【写真】ダム湖周遊
よく晴れた一日だった。
昼の時報のメロディを聴きながら、ようやく布団から起き、シャワーを浴びて外に出た。フイルムを入れて二日ほどおいたカメラを持って。モルトの加減が悪くないらしいことは前回の撮影で分かったものの、日をおいてもそうだという自信には欠けたため、少し時間をあけて撮影を再開することにしたのだった。
最近、安めのカラオケボックスができた。これはその帰りに振り返ったら雨と土とによごれたガラス越しにあった景色。
このところ雨が続いたのでカメラを安易に持ち出せなかったが、雨は景色の色を濃くしてくれるのでじつは好きなのだ。夜間に降って明け方上がるのが最高なコンディションだと思っている。夕方の雨上がりとともに晴れ上がってくれると反射も強くなるしね。いいよね雨。
ぬぼっと起きて今日は残ってるフイルムを消化するぞという意気込みでどこへ行こうかと思いながら車に乗った。新道のトンネルを抜けて、旧道(地区があるのでまだ生きている)に降りようと思い立ち道を折れ坂を下る。小さい川をひとつ跨いで、ダムがあるらしいことを思い出して谷のほうへハンドルを切った。家と畑がならぶ狭い道路を過ぎ越して分岐が現われるがダムへの案内はない。おそらく登るだろうと思い適当に登り道に入った。平成のはじめに架けられた「飛田橋」を渡って少し行くと、あっけなくそこにダムの擁壁が見えた。迷わないというのはなんだか寂しい心地がする。擁壁の右岸の膨らみで降車して、ダム湖の向こうで山を巻くガードレールの帯が見えたので、あそこまで登ってみようという気分になった。
あの上までいけば、ダム湖がよく見渡せるかも知れない。あわよくば、展望台があるやも、と期待しつつ天上のガードレールを見上げる。まずは堤体から彼岸へ渡ってみたが、そこで道は終わっていた。やむを得ず引き返して湖をぐるっと回ることにした。道のりは長そうだったが、写真を撮りにきたようなものなので車で時間短縮したら本末転倒だしな。なんだかアオダイショウでも出てきそうな雰囲気をおぼえつつも奥へ踏み入っていった。
春は山が若葉に明るい。春はなんというんだっけ。山笑うだっけ。なるほどたしかに少しまぶしくて目がくすぐったいかも知れない。
不思議な分岐がある。車の進入はポールに阻まれてできない下り坂。道は先で水に没している。好奇心のまま降りてみることにした。
側溝がついた道路だが、水面下にまで溝ごと進入している。こんなのもトマソンに数えていいのかしら。
この道路いつからあるんだろう。あるいはダム湖以前からあるのかしら。
それとも湖内偵察のための船場として設けられたのかしら。いずれにしてもこの舟はもう使われないんだろう。
ゆるゆる歩きながらダムに流れ込む川が二つあることを確認する。流れ込む川筋は道路下の暗渠を潜ってダムへ抜けていく。抜けるとやや人工的に切ったような川筋になっているのが上から確認できる。そばには石垣もあり、おそらくこのダムの下に村はないだろうけど、畑ならあったのかもしれない。いつのまにか車が対岸になっていた(見えないが)。
ダムを囲繞する道路に設置されたカーブミラーってなんでこうなるんだろう。いや、ミラーがないのは初めてだが、以前別のところで錆び切ってミラーの役割を辞めてるのを見たことある。
まあ、ダム見に来た人くらいしか使わない道だしな、しかたないね……
あまり平らなところで撮影していなかった。もう登っちゃってる。
たいていの草木は扇を広げて水平のイメージも複合させるのに、この子はとても垂直でひときわ目を惹く。
さてさて、山上はどんなもんかと思ったらチェーンで道が封鎖されていた。先に行って行けないことはないけど、「この道でなにが起きても一切責任を負わない」と森林組合の看板が威すのでやむなく1枚だけ撮ってすごすごと引き返した。ルールや禁止に私は弱いのだ。
今回来たのが初めてだったが、ここはモノクロ写真のほうがいいのかもしれないと帰り道を眺めながら思う。色でみせるというよりは陰影のほうでみせるほうが合っているような気がする。いや、季節が変わればその印象は払拭されるかもではあるが、今日のお日和りさんも相俟って今回はよっぽどそう思う。まあどうだろう。PCなら個人設定から「アクセシビリティ」でグレースケールカラーフィルターがあるので試しにモノトーンにしてみておくれ。「Ctrl」+「Windows」+「C」同時押しがショートカットキーだよ。便利。
最後に、ダムに流れる小川のひとつに、すこしだけ道を外れて入ってみた。マムシがいたらと怖がったのでちょこっとだけだが。木漏れ日が撮りたくて。露出(絞り値)を変えて三段階で撮影。速度は1/500秒で固定。ISOは400。
記録してないのでちゃんとしたF値ではないけど。どれがいいですか? 私自身は2つめくらいのちょっと何撮ってるかわからないくらいが好き。
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