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同じ国の人がホロコーストに加担していたという衝撃の事実を描いた『ホロコーストの罪人』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:123/180
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★☆☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

ヒューマンドラマ
実話ベース
第二次世界大戦
ホロコースト

【あらすじ】

第二次世界大戦中、ユダヤ人一家のブラウデ家は、ボクサーの息子チャールズ(ヤーコブ・オフテブロ)が非ユダヤ人女性のラグンヒル(クリスティン・クヤトゥ・ソープ)と結婚し、幸せな日々を送っていた。

だが、ナチス・ドイツがノルウェーに侵攻すると状況は一変する。ユダヤ人は身分証明書にユダヤ人の印「J」のスタンプが押され、チャールズら男性はベルグ収容所へと連れて行かれ、厳しい監視のもと、強制労働を強いられた。

一方、取り残された母とチャールズの妻は夫や息子たちの帰りを待ちながらも、資産を接収されるなど徐々に圧力を強めてくる政府に身の危険を感じ、スウェーデンへの逃亡を準備していた。

しかし、1942年11月、ノルウェー秘密国家警察であるクヌート・ロッド(アンデルシュ・ダニエルセン・リー)の指揮のもと、警官とタクシー運転手らによって、ノルウェーに住むユダヤ人全員がオスロ港へと強制移送された。

何も知らずに港に連れてこられた人々の前に待ち構えていたのは、アウシュヴィッツへと向かう船“ドナウ号”だったー。

【感想】

今年公開のホロコースト系映画4本目です。本作もまた史実をベースにした作品となっていますが、この映画はそういうジャンルでよくあるような"淡々と進んで行く"感じの映画でしたね。なので、個人的には、昨日観た『沈黙のレジスタンス ~ユダヤ孤児を救った芸術家~』の方が面白いかなって思いました。

<同胞の裏切りが衝撃的>

この映画の最大のポイントは、同じ国に住んでいる者たちがホロコースト加担っていう点ですね。773人のノルウェー在住のユダヤ人がアウシュヴィッツに移送されるという悲しい史実があるのですが、その援助をしていたのが、同じノルウェーに住む秘密警察や市民だったようです。秘密警察のロッドも、隣人から「ユダヤ人に何かあるの?」って聞かれるだけど、「何もないよ」と涼しい顔で返す。他人なんて信じられなくなって当然の状況ですよね。もちろん、彼らもドイツから無理矢理やらされていたとは思うんですけど、それでもそうせざるを得なかった当時の背景には心が痛みます。

<強制収容所の過酷さ>

ユダヤ人の強制収容所は各地にあったそうですが、どこでもユダヤ人の扱いはほぼ同じ。今回、ベルグ収容所に移送されたチャールズたちも強制労働をさせられました。狭い粗末な建物に大人数の男たちが押し込まれ、朝早くから寒い中での肉体労働。大した食事も与えられず、口答えしたものは暴力を受けるという悲惨さ。

その後、チャールズ以外の家族はアウシュヴィッツへと移送されます。なぜチャールズだけ残されたかって?それは彼の奥さんがアーリア人だったから。ナチスは「アーリア人こそ優れた人種」という思想だったので、最悪の事態は免れたわけですね。ただ、家族とは離れ離れになってしまいましたが。。。

<ラストシーンの壮絶さ>

ラストシーンの演出がすごくて、内容はとても辛いものですが、表現としてとてつもない印象を与えてくれます。アウシュヴィッツに移送された多くの人々。おそらく、ほとんどがエキストラじゃないかと思うんですが、全員素っ裸なんですよ。男性も女性も老人も子供も。「消毒のため」と言われて、
服はすべて脱がされる。そのまま兵士に煽られるがまま向かった先が、、、
ガス室。。。そこだけ一切の音がなくなる演出は映画館で観てこその迫力でした。。。

<その他>

この悲劇が起こってから実に70年。2012年にノルウェー政府は、自国民がホロコーストに加担したことを正式に謝罪したようですね。本当に惨い歴史です。結局亡くなったユダヤ人の数だって正確なところはわからないまま。ホロコースト含め、ヒトラーの人柄や第二次世界大戦の経緯を調べると、情報量が多くてパンクします。それだけ、多くのことが複雑に絡み合っているということなんですが、一度どこかで体系的に学び直したい気持ちになります。こういう戦争系の映画を観ると。


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