「落語っていいかも?」と思ったら読む本
寄席や独演会に通う「落語ファン」じゃなくても、何となく落語が「気になる人」って、いると思う。そんな人にオススメなのが、立川談慶『教養としての落語』。タイトルを見て、ありきたりの「ビジネス書」と誤解するのは、もったいない。ステキな落語入門書だ。
『教養としての落語』は、落語入門の「教科書」としてよくできている。落語について「入門者」が知りたいことをまんべんなく取り上げているからだ。読んでいると、落語という世界を俯瞰している気分になる。
だけど「必要なことをもれなく説明しよう」だけなら、つまらない教科書だ。ところが、ところどこで師匠である立川談志への愛がにじみ出てくる。それがアクセントになっているのが、うれしい。
『教養としての落語』で書かれている「談志像」に惹かれたら、もう1冊。ぜひ紹介したいのが、立川談春『赤めだか』。
談慶の兄弟子、談春が語る「談志像」はめちゃ面白い。
2つだけ、引用させてください。
●前座修行が「無茶ぶり」の理由
「前座の間はな、どうやったら俺が喜ぶか、それだけ考えてろ。患う(わずらう)ほど、気を遣え。お前は俺に惚れて落語家になったんだろう。本気で惚れてる相手なら死ぬ気で尽くせ。サシで付き合っている相手を喜ばせられないような奴が何百人という客を満足させられるわけがねエだろう」
●談志による「落語の教え方」
談志の稽古は、教わる方にとってはこの上なく親切だ。おじぎの仕方から扇子の置き方まで、教えてくれる……
「芸は盗むものだと云うがあれは嘘だ。盗む方にもキャリアが必要なんだ。最初は俺が教えたとおり覚えればいい。盗めるようになりゃ一人前だ。俺がしゃべった通りに、そっくりそのまま覚えてこい。物真似でかまわん。それができる奴をとりあえず芸の質が良いと云うんだ」