善意で法を犯せる主人公がすごい『薬の神じゃない!』
【基本情報】
原題:我不是薬神
英題:Dying to Survive
製作年:2018年
製作国:日本
配給:シネメディア
【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:37/154
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
【あらすじ】
上海で男性向けのインドの強壮剤を販売するチョン・ヨン(シュー・ジェン)は、店の家賃も払えず、妻にも見放され、 人生の目標を見失っていた。
ある日、慢性骨髄性白血病を患うリュ・ショウイー(ワン・チュエンジュン)が店に訪れる。国内で認可されている治療薬はとても高価だから、安価で成分が同じインドのジェネリック薬を購入して欲しいという依頼だった。
最初は申し出を断ったものの、 金に目がくらんだチョンは、ジェネリック薬の密輸・販売に手を染め、より多くの薬を仕入れるために白血病患者たちとグループを結成。
依頼人のリュを始め、白血病患者が集まるネットコミュニティ管理人のリウ・スーフェイ(タン・ジュオ)、中国語なまりの英語を操るリウ牧師(ヤン・シンミン)、不良少年のボン・ハオ(チャン・ユー)が加わり、事業はさらに大きく拡大していく。
しかし、警察に目をつけられ始め、一度はグループを解散したチョンだったが、薬を絶たれた患者たちの悲痛な叫びに再び密輸と販売を行う決意を固める。
患者の負担を軽くするため仕入れ値以下の価格で薬を売り、あえて危険な仕事を続ける彼に待ち受ける結末とは。
【感想】
これはいい映画でしたね。実は作られたのは2018年と今から2年前のこと。しかも実話ベースっていうんだから驚きですよ。
これ、元は2014年に中国で実際に起きた“陸勇事件”がベースになっているようです。陸勇という男性が白血病にかかり、薬を服用していたものの、その価格が高すぎるということで、インドからジェネリック薬を個人輸入して使用。それによって病気が改善したので、他の白血病患者のために善意でジェネリック薬の代理輸入をやったところ、逮捕されてしまったようですね。
さて、本編についてなんですが、設定の面白さもさることながら、話もテンポよく進みますし、クスッと笑えるシーンを入れつつも、涙なしでは観れない感動作にしているのが秀逸でした。それを手がけた監督が自分と同年代っていうのもびっくりですが、才能あふれる監督だからこその映画ですね。
で、僕がこの映画を観て思ったことが2つあります。まず、ひとつは「正しさとは何か」ということです。
主人公のチョンがやっていることは薬の密輸入および販売で、法的にはアウトです。アウトなんですが、それによって救われる命があるのも事実なんですよね。実際、この事件がきっかけで、中国でも医療改革が行われ、薬を買いやすくなり、2013年に白血病の生存率が30%だったのが、2018年には85%にまで伸びたとのこと。こんな成果を上げているにも関わらず、見た目的には「違法」となってしまうんです。
僕だって人として正しいのは命を救うことだと強く主張したいですよ。しかし、現実問題として考えると、例えば他の薬でもいいのかとか、精神的に救われるから輸入禁止の動物を連れてきてもいいのかとか、そういう話も出てくるから法律があるわけで、禁止する方もジェネリックを使いたい方もどちらも事情は理解できますよね。あー、こんな頭でっかちなことは考えず、「うっせ、人の命が救われるんだからジェネリック使わせやがれ!」
とだけ言いたいんですが、なんか、変に大人になってしまいましたね。。。w
そして、もうひとつは、日本でもこういう映画は作れるのかなーということです。そりゃもちろん、フィクションであればいくらでもできるとは思いますよ?ただ、実話としてこういうことが果たしてあり得るのだろうかって。
歴史を紐解けばあるのかもしれませんが、少なくとも最近だったら、世のため人のために善意で法を逸脱するような人はいなそうだなって気がしました。やったらやったでネットでものすごく叩かれそうですしね。。。仮にやるとしたら、“法を変えてから”やりそうです(笑)