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男女関係と父娘関係をうまく取り入れた『オン・ザ・ロック』

【基本情報】

 原題:On the Rocks
製作年:2020年
製作国:アメリカ
 配給:東北新社、STAR CHANNEL MOVIES

【個人的順位】

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:91/152
 ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】

ローラ(ラシダ・ジョーンズ)は夫と2人の娘といっしょに幸せに暮らしていた。しかし、夫のディーン(マーロン・ウェイアンズ)が新しく来た同僚と残業を繰り返すようになり、よからぬことが起こっているのではと疑いを抱く。

そこで、ローラはそういった男女の問題に精通しているプレイボーイの男性に相談を持ち掛ける。それは、自分の父親のフェリックス(ビル・マーレイ)だった。フェリックスはローラに「すぐに調査すべきだ」とアドバイスし、父娘2人でディーンの尾行をすることに。

ローラのよからぬ勘は果たして的中しているのだろうか。

【感想】

AppleとA24による共同製作映画の第1弾の作品だそうです。すごいタッグですよね。

さて、この映画なんですが、自分が現在30代半ばという年齢や世代だからこそ面白いと思える映画かなと思いました。もし、今学生とかだったらあんまりピンとこなかったかもしれません。

なぜなら、夫の浮気を疑っていく中で、「男女とは」、「結婚とは」っていうことをローラが意識していくからなんですね。実際、自分のまわりに、結婚して子供がいる人たちが多いから、けっこう身近に感じた部分はあると思います。

でも、この映画が特徴的なのは、そういう男女関係だけじゃなくて、父と娘の関係性を面白おかしく描いているところなんですよ。

そもそも、ローラが夫の浮気の相談を、かつて浮気していた父親に持ち掛けるっていう設定がおもしろいんですが、この父親のフェリックスのキャラクターがおかしくて(笑)

考えがやや古いところはあるんですが、「男たるもの種の保存のために浮気するのは仕方ないことなのだ」と豪語し、呼吸をするように女性に色目を使うプレイボーイ。70歳ぐらいのおじいちゃんなのに(笑)

それでいて、すべての言動が突発的で、「男女問題はすぐに白黒つけるべきだ。さもないと思い悩む時間が増える」と娘を煽り、尾行を提案し、ディーンの出張先までいっしょについていくという異常さ。しかも、プレイボーイだから生粋の陽キャなんですよ。あ、でもチャラいっていうことではないでうよ。人の懐に入るのがうまいというか、誰とでも仲良くなれるというか。そんな人柄なので、至るところに友達がいて、ちょっとしたトラブルも難なく回避。だから、まったく憎めないどころか、ものすごくキュートに映るんですよ。僕はけっこう人見知りなので、こういう人間性には憧れますね。

別に娘の夫の出張先にまで父親が行く必要あるかって話なんですが、彼がそうまでして娘と行動を共にしたのは、単に娘といっしょにいたかったんですよね、きっと。作中では語られていないですが、彼自身もかつて浮気して、家族に迷惑をかけたそうなので、その罪滅ぼしだったり、娘といっしょにいられたはずの時間を取り戻そうと考えていたり、そういった事情もあるのかなと思いました。シンプルに「いっしょにいたいって言えばいいのに、わざわざちょっとした冒険をしちゃうっていうところが、ある意味『親バカ青春白書』のムロツヨシ的な感じがしました(笑)

最後まで観ていくとわかるんですが、人って面と向かって言えなくても、やっぱり愛されていたいものだし、愛されていないとダメなんだなって思いました。現実でも聞きますからね。子供が生まれて自分を見てくれなくなった。仕事を優先して自分を見てくれなくなった。「寂しさ」という言葉で括ってしまうのは安易かもしれませんが、自分の承認欲求が満たされなくなると、それを満たしてくれる他のところに行きたくなっちゃうんでしょう。

さて、夫であるディーンの本心はどうだったのか、それはこの映画を観てのお楽しみですが、3週間限定公開なので、本日でおしまいでした(笑)


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