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型のないイップ・マンだった『追龍 』

【基本情報】

 原題:追龍
 英題:Chasing the Dragon
製作年:2017年
製作国:中国・香港合作
 配給:インターフィルム

【個人的順位】

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:72/113
 ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★★☆
    映像:★★★★☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】

1960年代、香港はイギリスの統治下に置かれ、警察と黒社会が結託し、汚職がはびこっていた。

ン・セイホウ(ドニー・イェン)は仲間と共に、中国本土・潮州から不法移民として香港に渡って来た。

変わらず貧困に苦しむセイホウたちは、高額な報酬が得られると聞いてマフィア同士の暴動に加わることに。

しかし、暴動の鎮圧に来た警官に追いつめられたセイホウは、現場の指揮官である英国人警司ヘンダー(ブライアン・アーキン)に暴行を加え拘束されてしまう。

警察署に連行後、怒りのおさまらないヘンダーは署内でセイホウに酷い暴行を加えていた。セイホウの身に危険を感じた香港警察のリー・ロック(アンディ・ラウ)はセイホウを保釈。その後、仲間のカジノでの不正行為の落とし前として黒社会に身をおくことになったセイホウ。

数年後、ずっと対立していた警察幹部のトン・ガン(ケント・トン)と
マフィアの陰謀により追いつめられたロックは、かつての恩もあってセイホウに助けられた。ロックを救う際にセイホウは足を砕かれてしまったが、ここで2人の間には友情と信頼が生まれた。

当時の時代では警察と黒社会が手を組むことはめずらしくなかったため、2人は手を組み、セイホウは麻薬王として、ロックは警察上層部へ出世し、互いに更なる権力を手に闇の階段を駆け上がって行く。

【感想】

本作は実話ベースの映画のようで、ン・セイホウも実在の人物らしいですね。

さて、昔の香港ですが、僕だったら絶対行きたくないです。。。警察はいるけど、黒社会と結託しているから、まるっとみんな悪ですよね。無法地帯ですよ。なので、正義と悪の対立ではなく、まさに悪を貫く男たちの話です。だから、基本暗いし男臭い。日本だとヤクザ映画に近いですかねー。

でも、意外なのが、前半はシリアスさがほぼないんですよ。むしろ、ジャッキー・チェンの映画に近い雰囲気もあってちょっと笑えるところもあります。それが、後半にかけてどんどんシリアスに向かっていくから、その変化は印象的でした。

ひとりは麻薬王に、ひとりは警察上層部にどんどん出世していく、欲望と自己顕示欲の強いギラギラした男たちの物語は、"男"よりも"漢"って感じなので、そういう雰囲気が好きな人はハマると思います。

終盤のバトルシーンの派手さはさすが中国と香港の合作映画だなって思いますし、任務の途中で命を落としていく仲間たちに対する悲しさと悔しさに震えるドニー・イェンの演技もよかったし、個人的にはアリだなと思う映画でした。

ただ、登場人物が多い上に、その思惑が交錯しまくるから、「あれ、あの人なんだっけ?」っていう状態になっちゃうのがちょっと残念というか、いまひとつ映画の中に入り込めなかった要因かもしれません。

また、当時の香港の社会情勢がうかがえるのも勉強になります。正義のない無法地帯の中で、香港人たちのイギリス人に対する遠慮と、イギリス人の香港人に対する差別的態度を見ると、すごく肩身狭そうだなって。

で、僕は『イップ・マン』を観てからドニー・イェンがすごく好きになって、完全にジャケ買いの勢いでこの映画を観たのですが、本作も2割ぐらいイップ・マンでした(笑)

だって、セイホウが強いのなんのって!詠春拳こそ使わないものの、殴る、蹴るの暴力が強すぎで、まさに「型を使わないイップ・マン」っていう感じです。しかも、『イップ・マン』シリーズで刑事役だったケント・チェンも出てますしね。しかもずっと短い髪に慣れてたから、前髪があるドニー・イェンに違和感ありまくりでした(笑)

そして、アンディ・ラウのかっこよさは、同じ男でスクリーン越しでも見とれるレベル。あの渋さはアジア人俳優の中でもそうそういないんじゃないでしょうか。さすが、"四大天王"に君臨するだけのことはありますね。


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