傲慢かつ自己中な性格と行きすぎた値切りによって身の破滅を招いた『グリード ファストファッション界の帝王』
【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:87/127
ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆
【以下の要素が気になれば観てもいいかも】
ドキュメンタリーテイスト
ビジネス
ファッション
製造業
徹底しすぎた値切り
【あらすじ】
ギリシャ・ミコノス島。ファストファッションのブランド経営で財を成したリチャード・マクリディ(スティーヴ・クーガン)の還暦を祝うため、離婚した元妻サマンサ(アイラ・フィッシャー)、息子フィン(エイサ・バターフィールド)、母マーガレット(シャーリー・ヘンダーソン)ら家族が一堂に集まる。
折しもイギリス当局から、脱税疑惑や国外の裁縫工場の劣悪な労働環境と待遇について追及されたリチャードは、マスコミから"グリーディ(強欲な)・マクリディ"と揶揄されていた。
名誉挽回のためショーアップされたパーティーで、かつての威光を取り戻そうと目論むが、湯水のように金を使い、傲慢にふるまう彼と家族や部下との間には、徐々に不協和音が生じていく―。
【感想】
ファッション業界を舞台にしたドキュメンタリー風の映画でした。"風"っていうのは、ガチドキュメンタリーではなく、あくまでもフィクションの中で、ドキュメンタリーテイストの仕上げになっているってことです。
<主人公は実在した人物>
主人公のリチャード・マクリディは、実在した人物をモデルにしています。それは、かつてイギリスで大成功を収めたファストファッションブランド、トップショップを擁するアルカディア・グループのオーナー、フィリップ・グリーンという方です。ビジネスを拡大はできたものの、パワハラ、セクハラがひどかった人物らしいですね。。。
映画は彼の関係者へのインタビューを交えながら、誕生日パーティーに至るまでの数日間をメインに描いた作品となります。
<ある意味サイコパスってぐらいの徹底した値切り>
マクリディは類稀なる商才でどんどん事業を拡大し、財を成していきます。その秘訣として映画でわかることは、とにかく徹底した値切りを行っていることです。もちろん、ビジネスの観点で言えば、コストカットは非常に重要なので、彼の行っていることは至極当然のことではあります。ただ、やり方がえげつない。とにかく強引かつ傲慢なんです。相手に歩み寄ることはほぼせず、自ら提示した額に着地しないと、「じゃあいいや」と帰っていく。そうされると、ほとんどの相手は条件を呑んでしまうんですけど。その言い方もケンカを売っているとしか思えず、本当に人として最低の部類なんじゃないかと。絶対にこの人の下で働きたくないですもん(笑)
<悲鳴を上げる裁縫工場>
特に裁縫工場の条件は悲惨で、「5ドルで作れ」と。実際の相場がどれぐらいかはわかりませんが、ほぼ赤字に近い状態で請け負っているところもありました。そういった工場は利益を出すためにスピードを上げねばらならず、それについていけない人は解雇されてしまうんですよね。
世界中でセレブが愛用している高価な服は、スリランカなどの工場で、ミシンを使った手作業で作っているものも多いです。裁縫工場で働いている人の80%は女性らしいのですが、その日当は2ドル〜3ドルだと、映画のラストで紹介されていました。1着何十万もするような服の大元は、こんなに低賃金で作られているんですよね。。。
<そんなマクリディに訪れる結末とは>
マクリディは自らの金儲けしか考えていないため、そんなことは知ったこっちゃないと言わんばかりに、自らの還暦パーティーにかける金額は破格でした。おそらく億は超えているでしょうね。。。
そんな彼の傲慢かつ自己中なやり方が巡り巡って、悲惨な結末が彼を待ち構えています。あれだけのことをしているがゆえに財を成し、あれだけのことをしてしまったがゆえに恨みも買います。ただ、ちょっと間接的すぎて微妙だったかなーという印象でした、個人的には。ネタバレできないので書けませんが、事故扱いっていうのが、なんとも。。。
<ラストに込められたメッセージとは>
この映画、最後がけっこう奥深い感じに終わっています。搾取する側とされる側の「分断された世界」は埋まることなく繰り返されていく、、、そんなメッセージ性を感じると同時に、一度ついたポジションを変えるのはなかなか難しいなっていうのを痛感しましたね。。。
<その他>
結局、彼の周りには「No」と言える人がいなかったんでしょうね。まあ、あの人にそんなこと言おうものなら普通に殺される気がしますけど。。。
全体的に、気になるところはいくつかあるものの、マクリディというか、フィリップ・グリーンの人柄を知るにはいい映画かもしれません。ただ、僕は普通のドキュメンタリーで観たかったです。
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