2 ある父の記 ~がん告知から【日記・メール編】~


2.1 再び父との濃密な時間


 2018年秋,総合病院で,胃がん末期ステージⅣの告知を家族で受けた.


 まさかおやじが-.全く予期していなかった.

 この瞬間から,日常が一変した.


 病院知らずの父だった.

 一時,腎臓の病気を患い,体重や体力が落ちていたものの,がんとは無縁だと思い込んでいた.

 10月には,わたしが通う社会人大学院,そして横浜を母と3人で久しぶりに旅した.たびたび休む姿に,80という年齢を感じた.

 その直後,胃に違和感があると近くのかかりつけ医に行き,総合病院で詳しく調べることになった.


 検査結果を聞いた日のことを,今でも鮮明に覚えている.

 父と一緒にいすに座るなり,消化器内科の医師から病状が淡々と伝えられた.がんの告知は初めて.よくドラマでは身内だけに告げられるシーンがあるが,実際は違うようだ.


 ショックだった.


 現実ではない,夢のようで夢ではない,
 これから何が起こるか分からない恐怖が襲ってきた.


 父は冷静に受け止めていた.手術はできず,化学療法をしていくことになる.副作用もある.

 先生に従う.ただとにかく苦しく,痛くないように-.
 そうお願いしていた.


 2018年11月1日,抗がん剤治療が始まった.

 当初,副作用は思ったより少なかった.父自ら車で通院したほどだ.

 ただ,しばらくすると効かなくなり,薬を変更.そのたびに周りが落ち込んだ.見つかった動脈瘤の手術も含め,何度か入院した.

 4番目,新たな免疫治療薬「オプジーボ」に期待したが,3回の投与で中止となった.


 施せる治療はここで終わった.


※毎週末に掲載します

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