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多言語話者の「頭の中の教科書」2

多言語話者という言葉より、マルチリンガルの方が馴染みがあるだろうか。多言語話者はヨーロッパ人に多い。それは言語が似ているから習得しやすいという面もあると思う。イタリア語とフランス語とスペイン語は同じ言語グループだし、多言語の辞書を見るだけでもスペルがほぼ同じ単語をよく見かける。同じ言語グループでなくても語源に共通点があると語彙も増やしやすい。だから彼らにとって「語学の習得」のイメージがそこまでハードルの高いものではないのかもしれない。1、2年、少し頑張れば話せるようになるものというような。なので日本語のレッスンでは「日本語と欧米言語はあまりにも違うので、今まであなたが習得してきた言語のようには早く習得できないかもしれない。でも、文法は非常に簡単だし、音も少ないから言語としては難易度が低い。慣れるまで、少し忍耐強く頑張ってほしい」というようにしている。「全然違う言語だ!」と日本語に対して感じていると思うが、彼らはとにかくめげない。

多言語話者の学びの型は、実践的で戦略的だ。前回、さわりとしてお伝えしたのは「とにかく話そうとする」ということだ。例えば、もしあなたが英語ではない未知の言語を何か学ぶとして、レッスンの初日に「話せる」と思うだろうか。2回目のレッスンではどうだろう。どのぐらい?何ヶ月ぐらい?は話せないと思うだろうか。多くの大人世代の日本人が最低でも6年間英語を勉強したけれども話せないし、聞き取れないのだから、最初の半年ぐらいは黙って勉強することを想像してしまわないだろうか。まずこの先入観、価値観、思い込みのようなものをぶち壊してほしい。多言語話者はレッスン初日から話すのだ。自分の頭に次から次に浮かんでくる「言いたいこと」を習ったばかりの語彙を使って表現しようとする。
相手が分かろうがわかるまいがお構いなしで表現し続ける人も中にはいる(笑)

例えば、語学のレッスンの初日の定番は「自己紹介」だろう。
語学のレッスンを受けている時のあなたの期待値、能動性はどんな感じだろう。
「初めまして」「名乗る」「挨拶をする」を学んだ。その先は?
「知らないことを学ぶ」「初めてのことを理解する」「知識を記憶する」これ以外の回路が起動するだろうか。私は語学習得にとって一番大事なのは「自分の言いたいことはその言語でどう言うのか」を考える回路だと思ってる。あなたにその回路はあるだろうか。なかったとして、意識して即座に起動させることができるだろうか。多言語話者の典型的な質問は、上記の自己紹介の場面であれば、基本のフレーズに加えて、自分の業界や業務上でよく話される文などだ。あなたの先生が日本語もできる人ならあなたは日本語でそういう質問をするだろうか。「自分が言いたいこと」を目標言語でどう言うのかを知りたがり質問し、それが分かったら言ってみる。言えなくてもがっかりせず、言えるまで言い続ける気概があるだろうか。

その回路の起動はできれば学習の初日からがいい。
外国語はいつか口をついて出てくるものではない。
初日から口を使って自分の意思で出そうとしなければ
「いつか」は永遠にやってこない。

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