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英語で何を話したらいいのか? 私たちは「よく知らない国から来た外国人」

英会話レベルが中級ぐらいになると、一問一答の会話だけでなくフリートークができるようになってきますよね。まだまだ会話の主導権を握る感じではないというか、いわゆる「場を回す係」ではないと思うのですが、だからこそ、こちらにボールが回ってきた時には、しっかりいい球を返したい!ですよね。

趣味のグループとか、同年代の人が集まるクラスルームのような場所では、それ自体が共通の話題となるのでそれほど苦労しないと思いますが、考えておくべきは、不特定多数の人が集まるようなシチュエーション。さて、そんな時にこちらにボールが回ってくるトピックとは、一体どんなものでしょうか?

わたしたちは「よく知らない国から来た、外国人」

もし自分が逆の立場だったら……と想像するとわかりやすいと思うのですが、たとえば日本で友達の友達にガーナから来た人がいたとして、ひと通り自己紹介的なことがあった後、さて何を話そうと考えた時、やっぱり

「ガーナの人って、チョコレート毎日食べるの?」

といったことだと思うんですね。
ガーナがアフリカにあることは知っているけど、それ以外は何も知らなくて、ガーナチョコレートしか思い浮かばない!みたいな。じつは外から見る日本も、だいたいこんな感じなんですよね。う〜ん、ニンジャしか思い浮かばない!みたいな。

で、ここでガーナから来た人が、

「いやー、食べないかな」

としか言わなかったら、もうそこで会話終了、ですよね。あ、そうなんだ……っていう。気まずい空気が流れる可能性、大です。

でも、もしもこんな返答があったら、どうでしょうか?

ガーナではあんまりチョコレートを食べないんだよね。
だけど、チョコレートの原料のカカオは毎日食べているよ。
私の家では庭にカカオの木があるから、毎朝カカオの実をもいで朝ごはんに食べるよ。
生のカカオはとってもジューシーで美味しいんだ。

どうでしょう、いろいろと「おや……?」と思いませんか。

チョコレートの原料がカカオなことは何となく知っていても、カカオってどんなものか実際あんまり見たことないし、「カカオって木なんだ?」とか「ていうか実なの?」とか「朝ごはんになるんだ?」とか、さらに「生とか生じゃないとかあるんだ?ていうかフルーツなの何なの?」と、いろいろ聞きたいことがあふれてきませんか?私はきます。

で、そういう質問を返しつつ、スマホで「カカオ フルーツ」とかで画像検索したりすると、話がいろいろ広がっていきますよね。


なので、「あなたはニンジャに会ったことある?」と聞かれたとして、いや〜ないかな、と答えたら、それで会話は終了しちゃいます。せっかく相手が話題をふってくれたのに!

私なら、こんな感じで答えます。

忍者に会ったことがあるかもしれない。でも私には誰が忍者かはわからない。なぜなら忍者とは「シノビ」の者だから。忍者は、自ら身分を明かさないからこそ忍者なんだよ。CIAの人だって、「私はCIAだ」とは言わないでしょ? もしそう言う人がいたら、そいつはニセモノってこと。

で、さらにこう付け加えます。

忍者のコスチュームあるでしょ? 黒い頭巾をかぶって、黒いジャンプスーツみたいなのを着てるの。あれってじつは創作だって知ってた? 日本の本物の忍者は、私達のような普通の格好をしてるんだ。だってあんなコスチューム来てたら忍者だって丸わかりでしょ? あのコスチュームは、映画のために作られたっていう説もあるんだよ。

ね。どうでしょう。
「忍者は江戸時代のもので、今はもういない」とか「忍者は空想上の存在」といった回答よりも、相手が食いつきやすそうですよね? 「ニンジャはなんのためにいるの?」とか「どうやったらニンジャになれるの?」と言われたら、しめたもの。どんどん話を広げていくことができます。


そもそも、よく知らない日本のこと

さて、ここで、そもそもの話になりますが、これ、忍者についてある程度知らないと、答えられないですよね? そこなんです、問題は。私達って、日本で生まれ育っていても、じつは日本の文化のことをそれほど知らなかったりするんですよね。

例えば、「日本に行ったことがあるよ! 京都でゲイシャを見たよ!」と言われたとして、私たち日本人は「それって芸者じゃなくて舞妓さんじゃないかなぁ」と思いますよね。でも、芸者と芸姑・舞妓の違いについて、ちゃんと答えられる人は、日本人でもそれほど多くないかもしれません。

このニンジャ、ゲイシャ、サムライ、スモウレスラー(力士)あたりは頻出の話題なので、押さえておくと何かと便利です。ベタな話題ではありますが、せっかくボールを投げてくれたのだから、いい形で受けてラリーをつなげたいですよね。

ちなみにこの「京都のゲイシャがビューティホーだった」は私も数人から言われたことがあるのですが、だいたいみなさん芸者と遊女がごっちゃになっているみたいなんですよね……(そもそも芸者じゃなくて舞妓ですが)。芸者は楽器を弾いたり歌を歌ったり踊ったりするお座敷エンターテイナーで、基本的には体を売ることはないんだよ、体を売るのは遊女のほうで、彼女たちは親の借金のかたに幼少期に身売りされて遊郭に入れられ、門から出る自由すらないけれど、センスと実力がある遊女は地位を登りつめて花魁というトップオブ高級娼婦になれて、そうするとすごい豪華な暮らしができるしお金持ちのビジネスマンに買われて足抜けできるんだよと言うと「へーそうなんだ!」と面白がってくれます。

そう、日本のカルチャーって、掘り下げるとけっこう面白いんですよね。見た目もかなり奇抜でユニークですが、それだけじゃなくて、構造的にもよく出来ていて、今の私たちの仕事や共同体の仕組みと比べてみると、なるほどな〜と思ったり。なので、面白く思ってもらえることが多い気がします。

たとえ、あまり興味を持ってもらえなかったとしても、少なくとも「この人は自国の文化についてちゃんと知ってるんだな」とは認識してもらえます。


自分の国のことなのに知らないの?と思われるマイナス

そう、これがじつは大きなポイントなのですが、日本についての質問に答えられないと、会話のチャンスを失うだけでなく、「自国について知らない人」という認識を与えてしまうんですよね。これはかなりマイナスな印象だと思います。

それがアニメの話であれば、もし知らなかったとしても「ただ趣味が違うだけ」ということで済みますが、現在でも日本の観光資源になっているようなベーシックな文化だったり、世界に報道されている一般常識的なニュースを知らないと、かなり気まずいです。それがまだ10代の高校生ならよいかもしれませんが、いい歳した大人だったら、やっぱり格好つかないという感じがします。

私がアメリカに渡ったのは33歳の時で、すっかり十分に大人の年齢、また職業がライターということもあり「じゃあこれぐらい知ってるでしょ」という感じでわりと込み入った話題を振られることも多かったです。意地悪ではなくて、「これってどういうことなの?」みたいな純粋な質問が多い感じ。例えば「Buddhism(仏教)とShinto(神道)はどう違うの?」といったこともあれば、「フクシマの原子炉って今どうなってるの?」といったことも。

その都度しどろもどろになりますが(笑)、でもその場は知りうるかぎりの知識を総動員して乗り切ります。で、後で足りないところを調べたり、それを説明するための英単語を仕入れたり。「よし、次もし同じことを聞かれたら、こう答えよう」と整理したりして。アメリカに来て10年になりますが、いまだに日々勉強中です。

少し前に投稿した「カップラーメンの作り方を英語で説明する」と同じく、「日本のカルチャーを英語で説明する」を練習すると、新しいボキャブラリーを増やしたり説明力アップにつながると思います。ぜひお試しください!


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