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留学をするということ

ノルウェーに来て半年が経った。ようやくこちらの暮らしに慣れてきて、住んでいるフラットをHomeと呼べるようになった。

渡航して最初の3,4か月はとにかくすべてが苦しくて、今考えると軽く鬱を患っていたと思う。知人の全くいない街、拙い英語、高い物価、理解できないスーパーの品物、初めての一人暮らし、アジア人であるだけで集めてしまう衆目、すべてがストレスだった。

人種差別も経験した。なぜ自分がマイノリティであるというだけで他者から悪意を向けられなければならないのか。理解に苦しんだ。

自分以外の人はみんな輝いていて、着実に人生を歩んでるように見えた。孤独と空虚感に襲われて眠れない夜が何度もあった。一人で過ごす時間が長いと、否応なしに自分のパーソナリティやアイデンティティについて考え込んでしまう。生産性のない時間がただただ過ぎていって、無為な毎日を繰り返す自分にも嫌気がさした。

転機が訪れたのは、冬休みに1ヶ月のヨーロッパソロバックパックに出たときだ。
初めての一人旅、日本国内でもしたことがないのに、海外でなんて今考えると正直無謀だったと思う。資金はごくごく限られていたので、移動は基本長時間バスや電車、宿は最安ホステルを渡り歩いた。7つの国を旅して、旅の初日にスマホをすられたことから始まり、ほぼ全ての国でハプニングがあった。身の危険を感じたことも何度もあった。底知れない恐怖の中重いリュックを背負って歩き続けた。生きてオスロに帰ってこれた時は、安堵で涙した。

そんな旅の中で、何か一つ乗り越えるたびに、自分を少しずつ取り戻していった。背伸びしなくていい。ありのままの自分を受け入れてくれる人とだけ仲良くすればいい。自分のことを一番よく理解して、受け入れられるのは自分しかいない。そう思えるようになった。

同世代の若者だって、蓋を開けてみればみんな何かに悩んでいるし、自信に満ち溢れている人なんて少なくて、毎日必死にもがいている。

それでも人間は社会的な生き物だから、人に出会わずして生きていくことはできない。
新しく人に出会うたびに思うのは、人間はみな同じであるということ。文化や言葉や価値観が違えど、嬉しければ笑い、悲しければ涙する。そこに文化の壁はない。そして、カテゴライズされたあらゆる壁を越えた感情を誰かとシェアする喜びは、言葉にし尽くせない。私が留学生活の中で最も幸せを感じる瞬間だ。

留学というのはなんとも不思議な体験で、常に出会いの中に別れを内在してる。留学生活の終わりが見えてきてしまったから、たまにすべてが愛おしくて、無性に切なくなる。

それでもドアを開け、毎日を繰り返す。
"Hey, how are you?" に始まり "Ha det bra!" で終わる毎日を。


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