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脱北者が韓国でプロボクサーを目指すという強い生命力を感じるた『ファイター、北からの挑戦者』
【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:206/259
ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★☆☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★☆☆☆
【要素】
ヒューマンドラマ
脱北者
ボクシング
【元になった出来事や原作・過去作など】
なし
【あらすじ】
韓国、ソウル。ひとりの女が小さなアパートに辿り着いた。脱北者、リ・ジナ(イム・ソンミ)。
休む間もなく食堂で働き出した彼女は、中国に残した父を呼び寄せるために、より多くのお金を稼ごうと、清掃の仕事を掛け持ちすることにした。そこは、館長とトレーナーのテス(ペク・ソンビ)が2人で切り盛りするボクシングジムで、悲惨な過去と怒りを抱えて壁を作るジナに、2人は静かに燃えるファイティングスピリットを感じ取る。
グローブを渡されたジナは、次第にボクシングの世界にのめり込んでいくのだった――。
【感想】
主人公が脱北者という設定が、韓国ならではって感じがしますね。他の国では作りづらいというか、説得力が薄れてしまうなって思います。
<生きることに必死なジナ>
ジナの置かれた状況はかなりハードです。母親は幼い頃に家族を捨て、先に韓国に来ており、新しい家族がいる状況。父親は北朝鮮に残したまま、いつこちらに来れるかもわかりません。仕事の斡旋など、支援してくれる人はいるものの、基本はジナひとりで何事もやらなくてはなりません。
そんな彼女の居場所となったのが、掛け持ちで働くことになったボクシングジムです。当初は清掃員として働いていたものの、軍隊出身ということもあり、ボクシングの経験はあった様子。何気なくやったシャドーボクシングを見た館長が、彼女をプロボクサーに育てることを決意します。
脱北者ということで白い目で見られることもあるけれど、ジナはひとり国を離れて隣国にやってきた身。プロボクサーになって、大金を稼ぐことで、生活の基盤を築こうとする執念は並々ならぬものを感じました。
<どっちつかずな構成>
全体的にシリアス寄りで見ごたえはあるんですが、この映画、ちょっと惜しいなって思うのが、「何をメインにしたいのか」っていうところです。タイトルからしてボクシングを軸に据えようとしているのは感じるんですが、ボクシングのシーンはそこまで多くないんですよね。むしろ、途中から自分を捨てた母親との軋轢にフォーカスが当たっており、「ボクシングを通じて何かする」っていう印象が弱いかなって思いました。あくまでもメインは彼女の家族の物語であって、ボクシング自体は流れで始めたっていう感じが強いです。そういう意味では、いわゆるスポ根というよりも、ヒューマンドラマって感じですね。まあ、「ファイター」っていうタイトルも、ボクシングだけじゃなくて、亡命した韓国で生き抜く意味も込めての「ファイター」ってことだと思いますけど。
<人物背景が唐突なので感情移入しづらい>
で、途中からメインになっていた母親とのやり取りですが、その母親も急に出てきたので、ジナの抱えてきた鬱憤ってのが感じ取りづらい部分がありました。せめて、幼少期の回想シーンみたいなのがあって、母親との楽しい思い出や、急な別れで苦労したところが描かれていれば、もっとジナに感情移入できたかもしれないなーとは思います。脱北者っていう割には、その表面的な設定だけで、あんまり本編に絡んでいないような気がしたんですよね。『トゥルーノース』(2021)を観ると、北朝鮮での生活の辛さはわかりますけどね。ここらへんの温度感というか、肌感っていうのは、生まれも育ちも韓国じゃないと伝わりづらいところはあるかもしれません。
<ちょいちょい気になるテンポの悪さ>
あと、個人的にはテンポがあまりよくないなーっていうのも感じました。例えば、お酒を飲むシーンやジナとテスが海を眺めているシーンなど、何気ないところの尺が長すぎるんですよ。「そんなに必要か?」って思っちゃうぐらいで、まあ監督のこだわりかもしれませんが、僕としてはちょっと間延びしてるかなーって感じました。
<その他>
設定自体はすごくよかったんですが、これまで書いてきたように、気になる部分もけっこうあったので、個人的にはそこまで強い引きにはならなかったなっていう映画でした。もっとボクシングで何かを掴みとることを期待してしまいました(笑)
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