綺麗な音

ふと思った。

私は今まで誰かと比較された上で「綺麗な音」だと言われたことがなかったなー、と。

トランペットじゃなかったけど。
ホルンじゃなかったけど。

私の楽器で認められたかった。


17年生きてきた人生で学校の先生の中で唯一

私が心を開いた先生がいた。


小さい頃から歌うことが好きで

音楽を聴いて、歌って、踊った、幼少期だった。


それは小学生になっても変わらず。

そしてその先生との出会いは小学4年生の時だった。 


新しく来た音楽の先生。


金管バンドに入った私は

その先生と関わる機会が多かった。


先生のピアノが好きだった。

先生の歌が好きだった。


その先生に好かれたくて

休み時間の度に音楽室に行ったりしたこともあった。


先生が私に対してどんな気持ちでいたのかわからない。


学校中の先生から優等生な問題児扱い(?)をされ、

ある些細なきっかけで、

その先生にも反抗するようになった。


それに比例して、先生に叱られることが増えた。

色んなことで怒られた。


と言ってもその先生は優しいから

アホなおじさんらとは違って

怒鳴りつけてくることはしなかった。


私の非をただ静かに、諭すように、

語りかけてくるような先生だった


今でも鮮明に覚えている。


同じ楽器だった子と私を比較して

その子の音色を「綺麗」だと褒めた。

もっと「綺麗」に吹きなさい、と言われた。


その楽器を習っている子と初めて触った私を比較して

その子の音色を「綺麗」だと褒めた。

もっと「綺麗」に弾きなさい、と言われた。




中学に上がって吹奏楽部に入った。

吹きたい楽器があった。

楽器の数が少なくて1人しかその楽器は吹けなかった。


私の出す音が「綺麗」じゃないから

その楽器にはなれなかった。


自覚はあるが、私の行動には繊細さが無い。

気持ちだけが繊細でやることなすこと全てが大雑把。


これほど大好きな音楽が

私にはとことん向いていないことを

たった17年間で突きつけられた。


違うベクトルではそれなりに頑張っていたと思う。


取り仕切ることは苦手だし、

嫌われないに超したことはないし、

後輩と関わる事も好きじゃない。


けど私は皆がやりたくない役回りは率先してやった。

自己主張することは多くとも、結果的に折ることが多かったし

話し合いが行われれば事が円滑に進む方法を考えてた。


私はただ、あの先生に

認められたかった、褒められたかった。


私の居場所を作ってくれた先生が

今後も居場所でいてくれるという保証が欲しかった。



でも私は先生が欲しかった「綺麗な音」を出せなかった。



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