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手摺りのある日

よろめいて、周りの掴めるものを慌てて掴んだ。

体勢を整えて、掴んでいたものにようやく目が向くと、それは一本の手摺りだった。

もともと我が家の階段に手摺りはなかった。今は亡い父が取り付けたものだ。

たぶん父が50代の頃だったと思う。そういえば設置するとき私も手伝った。

それは自分たち夫婦の老後のための仕事だったろう。

父は8年前に他界した。

いま私はよろめいて、掴めるものを慌てて掴んだ。

体勢を整えて、掴んだものにようやく目が向くと、それは一本の父の腕だった。

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