ジュディ

母親とハリウッドに殺された女優『ジュディ 虹の彼方に』

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:23/46
⠀ 感動😭:★★★☆☆
悲しみ😢:★★★☆☆
⠀ ⠀ 歌🎤:★★★★★

47歳でこの世を去った伝説のミュージカル女優ジュディ・ガーランドの伝記的な映画です。予告を観てとても期待していたのですが、、、個人的にはちょっと期待しすぎてしまったかもしれません(とはいえ、すごくいい映画ですよ!)。

【どんな映画?】

上述の通りですが、ジュディ・ガーランドの晩年を描いた作品なので、彼女の人生のほんのごく一部となります。薬漬けで不安定な精神状態の中、愛すべき子供たちと引き離され、歌うこともままならない中で、それでも必死に舞台に立とうとする彼女の生き様を映し出しています。

【感想】

すべてはラストシーンのためにある。そんな感じの構成だと思いました。本作に出てくる歌は、吹き替えなしですべてレネー・ゼルウィガー本人が歌っているそうですが、その歌唱力が凄まじく、それだけでも一見の価値があります。その歌唱力がいかんなく発揮されているのがラストシーンで、ここはもう涙なしに観れないのですが、逆に言えば、そのラスト以外はやや退屈かなと個人的には思いました。

彼女の若い頃のフラッシュバックを交えての物語展開なのですが、ハリウッドの大人たちの言いなりだったあの頃と、その影響によってこうなってしまった現代の対比となっているものの、話としてはあまり起伏がないため、そこに感情移入がしづらいというのは感じました。

ただ、女性、特に母親の視点で観れる人は、ラストシーン以外でも感動するところはありそうです。現に、子供たちとのやり取りのところは、僕はそこまで何かを強く感じることはできなかったのですが、まわりでは泣いているお客さんもけっこういたので。
(僕の心が冷たいわけではないですよ。親として子を持つ者の気持ちというところへの共感度が低いだけですw)

さて、冒頭で僕が「ちょっと期待しすぎた」と言ったのには、理由が2つあります。

ひとつは、予告とのギャップです。
テロップで、『ボヘミアン・ラプソディ』、『ロケットマン』の文字が出ていたので、てっきりそういう映画かなと思ったのですが、、、その2つとは性質がちょっと違います。バンド結成の秘話、名曲誕生の瞬間、波乱万丈の人生、、、まあ最後は今回のものにも当てはまるかもしれませんが、音楽そのものにはあまり触れられておらず、ジュディ本人に焦点が絞られている点において、先の2作品とは異なる印象でした。

ふたつめは、僕がジュディ・ガーランドについての予備知識を入れすぎてしまったことです。
彼女のこれまでの人生を一通りは調べていたのですが、映画では晩年のみを扱っていたため、やや物足りないなという印象が強かったです。彼女の歩んできた人生を考えると、幼少期の頃から一通り観たい気もします(尺的に難しいと思いますが)

そもそも、ジュディ・ガーランドと聞いてピンと来る人はそうはいないんじゃないでしょうか。1939年『オズの魔法使』のドロシー役で人気を博し、
以降も1954年『スタア誕生』などで抜群の歌声を披露して人々を魅了した女優です。なお、余談ではありますが、『スタア誕生』は元々1937年の『スター誕生』をリメイクした作品で、最近だと2018年にレディー・ガガが出ていた『アリー/スター誕生』もその流れです。

ジュディは若い頃から薬物に悩まされ、死ぬまでそれは治らなかったのですが、彼女がそうなってしまったのは、母親とハリウッドの大人たちというのが通説のようで、下記に詳細が記されています。

かいつまんでお話しすると、ジュディの母親は貧しい幼少期を過ごしたためか、とにかくお金に対して執着があったようで、ジュディが生まれた後は彼女が2歳の頃から二人の姉といっしょに舞台に立たせて仕事をさせまくっていたようです。

そんな中、『オズの魔法使』でドロシー役を得るものの、まわりの大人たちから「とにかく痩せろ」と言われ、13歳からアンフェタミンを服用。

母親はそんな彼女を守ろうとはせず、むしろショービズ界で成功するには必要なことだと捉えていたようですが、そのときを起点にジュディは薬漬けの人生となり、その後も自殺未遂を起こしたり、複数の結婚や離婚を繰り返したりと、心身ともにボロボロになっていったとのことです。

あの純粋で優しいドロシーも裏ではあんなことになっていたと思うと心が痛みますね。。。

もし、母親が彼女を守っていたら、まわりに彼女のことをきちんと考えてくれる大人がいたら、、、同じ結果になっていなかったかもしれません。

そんなジュディ・ガーランドの晩年の過ごし方を垣間見ることができるのが今回の映画ですが、話の内容よりもレネー・ゼルウィガーの歌と演技が素晴らしいので、それだけでも一見の価値はあるかと思います。


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