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マウンティングクソ野郎な方たちにぜひ観てもらいたい『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』

【基本情報】

製作年:2020年
製作国:日本
 配給:KADOKAWA

【個人的順位】

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:10/141
 ストーリー:★★★★★
キャラクター:★★★★★★★★★★
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】

2012年、ブラジルのリオデジャネイロで開かれた国連会議にて、現代の消費社会を痛烈に批判し、人類にとっての幸せとは何かを問うたウルグアイ大統領のホセ・ムヒカ。

その感動的なスピーチが瞬く間に世界中で話題になったことで、監督の田部井一真は当時ディレクターを務めていたテレビ番組で彼を取り上げることになる。

ウルグアイへ渡った監督は、そこで一度も日本に訪れたことのないムヒカが、日本の歴史や文化にとても詳しく、尊敬していることに驚かされる。

その後も監督は何度もウルグアイへと渡り、大統領退任後のムヒカへの取材を重ねる。

ムヒカの言葉に心を動かされた監督は多くの日本人にムヒカの言葉を聞いてほしいと願うようになる。

そして、絵本の出版社の協力を得て、彼の来日が実現する。

【感想】

これも3月ぐらいに観ようと思ってたら、どうやらそのときにやっていたものとは別のようですね。海外のドキュメンタリーと思いきや、日本のドキュメンタリーってことを本編観て初めて知りましたが(笑)

ムヒカ氏のことはニュースなどで見聞きしたことはあるのですが、詳細な人物像は知らず。質素な生活をしていると聞いてはいましたが、ゆーても大統領(今は違います)ですしね~なんて思っていたら、本当に質素でした。日本の田舎みたいなところで、トラクターに乗って畑を耕したり、チェーンソーで木を切ったり、政治家には到底見えず、もはや農家のおじさんでした。

そんなムヒカ氏の言葉は力強く、そして説得力があります。

なぜか。
それは、彼の生い立ちやこれまでの経験を踏まえると、実際に経験したことから生まれた言葉だと考えられるからです。

ムヒカ氏が生まれ育った土地には、当時日本の移民も住んでおり、若い頃からムヒカ氏は日本人と交流があったのです。「なぜ日本についてそんなに詳しいのか」という問いに、「本で読んだから」と答えるムヒカ氏ですが、おそらく実体験として日本人を身近に感じていたことも影響しているでしょう。

彼は1000年以上続く日本の文化に敬意を表しながらも、それが失われつつあることを嘆いているようでした。文化やテクノロジーの発展を称賛しつつ、アメリカに追いつけ追い越せの精神を持ったあたりから、日本人の魂は失われてしまったと。中にいると気づきませんが、外から見ると、そう感じるのかもしれませんね。

また、彼は「人間は発展するために生きているのではなく、幸せになるために生きているのだ」と主張しているんですが、これも彼が若い頃に反政府活動に参加し、12年間も投獄生活を送ったことと無関係ではないんじゃないかなと思いました。あんなに優しそうなムヒカ氏でさえ、「辛かった」と言うぐらいですから、相当肉体的・精神的な負荷が大きかったんだと思います。そんな経験を積んでいるからこそ、幸せとは何かを考えるのかもしれません。

でも、そこから政治家になり、大統領にまで上りつめるのですから、その行動力と信念の強さは凄まじいものがありますよね。

彼はこうも言います。「貧しさとはモノを持っていないことではなく、
どんなにモノを手に入れても満足しない心だ」と。ムヒカ氏も若い頃は富を平等にすれば人は幸せになると信じて反政府活動を行っていたものの、結局は考え方を変えない限りは意味がないと知ります。

仲間を作り、家族を持ち、モノが少なくてもそれに満足でき、大切な人たちと同じ時間を過ごすことこそがで幸せなのではないかと投げかけます。

決してひとりで歩むのではなく、誰かといっしょにいることを前提として、
動物のように"ただ生きる"のではなく、"人生に意味を盛り込んで生きる"ことを勧めていました。

ただ、彼は他の幸せの在り方を否定はしていないんですよね。何に幸せを感じるかは人それぞれという柔軟さも持ち合わせているからこそ好感が持てます。

他国の文化に敬意を表し、他者を否定することなく、長期的に見て人としてあるべき姿を静かに優しく、それでいて力強く語るムヒカ氏の言葉は刺さりました。

そういえば、ムヒカ氏は「人生で一番大切なことは成功することではなく、歩むことだ」と説いていましたけど、昨日観た『フェアウェル』でナイナイが言っていたことと似ているんですよね。

つまり、結果より過程が大事だというのは、ほぼ共通の認識なんでしょう。とはいえ、結果が出なければ評価されないのが現実。人は常にこの矛盾と向き合って生きていくんたでしょうね。


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