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父みたいな人とは結婚したくない【家族エッセイ】

父のことは大好きだけれど、父みたいな人とは結婚したくない。

父の名誉のためにまずは父の、父親として尊敬している部分や好きな部分を挙げてみようと思う。
今から30年程前、男性が積極的に育児をするのは恥ずかしいというような価値観が蔓延していたらしい頃から父は積極的に子供の世話をしていたそうだ。
私が生まれたばかりの頃、母は当時4歳の姉と2歳の兄の面倒をみながら新生児の世話をするのはとても大変だったと思う。父は土日を使って姉と兄を連れてスキーに出掛けた。旅先の旅館では何も言っていないのにシングルファザーだと勘違いされたらしい。当時はそれくらい、父親一人で子供を連れている光景は珍しいものだったのだろう。
私が驚いたエピソードは、私が子供の頃、父の故郷に家族みんなで帰った時のこと。父には4人の姉がいる。私の姉が結膜炎だか何かで目薬をさす必要があったため、父は姉を自分の膝に寝かせて目薬を刺してやっていた。その様子を見た父の姉たちが「なんでそんなことをあなたがやるの?」と問うてきたらしい。つまりそれは、そんなことは母親の仕事でしょ?という意味だ。
父は母の負担を減らしたいとかではなく、ただ子供の世話をやりたくてやっていたという。
実際私の幼い頃の記憶にはいつも父がいる。そういうところが、父を父親として尊敬しているところだ。
そして、料理が得意でお店で食べて美味しいと思った料理を再現してくれるところが好きだ。父の料理はすごく美味しい。中でも「トマト坦々麺」は父の定番の再現料理で、地元のラーメン屋にあったメニューを父が再現したものだ。これを昼食によく作ってくれる。研究に研究を重ねる度に実際のお店のものとは大分かけ離れていったが別の料理としてとても美味しくて家族から絶大な人気を博している。
あとは運転が上手なところや、長距離で他の家族全員が寝ていても一言も文句を言わずに運転し続けるところ。「ありがとうね」というと「好きでやってるから良いんだ」と言うところ。

こんなに良いところがたくさんあるのに、「父みたいな人とは結婚したくないな」と思う理由。
それは、父が作ったラーメンをすぐ食べないと不機嫌になるからだ。
父は母がやることを大抵大目に見るのに、ラーメンを食べるタイミングだけは厳しい。母のディズニーツムツムが切りの良いところで終わらず、少し箸を手に取るのが遅れようものなら、
「一番美味しい時に食べて欲しいのに。」
と臍を曲げてしまう。
気持ちは分かる。だが、私は「君のタイミングでお食べ。」と言ってくれるような懐のデカい人と結婚したい。


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