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知的障害者として生きる〜「発達障害」と診断された人のための「発達障害」の説明書14〜

一緒につくるマガジン

【「発達障害」と診断された人のための「発達障害」の説明書】と題して、マガジンの連載をしている。

このマガジンは、『一緒に作るマガジン』という設定。

「受け身ではない、主体的な学びの機会を作りたい」
という思いからの『一緒に作るマガジン』。

マガジンの作成に読者が参加してもらうことで、きっと、受け身ではない、主体的な学びの機会が作れる。

もし何か質問が出たら、次回はその質問について取りあげた記事を書きたいし、もし自分の記事を取り上げても良いという方がいれば、次回はそれについて一緒に考えたい。

そんな風に、発達障害のことについて読者と一緒に考え、理解を深めていきたい。

ここでの皆さんとのやりとりこそ、リアルな「発達障害」の説明書になり得ると考えている。

「発達障害」の説明書、よかったら、一緒に作りましょう。

知的障害者手帳について

知的障害児や知的障害者の人に出される手帳がある。

それは、各都道府県(あるいは政令指定都市)が知的障害と認めた人に対して交付する手帳である。

と言っても、これは知的障害がある人に自動的に交付されるようなものではなく、本人あるいは保護者が都道府県に申請して、認められた人にのみ交付されるものである。

知的障害者手帳があると、いろいろなサービスが受けられる。

知的障害の程度によって、受けられるサービスの量は変わってくるが、たとえば税金が安くなったり、公共交通機関の使用量が安くなったり、手当がもらえたりといったことにつながる。

また、知的障害者手帳を持っていると、進学や就職の際にも恩恵を受けられる。

たとえば特別支援学級や特別支援学校への入学のとき。

正確には特別支援学校の入学に障害者手帳の所持は必須ではないのだが、学校によっては、「知的障害者手帳がないと特別支援学校には入れません」と言ってくる学校もあったりするため、手帳があると手続きがスムーズに進みやすいということがある。

また、特別支援学級を使いたい時や、地域の療育サービスを使いたい時などにも、手帳があるとスムーズに手続きが進む。

そして、個人的に大きいと感じているのは、就労の面での支援が受けられるということ。

知的障害者として働く

障害者手帳があると、一般企業の障害者枠で雇用してもらえたり、あるいは就労支援を受けることができたりするのである。

就労支援のサービスも様々あるが、職業の技能を身につけるための訓練を数年単位で受けることができたり、あるいは通常の形態で働くことが困難という時には、その人に合わせた支援を受けながら働けるというサービスもある。

また、直接的なつながりはないが、障害基礎年金(生活や仕事などが障害によって制限される人に対し、20歳から年金を受給できるという制度)の受給の際にも、知的障害者手帳の所持の有無を尋ねられる。

何が言いたいのかというと、知的障害があって、通常の形態では働くことが難しい人であっても、知的障害の手帳を取得することで、就労支援のサービスと障害基礎年金の受給により、自立して暮らすことができるというルートがあるということである。

ここで、前回の教育の話に戻る。

子どもが知的障害ということを受け入れられず、頑なに特別支援学級を拒む親がいる。

「特別支援学級や特別支援学校に入れることは、子どもの可能性を狭めるのだ」と信じて疑わない教師や支援者がいる。

先に述べたように、知的障害の手帳は、申請があった人に対して、各都道府県が認めた場合に交付するものである。

したがって、子どもを知的障害と認めたくない保護者は、そもそも手帳取得の申請をしないため、手帳の交付はなされない。

これは、知的障害の人に認められているサービスを受けられなくなるということであり、自律して過ごすためのひとつの選択肢を手放しているということでもある。

少子化の影響で、定員割れしている学校が多いという現状で、知的障害があっても高校卒業まで漕ぎ着けることは可能である。

ただ、その後の就労で上手くいかず、結果引きこもりになったり、世話をしてくれていた親が不在となり、どうにも立ち行かなくなってから知的障害者手帳取得の申請にくる人も多い。

そのようなケースでは、60歳近くなって知的障害者手帳取得の申請をされることも珍しくない。

もし早くから申請していれば、20歳から障害基礎年金の受給ができた可能性もあったし、ご自身ができる作業に取り組みながら給料をもらって生活するというルートもあったかもしれない。

そのような人に出会う度に、「もしあのとき…」と、今自分が考えてもどうしようもないことをぐるぐる考えることがあった。

知的障害がある子への支援

子どもの将来をイメージする。

この子はどんな風に生きていくのだろう。

そのために自分はどのような手伝いができるのだろう。

子どもが生きたいように生きるために、自分が情報提供できることがあれば情報提供したいし、その情報をもとにして、また一緒に生き方について考えたい。

子どもの意見を尊重することはもちろん大切だと思う。

ただ、子どもがしっかり意見を表現できるようになるために、情報提供をしたりだとか、一緒に考えるだとかの支援は丁寧にしていきたい。

考えるための情報も、考えるための手伝いも、何もない中で、子どもがよくわからないまま口にしたことを最重要事項のように取り上げることは避けたい。

特に、知的にハンディキャップがある子どもたちに対しては、しっかりと話を聞いていく必要があると思う。

子どもの意見を、正しく尊重することができるように。


次回予告

細々と続けてきた【「発達障害」と診断された人のための「発達障害」の説明書】マガジン。

数名の方にご協力いただき、個人的には色々と勉強になることも多かった。

自分の中の発達障害に対する知識は、アップデートされたように思う。

このマガジンを読んでくれた方々の知識も、いくらかアップデートされていたら嬉しく思う。

次回で本マガジンは一旦区切りとしたいと思う。

【「発達障害」と診断された人のための「発達障害」の説明書】マガジン作成の過程について、今振り返ってみて思うことを、率直に書いてみたいと思う。

お時間のある方は是非、よろしくお願いいたします。


▼【「発達障害」と診断された人のための発達障害の説明書】



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