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臨床心理士による放課後等デイサービスへのコンサルテーション8

【対象児】
小学校2年生の男児。ASDとADHDの診断あり。コンサータ服用中。

【事業所が困っている対象児の行動】
奇声をあげたり、大声を出す

#3~6 スタッフの主体性の芽生え

【ケース検討の中で導き出された、この時点での本児の行動の理由】

家庭や学校で失敗体験を多く積んでいるから、失敗することに敏感になっている。

そのような背景から、失敗に直面させられるような課題に取り組むことができず、課題を回避するために奇声や大声を出しているのではないか。

【行動の理由をふまえたアプローチ】

本児が課題を達成した際にはごほうびシールを与え、視覚的に達成感や満足感が得られるようにする。

課題は本児が達成しやすいようなものを用意する。

前回までのコンサルテーションと#3〜#6のコンサルテーション

「教えてください」と「教えたい」の間にただ存在しようとした#1と#2のコンサルテーション。

#3~#6ではスタッフから様々な意見が出始めた。

「教えてもらう人」「教える人」という構図が徐々に崩れはじめ、コンサルティ(筆者)とコンサルタント(スタッフ)が一緒に考えるという場の設定ができてきたように思えた。

スタッフから出されたアイデアはできるだけ尊重し、やってみてもらうようにした。

やってみてうまくいかないことは報告してもらい、改善するという試行錯誤を重ねた。

この段階では、スタッフの意見を集約して整理するという役割だけでなく、筆者もスタッフらの意向を尊重しながら、アイデアを提供するというやりとりを行った。

事例検討の中でのあるスタッフの発言が印象に残っている。

事例検討の中では継続して本児の行動の理由について話し合われていた。

そして、本児の行動の理由に合わせたアプローチ(「ごほうびシールを使って、視覚的に達成感や満足感が得られるようにする」)が導き出され、実際に取り組んでいた。

アプローチの効果は、本児の奇声や大声の頻度が増えたか減ったかで見ていくことになった。

アプローチを始めてから、本児の奇声や大声の頻度は少しずつではあるが減っており、全員が効果を実感していたところで、あるスタッフから以下のような発言があった。

「なんか、自分の都合のいいようにAくんを動かすために、ごほうびシールを使ってる気がする」

スタッフの中にこれまでのアプローチに対する疑問が生まれ、療育で目指すものとは果たして何なのかという疑問が生まれ、そのことについて話し合われた。

話し合いの中で明確な答えは出なかったものの、このスタッフの発言がきっかけとなり、自分たちが目指したいことについて根本から問い直して考えるという、そのような場のセッティングができてきたように感じた。

ただ単に子どもの問題行動に対するアプローチを機械的に導き出して実践するというのではない、一人の人間がそこに入り込むという感覚を共有できたように思えた。

次回に続く

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