帯結び 太夫の心意気
以前、花魁と太夫の違いや襟の返しについて書いたのですが、まだまだ意味の深い着付け方法があります。
赤襟を返すはこちら↓↓↓
花魁や太夫を思い浮かべた時、まず、なにが印象的でしょうか?
べっ甲の簪や大きな結髪も去ることながら、なんと言っても煌びやかな前帯ではないでしょうか。
前帯から後ろ帯に
※ 前帯とは、体の前で帯を結ぶ事を単に私たち、着付けをする者が呼んでいるだけの言葉です。
現在、通常、帯はTPOに合わせた素材や柄のものを体の後ろで色んな形に結ぶものですが、むかしむかしの人々は、簡単に紐のようなものでキュッと縛っていました。
なので、体の前で結ぶことになります。
(柔道着みたいな感じですね。)
それが段々と装飾が栄え、それでもしばらくは既婚女性だけが前に結んでいた時代もありましたが、体の前に帯があると動きにくくなってきます。
畑仕事や炊事洗濯など、日常の動作がしづらくなり、割と短い期間で後ろ帯にシフトしました。
そして、それが今の着付けになります。
ただ、公家などの位の高い家柄の女性に限っては、畑仕事や炊事洗濯もする必要がなく、前帯のままでした。
もちろん帯の装飾も豪華絢爛であり、一般の民からすれば、羨ましい限りでした。
※ 余談ですが、未婚女性は後ろ帯で、何故かと言うと、簡単に着物を脱ぐことができないように、という純潔の意味があったようです。(自分の意思で脱げない)
時代劇や古い日本の写真や絵を見ていると黒い帯を前に結ぶ老女がいたりします。
それもこの流れで、大店や公家や上流武家の引退した女将さんなども前帯だったようです。
花魁の前帯
花魁道中などで見る帯はほとんどが「まな板帯」で、これは花魁の正装だったとも言われるほど、定番でした。
何故かと言うと、前帯にする事は、位の高さ、裕福さの象徴でもあり、自慢の豪華絢爛の帯を余すことなく効果的に人目に晒すことが出来るのが、
「まな板帯結び」です。
位の高い家柄の女性への憧れもあったのではないでしょうか。
だらりと垂れ下がっているので「だらり帯」とも呼びます。
滝糸と呼ばれる、帯の端々から錦糸の飾りを垂らすとより豪華で、これも定番でした。
まな板帯と同じく、現在でも可愛いと、お客様からリクエストが多くあるのは「あんこう帯」です。
画像がなかなか見当たらないので、想像してもらうしかないのですが、簡単に言うと、大きな二重のリボン風の帯結びになります。
太夫の帯結び
太夫はと言うと、さすがファッションリーダー。
帯結び1つにもしっかり意味がありました。
若い太夫さんを「振袖太夫」と呼んでいて、振袖太夫さんは「引き結び」をしていました。
大きな平らなリボン型の結び方になります。
※ 調べていて知ったのですが、禿~振袖~太夫と、位が違うようで、禿から上がると振袖となり、最終的に太夫の称号となるらしいです!_φ(..)メモメモ
島原結び
島原結びは、少し複雑な形の結び方で、帯を短めに垂らして、少し開いた五角形の形にします。
そうすると、漢字の「心」と言う文字に見えます。
これには、
「簡単には解けない」
「しっかり結ばれている」
「私を口説くなら心を解いてみせよ」
などと、とても粋な意味があるのです。
… 太夫さん、かっこよくないですか?
太夫さんは常に帯の下に手を入れています。
何故かと言うと、結んだ心文字の帯の上に手をだすと、「心を隠す」事になるからなのだそう。
太夫さん、別格ですよね。
芸事も極て、人格もしっかりしていて。
帯を心の文字に見立てるなんて、ほんとにかっこよすぎます。
それだけ、プライドをもって太夫として生きていたことが分かりますよね。
花魁さんも、太夫さんも、それぞれの流行りがあって、どちらも自己プロデュースか上手だなぁと感心します。
おわりに
昔の人々の暮らしから生まれる文化。
それが今でも繋がることはとても凄いことだと思う。
現在の着付けには流派ごとの決まりごとが多くて、
おくみ線はどの位置で、おはしょりは何センチで
襟の開くの角度は何度で…。
細かな決まり事があり、それをはみ出すと、「あの着付け、どこでやってもらったんだろうね」などとコソコソ話の種になることも。(怖いわぁー)
昔の人みたいに着付けが当たり前の時代の方がよっぽど自由で粋な着方だったんだろうな、とよく思います。
ただ、現在の、日々、試行錯誤して編み出された帯結びの種類は、芸術の域にあり、基本の結びに加えてアレンジも多く、見ていて飽きません。
その熟練した着付け師さんの着付けをひたすら見ていたいほど、職人の技です。
それから、逆に「結ばない帯結び」というものが、着物ファン界隈で賑わっています。
パタパタとひだにしたものを帯締めやベルトで抑えるだけの折り紙式帯結び。
着物を自分で着る際、帯結びが一番大変です。
発想の転換ですよね。
難しくないなら私も着物着てみようかな!って人が増えれば、とても良い事だと思います。
※画素Pinterestより
私は20歳くらいの頃に呉服屋さんのショーウィンドウにチューリップと椿の形にした帯結びを見て以来、着付けが好きになりました。
「アートやん?!✨」と感動しました。
そのうち、着物自体の柄や歴史にも興味が出て、趣味で細々とこうやって調べてニヤニヤしています。
着物や帯自体に持たされた意味合いや、それをどう着るかに魅せる花魁や太夫さん。
まだまだ調べたい事がたくさんあります。
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