも、現地の空気を肌で感じ記憶する事に重きを置き、服装は最小限、毎日違う服のコーディネートに悩むくらいなら二日連続で同じ服を着ている事を選ぶ方が気が楽。

ファン・ソヌさんは、20年にわたって雑誌制作に携わり、エディターとして活躍。現在はその頃身に着けた、コンテンツ制作とキュレーション技術を生かして仕事を持っている。
彼女はショッピングを喜びやストレス解消の手段と考え、手に負えないほど買い込む。片づけは大の苦手で、カラスがキラキラ輝くものを集めるように、ものを集めるのが好きだけど捨てられない部屋はまるで「巣(ねぐら)」のよう。
料理を振舞うのが得意。旅行先でもネットの世界とつながる事で、せわしなく情報を検索し計画を練るタイプ。

まるで正反対のようなふたりの性格と暮らし。
だけど、驚くほどそっくりな面も持っている。

ふたりとも同じ年に生まれたそれぞれの兄がいて、兄の名前も女のような名前。兄の方が可愛いと言われていたところまでふたり一緒だ。
同じ年にソウルに上京し、同じ大学の同じ学部に通っていて
その上音楽の好みやお酒好きなところも似ているから、大学時代から通っているカフェや飲み屋もダブっている。
音楽フェスと聞けばすべてと言っていいくらい、参加しているところも一緒だった。

冗談が大好きで、ユーモアのセンスも似ている。

なにより、ふたりはそれぞれ二匹の猫と暮らしている点までいっしょだった。

そして同じようなタイミングでふたりとも長年続けたひとり暮らしから脱却する、別の形の生き方を模索していた。

全く正反対なところと、驚くほどそっくりなところもある「ふたり」。
女2人猫4匹の「かぞく」

「シングルでも結婚でもない、分子式家族」となったふたりと4匹の暮らしを、二人それぞれの視点から、だいたい交互に書き綴っているエッセイ。

写真は少なめだが、時々出てきて、部屋の様子、こだわりの家具、美味しそうな料理、友人たち、猫たち、ふたりの暮らしの様子が垣間見られる。

本書の冒頭ですでにキム・ハナはこう記述している。

女と男と言う二つの原子の固い結束だけが家族の基本だった時代は過ぎ去ろうとしている。この先多様な形の「分子家族」が無数に生まれるだろう。
分子式にたとえるなら、私たち家族はW₂C₄といったところだろうか。
女ふたりに、猫が4匹。今の分子構造はとても安定している。

本書の終わりは、ファン・ソヌのこんな言葉で締められている。

生涯を約束し、結婚というしっかりした形でお互いを縛る決断を下すのはもちろん美しいことだ。でも、たとえそうでなくても、ひとりの人生のある時期にお互いの面倒を見て支え合える関係性があるとしたら、それはまた十分に温かいことではないか。個人が喜んで誰かの福祉になるためには、法と制度の助けが必要だ。以前とは違う多様な形の家族が、より強く結ばれ、もっと健康になれば、その集合体である社会の幸福度も高まるだろう。

「W₂(女ふたり)C₄(猫4匹)」の暮らしは、いつものほほん平和な訳ではない。あれだけ生活の癖が違うふたりの人間が一緒に暮らすのだから、大喧嘩したり、ぎくしゃくしてしまう事だってある。
そういう面も包み隠さず(もちろん全部ではないだろうが)本書に綴ってある。
だけど
キム・ハナが1週間出張でいなかった時、久しぶりの一人暮らしを満喫しながらも、帰宅時には、一日の終わりにバカみたいな冗談を言える人、くだらない話をできる人が帰ってきたと嬉しくて涙を流したファン・ソヌ。
大人になってまで、転んだり、ぶつかったりしてしょっちゅう怪我をするファン・ソヌに、その度に驚きと心配で泣いてしまうキム・ハナ。

読後はもっと続きが読みたい。もう読み終わってしまったと、ちょっとした寂しさが訪れるけれど、

波のように揺らめくプラタナスが見える部屋で、彼女たちが今日も生き生きと暮らしている様子を想像すると、なんだかポカポカと温かい気持ちになってくる。

今度は何を読もうかな。

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