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足元には何がある?

 冬になるとアリがいなくなる。これは有名な童話でも語られていることだ。今はまだ、下を向きながら歩けばすぐにアリを見つけることが出来る。アリという昆虫はどこにでもいる。土であろうとアスファルトであろうとコンクリートであろうと関係ない。春から秋にかけて、いつも忙しなく動き回っている。自分たちの住む環境を絶望的にまで改造されても、彼女らは堂々と社会を営んでいるのだ。
 そんな姿を見ていると、この大地の本当の主は今目の前を歩いている小さな昆虫なのだと実感する。人が整備をする前は今よりも草木が生い茂り、複雑な食物連鎖が形成されていたのだろう。かつて広がっていた光景を見ることはもう叶わない。

 新しい土地へと引っ越す際、その土地の昔の姿を調べることがある。昔からずっと人が住み続けている土地であれば、そこは安全で住みやすい土地であると言えるだろう。もし、最近になって人が住み始めた土地であったり、埋め立てられた土地であったりした場合は、災害が発生したときに何かしらのトラブルに巻き込まれるリスクを覚悟しなればならない。自分が住んでいる土地の地盤、あるいはこれから住む土地の地盤のことは、よく調べておいた方がいい。

 我々は今、どのような地盤の上に立って生活しているのだろうか。引っ越しの時に調べる地盤は、物理的なものである。物理的なものがあるなら、精神的な地盤というものも存在する。例えば、子供の頃に観たアニメや読んだ漫画は、その後の価値観や美的感覚に強い影響を与えるようだ。
 筆者はドラえもんが好きだった。そのドラえもんの映画作品の中に『緑の巨人伝』というものがあった。地球の植物が年々減っていることを知った「緑の星」の宇宙人(植物)が、同胞を守るために地球に攻めてくるという話だ。主人公であるのび太たちが住んでいる街が大量の蔦や草に覆われていく様は圧巻だった。
 そういった視聴体験が原因なのかは定かではないが、私は「人類の滅亡」がテーマの作品に強く心を惹かれる。その中でも人類自身の罪によって滅んでいく話が特に好きだ。
 少し話が脱線してしまった。他にも、子供の頃に親から圧力を受けて育った子供が、大人になってからも自己を表現することが出来ないままでいる、という話を聞いたことがある。

 「地盤」の最も大きな特徴は、一見すると姿が見えないということだ。だが、見えないことと存在しないことの間には深い溝がある。地盤を隠している床板を剥がしてみて、初めてその姿を目に収めることが出来る。

 歴史もまた、地盤の一つだ。我々は何重にも積み重なった地層の上で生活している。普段はその存在を意識せずに。
 時々でいいから、床板を剥がして見てみよう。歴史の本を読むも良し。歴史ものの映画やアニメを見るも良し。史跡を巡ってみるも良し。可能ならば、高齢の方の昔話を聞いてみるのも面白いだろう。
 今を生きる我々が、これからの未来の世界を作っていく。世界という建物をどのように建築していくべきか、歴史という地盤を調べることで何かヒントを得られるかもしれない。

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