インドカレーは日本で食べるべし

カレーの発祥がインドだというのは誰もが知る事実である。

日本でインドカレーが食べたければインド料理屋に行き、数種類のカレーを選び、ナンかサフランライスで食べるのが一般的である。これが我々の知っているインドカレーで、現地にも限りなくそれに近い料理が存在するのだ、そう信じて疑わなかった。

僕が初めてインドを初めて訪れたのは、30代半ばに同年代の男子4人でインド旅行をした時だ。インドの玄関口のデリーに到着すると、さっそく町の食堂へ向かい、本場インドのカレーとのご対面することにした。

店奥のテーブルへ通された僕らはメニューの“curry”という文字列の欄からベジタブル、マトン、ビーンズなどの見覚えある名詞を指差しオーダーした。突然の外国人客をどう思ったのか、無表情な店主からは伺い知ることができなかったが、店内は地元の客で賑わっておりなかなかの人気店のようだった。我々は周囲の客のテーブルを盗み見し、地元客がどんなオーダーをしているのか興味津々であった。

しばらくすると待ちに待った本場のインドカレーが運ばれてきた。

匂いは想像した通りのカレー。ウキウキしながらカレーを口に運ぶ。
ん?味が弱い?弱いというより味が無い。ベースの味が全くしない。こ、これは?お湯に具材とスパイスを入れて煮込んだだけ!?
あとで調べたところによると、本場のインドカレーは各具材をカレー粉で煮込んだ煮込み料理という位置づけなのだそうだ。

そうとは知らず、味気のないカレー風味のスープ、甘みのないインディカ米、塩味の薄いクラッカーのようなパパドという食べ物。このパパドというものをカレーにつけて食べるのだ。日本でおなじみのナンは北インド地方の宮廷料理で家庭料理ではなくインドではそれほど馴染みがないものだそうだ。(これもあとから調べた情報だ)
インドではパパドかチャパティ、インディカ米で、このカレー風煮込み料理を食すのが一般的なのだそうである。

しかし、デリーの食堂を訪れた時点では、我々の誰もこの前情報が無い状態なので、イメージしていたインドカレーとの違いにショックを受けていた。もしかしたら、この店がハズレだったのかもしれない。
一縷の望みにかけて、1週間の旅行中、毎食のように様々なカレー屋を食べ歩いたが、どこに行ってもこのような味のカレーにしか出会えなかった。

これがインドのカレーなのか。。。
僕はインドの洗礼を受け、失意の中、日本へと帰国したのであった。

カレーが日本に来てからすでに150年近く年月が経っている。他の料理でもそうだが、日本に長く定着するものはそれなりの進化、あるいやジャパナイズ化されて今日に至る場合が多い。今、日本で食べられるインドカレーは、日本人の舌に合うように独自進化している。

本場インドのカレーと日本で進化したインド“風”カレーのどちらが正しいということは無いが、日本人の僕が言えることはただひとつ。

インドカレーはやっぱり日本にかぎる!

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