友人にtitterをフォローされた話

丁度一年くらい前

ベッドの上でだらだらとTwitterを眺めていた。大学の友人達と交流するのとは別に作ったゲイ用アカウントを、である。その時期はガイドの仕事も少なくなってきて、のんびりとした昼下がりを過ごしていた。無駄な時間を過ごすのは気持がいい。

タイムラインをスクロールしていると、見覚えのある名前が出てきた。なんと以前の仕事場での友達のアカウントである。僕が彼をフォローしているわけでは無く、彼の投稿が何千リツイートもされて回りまわって僕のゲイ用アカウントのタイムラインまでたどり着いたようだった。いわゆる「バズる」というやつだ。もちろん、彼は僕がゲイだとは知らない。

「バスる」にふさわしく、彼の投稿は彼の世界観が凝縮された素晴らしい投稿だった。一緒に働いていた当時から作品の制作活動に熱心だったので、「しかるべくして」という言葉がぴったりである。しかし、

あー。このアカウントで彼の投稿を見るとは…

と、正直複雑な気持ちだった。一方の僕はベッドの上でダラダラとゲイアカウントを眺めており、特に生産的な事はしていない。なんならあわよくば「今晩のおかず」でも探すつもりだった。仕事を辞めて数年、アルバイトで生計を立ててはいるが、一体僕は何をしてきたんだろうか…この差は…

彼のアカウントを覗いてみるとフォロワーがものすごい数になっていた。いや、もともと多かったのかもしれない。僕が見た時にはすでに5千人を超えていた。これだけリツイートされてるのだ、きっと彼のTwitterにはたくさんの通知が来ているはずだ。僕がフォローしたところできっとバレないだろう。こっそり「のぞき見」的な気持ちで、彼のアカウントを、ゲイアカウントのままフォローしてみた。正直、大学の友人用アカウントは全然使っていないから、これで陰ながら彼の活動を応援しよう。

ちょっと複雑な気持ちのまま、おかず探しを再開した。その数分と経たず、僕に通知が来た。


「○○(彼の名前)さんにフォローされました」


あー…

と、ベットの上で情けない声を出して、指が止まった。バレた…はずだ。今している仕事も、たまに上げるスキーの事も、山の写真も、彼は知っているはずだからだ。それを見れば僕だとわかるし、僕の投稿やフォローしているアカウントを見れば僕がゲイだというのも一目瞭然だろう。しまった。軽い気持ちでぽちっとしてしまった…いや、ゲイだとバレるだけならまだマシだった。

ゲイがバレることのみならず、このnoteをずっとTwitterにあげてきたのだから、それがすべて読まれてしまう事がより問題だった。僕が初めて経験したというクソみたいな話や、出会い系の話、ウジウジと悩む話が延々と書き綴られている。伝えるにしろ「男の人が好きなんだ」でまず止めておきたい話なのに、すでに「男とした」話まで書いてる。あー…あー…時が巻き戻らないのは自然の摂理ではあるけれど、フォローを押したあの指のタッチすらも変更できないものだろうか…

走馬灯のように、次々に「隠しておきたかった物」が思い浮かんでいった。あ…あんなことも書いてある…そう、彼女って嘘ついてたよね…お察しの通り、彼氏です…
そんな僕をよそに、気が優しい彼は僕のTwitterでの最後の投稿に「いいね」をしてくれた。あー…いいね…ありがとう…うん…ちょっと、フォローしていたきわどいアカウントは消しておこうかな…

まな板の鯉とはこの事だろうか。今まで、何年も友人たちに隠してきた、一番見られたくない繊細な部分まで触れられてしまった気分だった。

ただ、フォローし合ったぐらいでTwitter上ではほぼ交友無かった。逆に、気の優しい彼でよかったのかもしれないと、前向きに思うことにした。きっと大丈夫。うん。僕がいいと思えば、事件はそれでおしまいだ。うん。

そんな彼とは、それから何回か出会った。前の職場に行った時は集まってくれたし、逆にこちらから東京で行われた彼の展示を見に行ったりした。いつ会っても相変わらずの彼だった。逆に、ゲイだとバレてるし、有名人になっていく彼を前に、僕が恐縮してしまった。僕はいつも、久しぶりに会う友人の前ではうまく笑えない。ちゃんと笑えているかなと、友人と会話しながた確認したくなる。

僕にいつも刺激をくれるのは、恋人よりも友人達だ。僕も、がんばります。いじけ続けて腐らないようにね。