"普通"になりたい普通じゃない人の話『まともじゃないのは君も一緒』
【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:27/59
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★☆☆☆
【以下の要素が気になれば観てもいいかも】
ラブコメ
恋愛偏差値が低い男女
コミュ障
【あらすじ】
外見はいいが、数学一筋で〈コミュニケーション能力ゼロ〉の予備校講師・大野(成田凌)。彼は普通の結婚を夢見るものの、普通がなんだかわからない。
その前に現れたのが、教え子の香住(清原果耶)。彼女は恋愛上級者を装ってはいるが、実は〈恋愛経験ゼロ〉。全く気が合わない2人だったが、共通点はどちらも恋愛力に乏しく、どこか普通じゃないというところ。
香住は、普通の恋愛に憧れる大野に「もうちょっと普通に会話できたらモテるよ」と、あれやこれやと恋愛指南をすることに。
香住の思いつきのアドバイスを、大野は信じて行動する。香住はその姿に、
ある作戦を思いつく。大野を利用して、憧れの存在である宮本(小泉孝太郎)の婚約者・美奈子(泉里香)にアプローチさせ、破局させようというのだ。
絶対にうまくいくはずがないと思っていたが、予想に反して、少しずつ成長し普通の会話ができるようになっていく大野。その姿に、不思議な感情を抱く香住。
あるとき、マイペースにことを進める大野と衝突した香住は「もうやめよう」と言い出す。すると大野は、「今変わらないと、一生変われない。僕には君が必要なんだ!」と、香住に素直な気持ちを伝える。
初めて誰かに必要とされた香住は、そんな大野の言葉に驚くと同時に、何か心に響くものがあり、初めての感情に「これって何!?」と悩み始める。2人の心がかすかに揺らぎ始めたとき、事態は思わぬ方向へと動き出す。
2人が見つけた《普通》の答えとは?
【感想】
これ、いいっすね。メチャクチャ笑えるし、メチャクチャわかりみが深い映画でした。
もともとの設定がいいんですよ。コミュ障で恋愛偏差値最底辺の予備校教師と、恋愛の知識だけ豊富で実戦経験ゼロのJKという組み合わせ。こういう日常感あるけど、ちょっと「そんなわけなくない?」っていう設定の邦画は、個人的には面白いものが多い気がします(もっとこういうの増やしてほしい)。で、そのJKからの恋愛指南によって先生の恋愛レベルが上がっていき、逆に教え子の方が「え、何この気持ち?」と気になる存在へと昇華していくっていう流れは、コッテコテの少女漫画みたいな展開が面白いです!
特に、成田凌の演じたウザキャラがツボでした(笑)数学一筋だったからか、相手の言葉の曖昧な表現に突っかかり、必ず具体的に話すことを求めるんですよ。まさに「ファクトベースで話して」というタイプ。みんなのまわりにもそういう人いるんじゃないですか?僕は会社の人を思い出しましたけど(笑)
その徹底ぶりはあらゆる場面で発揮され、ある女性から「好きです」と告白されても、「それ定量で示してくれる?」と、相手をドン引きさせるほど。古くからみんなが心の中で思っているような「ザ・理系」を、そのまま形にしたような印象を受けました。
そんな調子だから会話も進まないし、「その声どっから出してんの?」って聞きたくなるような笑い方もキモいしで、対人スキルが絶望的な反面、コミカルすぎるキャラクターは強烈で場を支配してました。
そんな彼が、将来「普通に結婚する」ために、世の中で普通と言われていることを学んでいく様子が非常に愛らしく見えるんですよ。
若い頃、「モテるためにはどうするか」「好きな人を振り向かせるのはどうするか」ってことを考えて、友達に聞いてみたりしてた人っていませんか?どういう服装がいいのかとか、どういう話のネタを持っていたらいいのかとか、もういろいろです。僕もあったような気がします(遠い目)。。。そんな姿と重なって見えるのが共感を呼びやすい気がするんですよね。
だから、大野の混乱っぷりはよくわかって。こういうのって人に聞いてもよくわかないんですよね。あーしてみたら、こーしてみたらって言われて、とりあえず言われたことやってみますけど、うまくいった試しがねえ。。。(笑)しかも、けっこう自分のキャラと違うことをすることが辛かったりして。。。基本、正解が存在しないからこそ、どんどん混乱していくんですよね。。。(とはいえ、基本は「※ただしイケメンに限る」の世界だと思ってますがw)でも、ここでの大野は愚直に言われたことを実行するのが偉いと思いましたね。
そんな彼も、物語終盤で非常に感情的になる瞬間があるんですよ。「それが普通だから」と自分の気持ちに蓋をする香住に食ってかかるんです。きっと、常に思考を続ける数学をずっとやってきたからこそ、「それが普通だから」と言って、考えることを放棄したように見える彼女に納得がいかなかったんだろうなーって感じました。夢や本音など、自分の心の内から出てくることに、普通も何もないですから。
結局、普通が何なのかっていうことは、ここでは語られていません。むしろ、語れないと思います。人の数だけその定義があると思うので。「多くの人がそう感じているであろう」ことを普通と言うのかなって僕は思いますが、そんな曖昧な基準よりも、「自分がどうしたいか」っていうことを素直に考えることの方が大事っていうメッセージが伝わってきました。
全体的に軽快なリズムで進んでいく映画なので、とても観やすいんですが、唯一気になったところがありました。それは、「香住、いろいろ知りすぎじゃね?」ってことです。ちょっと小じゃれたディナーのお店だったり、恋が敵である美奈子の動向だったり、情報収集能力が高いんですよ。女子大生ならまだ何となくわかるんですが、女子高生でそんなお酒が出るようなお店まで知ってますかね、、、?
ちなみに、この映画の中で僕が一番推したいのは、美奈子を演じた泉里香の誘う目でした。和食のお店で、大野を物憂げな目で見つめるんですが、、、これがやーばい。『家売るオンナ』の「落ちた」っていう声がどこからともなく聞こえてくるぐらいには、落ちました。
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