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自分にあった人生モデルを選ぶべし1(破綻寸前の3ステージ型)


人生モデルのマインドセットを変える

人生100年時代、われわれ世代は、時間(長寿)というギフトを受け取りました。
これを上手く活用するには、古いタイプの時間の使い方に疑問を投げかけ、必要とあらば生き方まで変えることが求められます。

近代になると、人生を「学び(若年期)」→「仕事(壮年期)」→「引退(老年期)」の3ステージに区分するようになり、この人生モデルに沿って個人は進路を決め、同時に社会システムがそれを支えてきました。

それが、超長寿化で状況が一転。
引退期間が長くなり老後資金が不足する、意欲はあるが仕事に就けないなど「引退」のステージに予想しなかった問題が起こってきました。
また、「仕事」期間においても、時間があるので何度でもやり直しができる、そのための自己投資として学び直しができる… といった長寿の恩恵は現実になかなか享受できていません。

このように折角もらった時間を有効活用できないのは社会システムの問題だけでなく、自分自身のマインドセットが古いまま固定されていることが大きく影響しています。
まず、われわれを縛る人生モデルの常識を壊していく必要がありそうです。

破綻寸前の3ステージ人生モデル

近代社会の基本ともいえる3ステージの人生モデルは、直線的に人生を捉えます。
就職や結婚を節目に、学びの「若年期」を終え「壮年期」に入り、家族を持ったり、働いたりして社会で大いに活躍した後、定年や年金受給などを節目に「老年期」が始まり、そして一生を終える。

ライフスタイルはそれぞれのステージで異なり、人々は二度、脱皮する必要があります。
また、同じ年齢階層が同時にライフスタイルを替える「一斉行進」が特徴でした。

現在の50代以上の世代は、一生を1つの会社で働き、60代で引退するつもりで社会人になった人が大半です。
ところが、一昔前のシニアと違い、現代のシニアは心身ともに健康になったことで意欲さえあれば働けるようになり、「壮年期」と「老年期」の境界がなくなりつつあります。

そして、長期にわたり働き続けていくために経済的、スキル的な準備や投資が「壮年期」から必要になり、場合によっては「若年期」から始めてもよいくらいです。

このように、3ステージ・モデルは長寿化で疲弊しているのもかかわらず、年金や行政サービスなどの社会システムの変化は遅れており、特に「老年期」への節目の時期でミスマッチが起こり、問題が目立ってきています。

75歳~を高齢者とする新モデル

そこで、3ステージの人生モデルを修正して、現実に近づける試みが進められています。
その1つが、高齢者の定義を65歳~から75歳~に変更するものです。これは、2017年に日本老年学会と日本老年医学会が発表した提言で、大きな話題になりました。

さすがに学会だけあって、提言の裏付けはしっかりしています。
そもそも高齢者を65歳からとする法制度はなく、1956年のWHO(世界保健機関)の提言に基づいた古い時代の定義であること。それから平均寿命は20年も伸びていること。
また、20年前に比べ医学的にみて心身が5~20年若返っていること。
さらに、国民の意識調査で高齢者をより高年齢に捉えていること、などを踏まえ、高齢者の定義と区分を以下の様に提言しています。

新しい高齢者の定義と区分
<従来>

65歳~74歳 前期高齢者
75歳~89歳 後期高齢者
90歳~ 超高齢者
<提言>
65~74 歳 准高齢者 准高齢期 (pre-old)
75~89 歳 高齢者 高齢期 (old)
90 歳~ 超高齢者 超高齢期 (oldest-old, super-old)

「高齢者の定義と区分に関する日本老年学会・日本老年医学会高齢者に関する定義検討WGからの提言」

75歳~提言の2つの問題点

この提言には、基本的に賛成です。
ミスマッチ解決のため、老年期の節目年齢を10歳上げるという目標設定は、社会システムの改革を促すと同時に、人々の意識を先回りして変えていく契機になります。

しかし、この提言は、主に寿命や身体的特徴などの側面から検討がなされており、制度設計の観点から検討がやや不足しています。年金制度や退職制度など社会システムの変革には、世代間公平などの利害関係があることから別筋の検討が必要になります。

それ以上に大きな問題は、性差が考慮されていないことです。
80歳以降をみると、平均寿命、健康寿命、要介護者割合、認知症有病率など様々な指標が表すように男女の状態は驚くほど異っています。
特に寿命は、概ね男女で5歳差があり、高齢者の定義も男女差をつけるべきです。

自分にあった人生モデルを探す

人生モデルは、ここで紹介した「3ステージ型」だけはありません。
他にも、解像度を上げてより詳細に人生の変化を捉える「4ステージ型」や、そもそも人生を直線的に捉えない「2ステージ型」、節目という考え方を廃した「マルチステージ型」など様々で、そこには人間の知恵が詰まっています。

いずれにせよ、自分にあった人生モデルを見つけることが肝心です。
次回は、他の人生モデルを紹介していきます。

(丸田一葉)




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