3.鋭い目つきさ
うちの高校のサッカー部はそこまで強くない。強くないなりに、練習の質、真剣味は僕が高校1年の頃よりかは出てきている。
僕が1年の頃の先輩たちは正直言って、『敬う』という気持ちは、頑張ろうにも湧いてこなかった。年上だから、自分より体が大きいからという理由でヘコヘコするしかなかった。そうでなかった場合、舐めてかかるのかというとそんな度胸はない。
練習はダラダラするのは当たり前で、顧問の先生もその空気に飲まれている感じだった。なぁなぁになっていた。
私利私欲のために後輩にコキを使う先輩がハッキリといた。1人ではい。そして今だから言えるが、そんな先輩たちのノリは全く面白いとは言えなかったな。
今なら声に出して言える。つまらない先輩だったな。もうどこかで会っても他人のフリしてそそくさと逃げよう。
言い過ぎかもしれないが、その先輩たちに会ってしまうと、一日が台無しになりそうだからだ。友達と遊んで楽しかった一日。帰り道でその先輩とバッタリ会って変な絡み方をされる。その一日は最悪で終わってしまう。そんな気がしてならない。
そして、3年になった今、そんな先輩になっていない今の自分が少し好きだ。練習には真面目に取り組む。まだ、ビシッと何かを言える度胸はないが、1年下の後輩が練習をダラダラしてるところをみるとギンっと睨んでやる。フミと一緒にだ。
一緒に練習を真面目にする、ふざけたやつに対して一緒にギンって睨むフミという存在を誇りに思う。
自分のおかげというわけではないが、僕やフミの真剣味が周りの人間にも伝染している気がする。士気が高まっているのだ。顧問の先生の考える練習メニューも1、2年前よりかは、はるかに良くなった。自分のおかげではない。
それもそのはず、実力とはやはりシビアなもので、まだ僕の実力はスタメンに選ばれるか選ばれないかのところなのだ。
ただ言えるのは『頑張る』ということ。
2年のイケイケ部員が選抜メンバーを確実のものにしている。僕よりも練習が不真面目でたまに休んだりしている。中学の時に県選抜のメンバーだったらしいやつ。
後輩がレギュラーで先輩が補欠。どこの世界も実力主義で、どこにでもある光景さ。
「練習なんかしなくったってサッカーセンスめっちゃあるし!」のやつか、影で類稀なる努力をしているのか、それとも、もともとこういう事が当たり前なぐちゃぐちゃな世界なのか。
きっと、どれかだろう。
向こうは僕のことなんて気にもかけていないし、眼中にないだろうが、僕は心の中で燃えるようなライバル心を抱いている。
顔に見せずに内で燃やす。それが僕だ。
練習が終わり、内に秘めた闘志の炎の大きさを確かめながら家に帰る。前方斜め下を一点凝視。鋭い目つきさ。
すると家の中が慌ただしい。僕はそこにいる人間に聞いた。
「どうしたの?」
返ってきた。
「おばあちゃんが入院した。」
つづく
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