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今後アクション映画を観るときは彼女らに敬意を表そうと思える『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:1/6👑
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★★★
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★★

【以下の要素が好きなら楽しめるかも】

アクション
ドキュメンタリー
スタントウーマン
映画のメイキング
女性の活躍

【あらすじ】

CG技術の発達と共に迫力ある映像に満ちた映画が日々作られている。観客は当たり前にその映像を観ているが、そのアクションシーンがCGなのか、それとも実際に誰かが演じているのかといった点に意識が向くことは少ない。しかし、CGでは表現出来ない動きや迫力あるアクションシーンをより緻密に表現するために、ハリウッド映画では今でもスタントパフォーマーたちが活躍している。

特にアクション映画においては、その映画を代表する記憶に残るシーンが存在する。超人的とも言える数々のシーンはCGではなく、すべて女性スタントウーマンたちによって成り立っている。

彼女たちスタントウーマンの鍛え抜かれた体とたゆまぬ努力の結晶によって生み出されたこれらのシーンは、彼女たちの存在なくして生まれることはなく、映画の成功の鍵を握るといっても過言ではない。

本作は、そんなスタントウーマンの知られざる裏側に迫ったドキュメンタリーである。

【感想】

こんな面白いドキュメンタリーがあったのかというほどハマる内容でした。特に、ハリウッドのアクション映画が好きな人にはぜひおススメしたいです!かつてスタントウーマンをやっていた人から今まさに活躍中の人まで、幅広い年代のスタントウーマンのインタビューと、往年の名作のアクションシーンを織り交ぜながら構成された本作品は、興奮しまくりの興味深い内容です。

エンタメ業界において、常に怪我や死と隣り合わせの職業と言ってもいいスタントウーマン。その歴史や撮影現場の現実、そして彼女たちが日々考えていることを知る貴重な機会であることは間違いないと思います。

映画産業の創成期では、今よりも女性監督が多かったそうなんですけど、映画が儲かると知れ渡るや否や、男たちがこぞってやってきて女性たちを追い出してしまったそう。その結果、女性のスタントも男性が女装してやるようになり、スタントウーマンの活躍の場はなかったそうなんです。

そんな不遇な時代を乗り越え、スタントウーマンの地位向上に努めた人たちがいたからこそ、その重要さも認知されるようになってきました。かつて、『ワンダーウーマン』(1975~)や『チャーリーズ・エンジェル』(1976~)といった往年のテレビドラマでスタントダブルを務めた人たちが結果を残してきたことが、スタントウーマンの地位向上につながっているのです。

とにかく、特訓が欠かせないスタントウーマンですが、あらゆるスポーツに加え、格闘技や武術、ドライビングテクニック、チアリーディングまで学ぶことは多いんですね。それゆえ、あえて専門を作らない人もいるそうですが、「炎に包まれるのが好き」、「車にはねられるのが得意」、「自然落下がうまい」といった個性があるのは面白いです。日常生活で「車にはねられるのが得意」なんて言いませんからね(笑)

僕は、ドライビングテクニックが技術的にも一番難しいんじゃないかなって感じました。自分がペーパードライバーってのもありますが、飛んだり跳ねたりなら自分の意志でコントロールできますけど、自動車で正確にスピンさせるなんてよほどの練習を積まなければできないし、90kmのスピードで障害物と衝突し、そのまま何回も横転するというシーンも自分の力じゃどうしようもできないところですからね。。。

また、演じる女優と姿形が似ているだけではダメで、外見だけでなく内面も似せるよう努力するというのだから、スタントウーマンに求められるレベルは相当に高いことがうかがい知れます。

「安全って何それ、おいしいの?」っていうぐらい危険が伴う日々において、怪我をしたり、最悪亡くなってしまうということも避けては通れません。「何よりも優先すべきは人命」と肝に銘じていても、予測不能の事態は起こりうるもの。「イメージできないスタントは失敗する可能性が高い」と言い、無理なものは無理とはっきり言うことも大切なのだそう。

スポーツと違ってルールや決まり切った動きがなく、こんなにも"体が資本"と思わせる仕事を目の当たりにして、彼女らの尊さを改めて感じました。

今はもう70歳を超えた年齢ですが、テレビドラマ版の『ワンダーウーマン』でスタントダブルを演じたジニー・エッパーは、現役時代の自分を思い出して、その懐かしさと楽しかった現場に想いを馳せて泣いてしまうところは印象的でした。別の人も、「まだまだ若い人たちと張り合っていきたい」と言っていたので、それぐらい危険だけど魅力的な仕事なんでしょうね。

僕たちの目に映るのは、例えばスカーレット・ヨハンソンやガル・ガドットの超絶アクションですが、実際顔が映っていないところはほとんどスタントダブルが演じています。今でこそ、CGを使って事前にアクションシーンのシミュレーションを行い、より安全かつ効率のいい撮影ができたり、スタントウーマンの活躍自体も認知されるようになっていますが、それでも男性社会かつ女性軽視の雰囲気は残っているそう。

今後も女性が活躍するアクション映画はたくさん公開されていく中で、スタントウーマンに敬意を表して鑑賞したいと思わせるドキュメンタリーでした。


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