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雰囲気系の映画だけど、物語の軸はポピュラーだった『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』

【基本情報】

 原題:The Last Black Man in San Francisco
製作年:2019年
製作国:アメリカ
 配給:ファントム・フィルム

【個人的順位】

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:161/173
 ストーリー:★★☆☆☆
キャラクター:★★★☆☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】

サンフランシスコで生まれ育ったジミー(ジミー・フェイルズ)は、祖父が建て、かつて家族と暮らした思い出の宿るヴィクトリアン様式の美しい家を愛していた。

変わりゆく街の中にあって、地区の景観とともに観光名所になっていたその家は、ある日現在の家主が手放すことになり売りに出される。

再びこの家を手に入れたいと願い奔走するジミーは、叔母に預けていた家具を取り戻し、今はあまり良い関係にあるとは言えない父を訪ねて思いを語る。

そんなジミーの切実な思いを、友人モント(ジョナサン・メジャース)は、いつも静かに支えていた。

いまや都市開発・産業発展によって、"最もお金のかかる街"となったサンフランシスコで、ジミーは自分の心の拠り所であるこの家を取り戻すことができるのだろうか。

【感想】

いやー、感想が難しいですね、これ(笑)話はわかるんですが、いわゆる"雰囲気寄り"の映画で、空気感は伝わってくるものの、個人的には面白いかどうかの判断ができないジャンルです。これを好きな人がいるのはわかりますし、面白いと言える気もするけど、でもなんかちょっとわからないなーっていうのがありますね。

これ、PLAN B(ブラピの映画会社ね)とA24が作った映画で、過去には『ムーンライト』があるんですど、それも同じ印象だったんですよね(まあ、もともと真面目なLGBT系の映画は、僕は面白いかどうかの判断ができないんですけど。『リリーのすべて』然り、『キャロル』然り)

で、今作は、ジェントリフィケーションによって変わっていくサンフランシスコの街並みの中で、自分が愛する家を守る、、、というより固執しているといった方が正しいかもしれませんね、そんな話です。

とにかく、主人公であるジミーの家に対する愛がすごいんですよ。自分じゃ絶対買えない家だからって、「いや、それ不法侵入だろ」って勢いで居座っちゃうんで。まあ、僕もけっこう過去の楽しい思い出に浸る方なので気持ちはわかるっちゃわかりますけど。

そんなジミーに付き合って、彼を支え、時には彼の間違いをきちんと指摘する親友モント。こういうただノリが合うだけじゃない、メリハリのある友人関係ってのはいいですよね。終盤の展開とかけっこう見入っちゃいます。

最初に書いた通り、これって雰囲気系の映画だなっていうのはそうなんですけど、観終わってふと思い返してみると、もしかしたらこの作品の本質ってポピュラーなものなんじゃないかって感じたんです。本編を観ているときは内容に集中してるので気づかなかったんですけど。

どういうことかというと、時代が移り変わっていく中で"変わらないもの"に固執する話って、例えば、まわりが大人になっていく中で、相変わらず子供のままでいたいと願う話とか、土地の再開発で老舗がどんどん立ち退いていく中で、先祖代々のお店を守る話とか、そういうのと通ずるところがあるなーって。

だから、本当はもっと誰が観てもわかりやすい形にできると思うんですけど、かなりアートっぽくなっちゃってるかな(笑)あと、サンフランシスコに行ったことないので、土地勘がない分思い入れもないってのもありますけど。多分、アメリカ人やサンフランシスコにゆかりのある人なら、もっと共感できるんじゃないかと思いました。これが日本の街並みだったら、僕ももう少しわかったかもしれないです(笑)

しかし、時代は現代のはずなのに、街並みがレトロで哀愁漂う感じに見えるのは、この映画の魅力のひとつかなと思います。てっきり、監督はけっこう年上の人なのかなと思いきや、まだ29歳という若さ!感性が素晴らしいですね。


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