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女性の生きづらさを真っ向から描いた『82年生まれ、キム・ジヨン』

【基本情報】

 原題:82년생 김지영
 英題:Kim Ji-young: Born 1982
製作年:2019年
製作国:韓国
 配給:クロックワークス

【個人的順位】

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:38/147
 ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】

結婚・出産を機に仕事を辞め、育児と家事に追われるキム・ジヨン(チョン・ユミ)。常に誰かの母であり妻である彼女は、時に閉じ込められているような感覚に陥ることがあった。

そんな彼女を夫のデヒョン(コン・ユ)は心配するが、本人は「ちょっと疲れているだけ」と深刻には受け止めない。

しかし、夫の悩みは深刻だった。妻は、たまに他人が乗り移ったような言動をとるからだ。あるときはジヨンの母親に、またあるときは祖母になって、文句を言ったり、アドバイスをしたりする。

しかも、ジヨン本人にはその記憶が一切ないのだ。夫は彼女を傷つけるのが怖くて真実を告げられず、ひとり精神科医に相談に行く。

【感想】

原作は未読ですが、これは韓国でベストセラーとなった同名小説の映画です。女性はいろいろ、、、本当にいろいろ思うところが多い内容だと思います。韓国における性差別を踏まえて、女性が感じる重圧や生きづらさを前面に押し出した作品ですから。

僕は独身男性なので偉そうなことを言える立場ではないですが、育児をしながら働いている女性やそのパートナーの方は共感度が高いかもしれないですね。かといって、別にそれ以外の人が楽しめないわけではないですよ。主人公の肉体的・精神的負担や、彼女を取り巻く家族の関係性を描いた人間ドラマは見ごたえがあります。

旦那の実家に行っては気を遣い、街ゆく人や会社の人の心ない発言に憤りを覚え、自分も働きたくて夫が育休を取るとなると、義母から「息子の未来を台無しにする気か!」と罵倒される。「なぜ女性というだけであきらめなくてはならないことが多いんだろう」と深く考えさせられる内容です。

でも、誰が悪いという話でもないんですよね。いまだ残る性差別や社会の認識から生じている部分もあるので、現実でもすぐさま解決するのは簡単なことではないでしょう。ただ、社会は個の集合で成り立つから、結局は個の認識を少しずつ改めていくしか、ジヨンが感じているような負担を減らせないとは思います。そうは言っても、身近な人に対しては、ほんの少しの気遣いで救ってあげられることもあるだろうなというのは感じました。

また、こういうときは夫の気遣いが足りないというケースもありますが、僕が観ている限りは育児も手伝っているし、妻の体を気遣っているから、彼に非はないんじゃないかなと。いや、女性からしたら「甘い!」って言われるかもしれませんが(笑)とはいえ、ジヨン自身がいろいろがんばってしまう性格だからか、余計に彼女に負担が集中している気はしますね。

この映画を観て、同じ女性でも「わかるー。自分もこういうことでいつも辛い思いをしている」と共感するか、「いや、いくらでも工夫のしようはあるでしょ」とたしなめるかは、その人の価値観や置かれている環境によって様々だと思いますが、この映画の中で描かれていることは日本でも当てはまることだと思ったので、国が違っても抱えている問題は同じなんだなーというのは感じました。

内容的にね、ちょっと過剰に反応しちゃう人はいそうなものの、ここまでストレートに現代の女性の生きづらさを表現した映画はタイムリーだし、今まであんまりなかったかもしれません。

ぜひ、女性の方たちの感想は聞いてみたいです。

男性でも同じようことはありそうですけどね。「男だから泣くな」、「男だから戦え」、「男だから一番を目指せ」、というような暗黙の了解というか、無言の圧力というか。僕はそういうのは苦手ですけど、絶対男性でもそういうので辛い思いをしている方はたくさんいると思います。


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