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【じゃがアンソロスピンオフ企画】なぜあなたはジャガイモ沼に落ちたのか?(雲形ひじき編)

雲形ひじきさんが企画・編集を務めた「煮ても揚げてもふかしても じゃがいも文芸アンソロジー」の執筆陣から「なぜジャガイモ沼に落ちたのか?」についてあれこれ話を聞くスピンオフ企画です。

トップバッターはもちろん、雲形ひじきさん!根ほり葉ほり聞きました。

「煮ても揚げてもふかしても じゃがいも文芸アンソロジー」の概要はこちら↓

ジャガイモ沼のきっかけは「無茶振り」

Q:ジャガイモとの出会いを教えてください。

雲形ひじき(以下雲形):野菜としてのジャガイモとは子どもの頃に出会っていますが、特に「ジャガイモが好きでたくさん食べていました!」みたいなエピソードはなにもないんですよ。実家が東日本なので、食卓に男爵が出てきたり、カレーライスや肉じゃがを食べたりしていました。

今(21時)、ポテトチップスを食べながら話しているのですが、うちの母親は「ポテチの食べ過ぎは体に悪い」と思っていたのか、クリスマスイブや大晦日などの特別な夜にだけ食べてもいいというホームルールがあったことを思い出しました。

Q:では、今のようにジャガイモに興味を持って、ハマったきっかけはなにだったのでしょうか。

雲形:実は、じゃがアンソロにもご参加いただいた青川有子さんに「今度はジャガイモの小説書いてよ!」と無茶振りされたのがきっかけです。

もともと小説を書いてイベントで頒布するという趣味を10年以上続けていますが、2018年に開催されたイベントの打ち上げの席で、青川さんがフライドポテトを食べながら無茶振りしてきて…。

Q:無茶振りがきっかけ!?

雲形:ですね!本当にそれまでは全然ジャガイモに興味がなくて。だから青川さんに無茶振りされて、はじめてインターネットで軽く調べてみたんです。そうしたら品種一覧が出てきて、シャドークイーンだとかホワイトバロンだとかファンタジーみたいな名前が次々に出てきて…。

思っていたより奥が深そうだったので、図書館で資料をバーって読み始めてからはもうズブズブと。今に至るっていう感じです。

※雲形ひじきさんのジャガイモ処女作「The Hidden Treasure われは妹思ふゆえに芋あり(じゃがアンソロにも参加の文野華影さんとの共著)」はBOOTHでダウンロード版を頒布中!
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人にすすめたくなる品種は…

熟成メークイン

Q:ジャガイモズブズブの雲形さんおすすめの品種を教えてください。

雲形:ジャガイモはハコ推しなので決めきれないのですが…。今回は3つ「この品種いいよ」と布教したくなる品種、布教した実績のある品種の話をします。

まず、友人に「見つけたら買ってみて」とすすめるのは、デストロイヤー(グラウンドペチカ)とスノーマーチです。

Q:それはなぜでしょうか。まずはデストロイヤーについて教えてください。

デストロイヤー

デストロイヤーはやはり名前のインパクトもありますし、見た目も赤と紫のまだらで、芽の周りがピンクっぽくてマスクみたいな模様をしています。日本のジャガイモっぽくないというか、「こんなジャガイモもあるの!?」って、固定観念を覆してくれる独特でかっこいい品種だと思っています。

でも中身はサツマイモみたいに黄色で、料理もおいしく仕上がるのでおすすめしやすいですね。

Q:たしかに。スノーマーチはいかがでしょうか。

雲形:スノーマーチは、ジャガイモにハマった年に北海道在住の湖上比恋乃さん(じゃがアンソロに参加)におすすめ品種の一つとして紹介されたんです。

その時点で気になっていたのですが、JAきたみらいのお取り寄せを調べたら一番小さいロットが10キロで、「これは多すぎるし、おすそ分けできる人もいない」と一度諦めたんですよ。

でも、冬が過ぎて春になり、季節が巡ると「やっぱり食べてみたい!」と。北見市のふるさと納税にあったので、ポチッと。

その頃って、ジャガイモにハマってから時が経っているので「雲形ひじきがジャガイモに狂ってる」みたいなことが周りに知られてきて、「スノーマーチいる?」って聞いたら、10人くらいから「いる!いる!」と。私の手元に7個くらいしか残らなかった。

スノーマーチはしっとりとしているので、クリーミーな料理に合うなっていうところでおすすめしやすい品種ですね。使いやすいんですよ、あんまりクセがないというか。皮もむきやすいし。

あとでポテトチップス用の品種だと知って驚きました。

Q:あともう一つのおすすめ品種はなにでしょうか。

雲形:最後の一つは、2年熟成したメークインです。熟成というと低温貯蔵するインカのめざめがメジャーだと思うんです。

最初にサンプルでいただいて食べてみたら「すごい!これがメークイン?」っていうぐらい違って驚きました。蜜みたいに透き通っていて、栗のような独特の風味が出ていたので。じゃがアンソロにご参加いただいた皆さんに「食べてみろ、飛ぶぞ」って言いながら送りました。

ジャガイモ✕油の魅力

Q:好きなジャガイモ料理を教えてください。

雲形:難しいですが、今回はジャガイモと油っていう観点でお話します。

もちろんフライドポテトやコロッケも油との相性が良いので好きなんですけれど…

トスカーナポテト

トスカーナポテトという、粉をつけたジャガイモを冷たい状態のピーナッツ油に沈めて、ローズマリーと唐辛子、ニンニクまるごとを入れて火をつけて油で煮てカリッとさせる料理があります。それを見かけると頼んじゃうなあ。

Q:油系料理に合う品種を教えてください。

雲形:少し甘みがあり味にも主張がある方が好きなので、キタアカリとかこがね丸でアヒージョを作りますね。黄色っぽい品種がおいしそうに見えるので好きですね。

食べてみたいジャガイモは最高級とでんぷん用

Q:今後どのようなジャガイモを食べたいでしょうか。

雲形:世界一高級なジャガイモ「ラ・ボノット(La Bonnotte)」です。海藻を栄養にしているので、小さいけれどめちゃくちゃおいしいという記事を読みました。

註:フランスのノワールムティエ島の50㎡未満の砂質土壌でのみ栽培され、年間で100トン程度しか収穫しない。その価格は1キロあたり500ユーロ(約70,000円)に達することもある。藻類類などを含んだ土壌により味は少しレモン味、塩辛い後味とクルミのほのかな香りがある。しかし、イギリスのスーパーマーケットチェーンのテスコが、類似条件のジャージー島で栽培したラ・ボノットを商品化し、1キロあたり2.65ドル(約370円)で販売している。

あと、でんぷん用のジャガイモを食べたことないので、食べてみたい。ちょっと気になっています。

ジャガイモを座布団に座らせて創作

Q:創作について教えてください。どのように着想を得るのでしょうか。

雲形:私の場合は、初志貫徹、やっぱり品種の多さによって創作意欲がかき立てられているところがあります。インターネットで検索すると、品種が育成された過程のエピソードが出てくると思いますが、品種名の由来、なにを目指して選抜されていて、どのような特徴があるとか、両親の性質はこう受け継ぎましたとかを読んでいるととても楽しくて。その楽しさをみんなに知ってほしいと思ってお話にしているところが原点です。

Q:資料中にある品種の育成過程からどのように結びつけて構想を練り、作品にしていくのでしょうか。

雲形:例えば男爵とメークインって一般的にコンビとして見られていますよね。そして、名前から男爵が男性の役割、メークインが女性の役割として描かれることが多いと思うんです。でも、調べるうちにどちらも花粉を作れない雄性不稔性の性質だと知って…。「あ、じゃあ両方とも女の子で二人で仲良くしている」ってことだな、みたいな。資料の中で私が面白いと思った部分をめちゃくちゃ想像でつけ足して、さらにすごい意訳をしたうえで要約している感じです。

Q:品種特性は似たところもあると思うのですが、キャラクターの違いはどのように出すのでしょうか。

雲形:私の話は病害虫への抵抗性が関係していることが多いのですが、どういったキャラクターにするのかだと思うんです。例えば「さやか」だったら品種名がおとなしいイメージなので、病害虫から守る感じ。「ユキラシャ」だったら品種名から強いイメージがわくので、抵抗性に関しては強く戦う感じ。品種特性と品種名から設定します。それに加えて関係性も考えます。

Q:ジャガイモを擬人化するということなのでしょうか。

雲形:イメージとしては、ジャガイモを座布団に座らせて話してもらいます。高座に上がった落語家をご想像ください。噺家はそこにはない情景と何人もの人の話を身振り手振りと声の口調を変えて話すと思います。

私たちは実際に目で見えている以上の世界を補って楽しみますので、擬人化といっても見た目については描写することはほぼありません。美少女なのか、そもそも手足があるのか、芋の姿のままで人語をしゃべっているのか、などはすべて読者にお任せし、私はただ収まるように書き取っています。

ジャガイモや創作仲間がいるから続けられる

Q:ジャガイモや創作に関して、現在感じている課題はなにかありますか。

雲形:課題というか今一番心配しているのが、いきなりジャガイモに飽きて興味を失ってしまうのではないかってことです。これまで私がジャガイモに狂っているのを見てきた周りの人たちや、巻き込んだ周りの人たちが「えっ、なんなの?」みたいになってしまうのが心配です。

Q:これがあれば飽きずに継続できる、興味が続くということはなにかありますか。

雲形:周りに一緒に楽しんでくれる人がいることが大きいかもしれません。創作もそうですが、一緒にやってくれる人たちや感想を言ってくれる人たちがいると続けられます。一緒に騒いでくれる芋研ゼミ生がいることが大事。

ありがとうございました!

(写真提供:雲形ひじき)

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