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学年にひとりはいた"アイツ"の話『佐々木、イン、マイマイン』

【基本情報】

製作年:2020年
製作国:日本
 配給:パルコ

【個人的順位】

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:96/181
 ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★★☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】

石井悠二(藤原季節)は、俳優になるために上京したものの、鳴かず飛ばずの日々を送っていた。別れた彼女のユキ(萩原みのり)とは同棲生活がいまだに続き、彼女との終わりも受け入れられない。

そんなある日、高校の同級生・多田(遊屋慎太郎)と再会した悠二は、高校時代に絶対的な存在だった"佐々木"との日々を思い起こす。

常に周りを巻き込みながら、爆発的な生命力で周囲を魅了していく佐々木。だが、佐々木の身に降りかかる"ある出来事"をきっかけに、保たれていた友情がしだいに崩れていく。

そして現在。 後輩に誘われ、ある舞台に出演することになった悠二だったが、稽古が進むにつれ、舞台の内容が過去と現在とにリンクし始め、加速していく。

そんな矢先、数年ぶりに佐々木から着信が入る。悠二の脳内に鳴り響いたのは、「佐々木コール」だった。

【感想】

これをただの青春映画と思うことなかれ。確かに「若いなー」っていうのが第一印象ではありますが、そのあと「すごいなー」って思える映画です。

佐々木はとにかく勢いだけが取り柄の人物として描かれています。まわりに乗せられるとすぐ服を脱ぎ、全裸になっちゃうぐらい(笑)しかも、男子校ではなく、共学なんですよね。

でも、別に不良というわけでもなければ、いじめられているわけでもなく、単純にそういうキャラなんですよ。常に明るく、バカをやってまわりを笑わせるという、学年にひとりはいるかなっていうやつです。

幸か不幸か、僕の学生時代にはさすがに全裸になるやつはいませんでしたが、「ポジション的にアイツかな?」みたいな人はいますね。程度の差こそあれ、誰でも思い当たる人はいるんじゃないかという点で、佐々木はある意味最大公約数的なキャラと言えるのかもしれません。

そして、そこがこの映画のすごいと思ったところなんです。この佐々木という人物は実在するらしいんですよね。実際もああいう人なのかはわかりませんが、下手したら内輪ネタで終わってしまう恐れもあるじゃないですか。

それを、佐々木をまったく知らない自分が観ても、「こういうやついるなー」という共感から始まり、彼の有り余るエネルギーに圧倒されるんです。

そうやって彼のキャラクターが定着するとしめたもの。そこからは、佐々木の見せるちょっと真面目な顔や、彼に降りかかる事件が、それだけでギャップに映り、より佐々木というキャラを魅力的にさせるんですよ。

多分、もっと詰め込みたいエピソードはいっぱいあったんだろうなって感じます。ただ脱いで終わりってだけじゃないと思うんですよね。あそこまでエネルギッシュなら。

そして、そんな彼と対照的に描かれているのが悠二です。彼はどちらかと言えばクールで、あまり自分の感情を表に出さないタイプ。なのに、感情を表に出す仕事である役者をやっているというのもまた面白いんですが。

普段の友達付き合いって、大体似たタイプの人とつるむことが多いと思うんですけど、こういう映画とかになると対照的なキャラがいっしょにいることが多いですよね。今回もそのパターンではあるのですが、佐々木という強烈なキャラを描きつつ、彼の存在によって自分の人生を見つめ直す悠二の姿は、多くの人に共感されやすいんじゃないかなと思いました。

過去に比重が置かれつつも、未来につなげようとしたストーリー展開は、ただの青春映画ではないヒューマンドラマな雰囲気を持っていてよかったなと思います。

あと、藤原季節って若い頃の安藤政信にちょっと似てないですか?(笑)


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