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望まぬ妊娠をした少女の苦悩と中絶を描いた『17歳の瞳に映る世界』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:63/144
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

ヒューマンドラマ
ロードムービー
未成年の妊娠
中絶

【あらすじ】

ペンシルベニア州に住むオータム(シドニー・フラニガン)は、愛想がなく、友達も少ない17歳の高校生。ある日、オータムは予期せず妊娠していたことを知る。

ペンシルベニア州では、未成年者は両親の同意がなければ中絶手術を受けることができない。同じスーパーでアルバイトをしている、いとこであり唯一の親友スカイラー(タリラ・ライダー)は、オータムの異変に気づき、2人で事態を解決するため、ニューヨークへ向かう……。

【感想】

題材的に男性目線で迂闊なことは言えない映画ですね。。。だけど、あくまでも作品としては興味深く、引き込まれる世界観でした。

<リアルな描写がこの映画のウリ>

全体的に暗く、静かで、淡々と進んでいくので、ストーリー的にロマンチックさやドラスティックさはありません。ただ、本作は望まぬ妊娠と中絶において、いろいろリアルというか、生々しいのが特徴的でした。

例えば、妊娠検査薬を使うところも、日本のドラマや映画だったら、トイレに入るところ、もしくは出てくるところ"しか"描かないことが多いと思いますが、本作では採尿のところまできっちり描いています。

また、「中絶は胎児に対する暴力だ」という啓蒙ビデオを見せたり、中絶手術の方法まで細かくセリフとして言ってしまうところもあるので、ある意味学びにもなりますね。

他にも、オータムが体調を悪くして吐いたり、出血したりする描写もあるので、より妊娠や中絶の苦悩や体への負担というものが伝わってきました。

そういうのが、この映画を見ごたえあるものに見せていると感じるんですよ。若い子の望まぬ妊娠からの中絶っていうのは、作品としては過去にもあったと思いますけど、単にその苦労や疲労を描くだけでは、ありきたりすぎて退屈なものになってしまったかもしれません。

<邦題の違和感>

ただ、個人的には邦題がちょっと微妙な気がします。。。原題は"Never Rarely Sometimes Always"。これ、オータムが手術前に受ける問診の回答の選択肢なんですよ。「性交相手は避妊しましたか?」、「脅されましたか?」っていう問いに対しての、「一度もない、めったにない、時々、いつも」なんです。

この映画、一貫して、妊娠させた相手については言及していないんですが、勘のいい人なら気づくと思うし、上記の問いでどんな状況だったかも察することができます。そういう意味で、この映画のタイトルの肝になる部分だと思うんですよね。

『17歳の瞳に映る世界』だと、オータムの目を通して見た世の中全般っていう印象を受けがちだけど、そういう感じでもないかなって。あくまでも、彼女自信の中絶の話で、メインはあくまでもオータム。そして、彼女を支えてくれるいとこのスカイラーと、移動中に知り合った男の子がちょろっと出てくるぐらいなので、"世界"ってほど広くはない印象です。だから、あんまり邦題に引っ張られて欲しくないってのはある。

<その他>

日本だとこういう映画、最近見ないですよね。これは、日本は性教育が遅れていると言われていることと関係がないとも言い切れない気がするんですが、どうでしょうか。今はどちらかと言うと、ある程度年齢を重ねてからの出産を扱った作品の方が散見されますね。

海外と比べて、日本の未成年の性行為がどうだかってのはわかりませんが、男女問わず若い子は観てもいい映画かなって思いました。


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