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父親の愛か、それともひとりよがりかを考える『旅立つ息子へ』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:31/60
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★☆☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★☆☆☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

ヒューマンドラマ
自閉症スペクトラム
父と息子の逃避行

【あらすじ】

愛する息子ウリ(ノアム・インベル)のために人生を捧げてきた父アハロン(シャイ・アヴィヴィ)は、田舎町で2人だけの世界を楽しんできた。

しかし、別居中の妻タマラ(スマダル・ボルフマン)は自閉症スペクトラムを抱える息子の将来を心配し、全寮制の支援施設への入所を決める。定収入のないアハロンは養育不適合と判断され、裁判所の決定に従うしかなかった。

入所の日、ウリは大好きな父との別れにパニックを起こしてしまう。アハロンは決意した。
「息子は自分が守る―」

こうして2人の無謀な逃避行が始まった。

【感想】

親の息子に対する愛(果たして愛かどうかは後述しますが)が伝わってくる映画です。ものすごく感動作になりそうな予感がしたんですが、個人的にはあと一歩かなーって感じでした(偉そうにすみません。。。)。

結局、ウリの“今”を見るか、“未来”も見据えるかってところがポイントなのかなって。そこが両親の意見の食い違いの要因な気もするので。

父親は、今のウリを大事にしたいんですよ。施設なんてあてにならないし、ウリも自分といっしょがいいと言っているから、俺がずっと面倒を見るんだと譲りません。

一方、母親は、そんな夫の身に何かあったら、誰がウリの面倒を見るんだと考えているんですよ。だから、今のうちからウリにとって一番いい施設を探してあげていると。きちんと未来を見据えていますよね。

この映画は、父親の視点に立っているので、母親が悪者のように見えてしまいそうですが、僕からしたら、父親がやや意地になってるところはあるかなーって感じました。両親でよく話し合えばいい気もしますけど、父親がちょっと暴走しているかなって。

ちなみに、ウリが父親にばかりなつくのは、単に彼がこれまでずっと側にいたからです。グラフィックデザインに才能があり、世界的に有名な広告代理店BBDOで働いていましたが、それも辞めて息子に付きっきり。母親とも距離を置かせたんですよね。

よくある「俺しかあいつをわかってやれねえ」の構図じゃないですか。家族でも恋愛でもありますよね。自分だけがよき理解者って思っているパターン。まあ、そういうのって大体「そんなことはない」ですよね。本人がひとりそう思い込んでるだけで(笑)

でも、父親は気づくんですよ。遊園地のライブ会場で踊ってるウリを見て。「もしかしたら、彼を縛りつけているのではなかろうか」って。こんな楽しそうにはしゃぐ息子を初めて見たと言わんばかりの表情を浮かべるから。旅を通じて、ウリが思ったよりも成長しているんだなって思わせる細かいシーンもちょこちょこあるんで。

その後、ウリは母親が見つけた施設に入ることにはなるんですが、とある事件がきっかけで出ることになります。ここがね、その事件ってのが事後報告でチャンチャンってなってたのが惜しいかなって思うんです。ここはきちんと映像で見せて欲しかったんですよー。その伏線となるシーンが前に出ちゃっているので、あからさまな回収に見えてしまうのを避けたのかもしれませんが、ここは一番感動するところだったから、画で観たかった。。。

あと、ラストも賛否両論ありそうで。。。なぜ、あれだけ父親にべったりだったウリが、急に別の施設になじんでいるのか。本当に突然すぎるから不思議に思う人もいるでしょうね。僕は、多分、あの芸術ワークショップが関係してるんじゃないかなーと思ってます。デザインが得意な父親を感じさせてくれるから、父親が側にいなくても寂しくならないのかなって。

そういうちょっと気になる点があって、いまひとつ感動超大作とまでは感じられませんでしたが、ウリを演じたノアム・インベルの演技は凄まじいですよ。よくあそこまで自閉症の役を演じきれるなと。リアルすぎて見入ってしまいます。それがこの映画の一番の見どころですね。


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