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研究職ワーママがつかんだコツをシェア。楽しく取り組む夏休みの自由研究(小学校低学年向け)

 もうすぐ夏休み!
 小学生はワクワク楽しみ、親たちはため息ですね。

 とくに親を悩ませるのが、小学生の自由研究。まだまだ幼い子どもの自発的な取り組みは期待できず、親が何をすべきか戦々恐々としているという声をよく聞きます。
 何に取り組ませたらよいか分からない、それでも、できるなら理科を好きになるきっかけにしてほしい、そんなささやかな親の願い。

 日頃は自分の研究に取り組む私も、「小学生の『研究』ってどうやるの?」と悩みながら、毎年の夏を過ごしてきました。
 それでも、子どもが低学年の間に試行錯誤してコツをつかみ、高学年になった今、周りの家庭と比較してみると、けっこう楽しく取り組めているかもと感じています。
 今回の記事では、研究職ワーママである私が、小学生の自由研究で少しだけ意識して働きかけているコツを紹介します。


1.テーマ設定はラクに! 工作キットもOK!

 まずは、親が肩の力を抜くことからです。
 夏休みは自由研究以外の宿題も、帰省や旅行など特別なイベントも多い時期。
 親子で自由研究にかけられる時間、かけたいと思う時間を冷静に考えましょう。
 「夏休み明けにクラスメイトにすごいと言われるようなものを作ろう」、「表彰されるような発見をしよう」という親の欲をまずは置くのです。

 テーマ設定はとにかく「ラク」を意識してください。子どもの興味のアンテナに引っかかるテーマを選んだ方が、自発的な取り組みを期待できるため、「ラク」度が高まります。
 我が家では、夏休み前に、図鑑や実験・工作や料理などの本と付箋を子どもに渡して、やってみたいものに付箋を貼ってもらい、「子どもの今の興味は何か」を下調べしていました。

 私の子どもは、レゴブロックにもくもくと取り組む、工作が好きな子どもでしたので、段ボールの工作キットでの動物製作や、科学実験の本に載っていた鍾乳洞作りやリンゴ飴作りなど、取り組むものは工作・製作・料理系が多くなりました。
(私の小学生時代の自由研究も紙粘土による製作ばかりでした。親子で似てますね。笑)

 子どもが工作や料理を選んでしまったら…それって、科学的な自由研究とは違うのでは?と思う人もいるかもしれません。

 
しかし、手本となるものを再現したり、逆に現実には存在しない空想のものを作り出そうとして、目の前のモノを「観察する」ことは「科学的なものの見方」の立派な第一歩です。
 
また料理は、材料の配分(比)と加熱の度合い(状態変化)が鍵となる、科学の思考を含むものです。

 子どもにより、外で体を動かす、虫を探す、料理をする、絵を描く、組み立てる…など、夢中になる遊びもそれぞれ異なると思います。

 野外活動が好きなタイプの子どもには、自宅周辺の公園で見られる昆虫や植物の分布マップや、お気に入りの場所で観察して絵を描く製作もよさそうです。

 少し固い話をしますと、文部科学省の小学校学習指導要領(2023年7月時点の最新は平成29年度改訂版)の中に、小学1・2年生で習う、理科と社会が一体化した「生活」科目があります。
 この科目は、子どもにとって身近な学校、家庭、地域を取り上げることから始まるのが特徴です。

 小学校低学年の発達段階では、訪れたことも無い世界の国の文化や、大きな桁の数字など身近でない概念を理解して表現することは難しいということです。

 親が肩の力を抜き、子どもが身近で興味を示すものをテーマにすること、まずはここから始めましょう。
 子どもが興味を示すなら、切り取り線や組み立て図などでお膳立てされた工作キットや、全て材料がそろってカット済みの料理キットでもいいんです。
 次の章で紹介するポイントを押さえれば、親子ともに胸をはれる、立派な自由研究になりますよ。

2.失敗しても大丈夫! 比較と観察で科学の芽が育っていく

 工作キットの取り組みも、少しの工夫で科学的な観点を磨けます。
 ポイントは実物や成功例との「比較」と「観察」です。

 我が家の場合、工作の色塗りの前に、動物園に行き、実物の動物の色はどんな色なのか(例えば水色の象は実在しません)を、意識的に観察し、写真を撮影しました。
 動物園に行けなくても、図鑑で代用できます(例えば色々な種類の象の皮膚の色を見比べるなど)。図鑑が自宅に無ければ、図書館で借りてもいいですね。
 空想を形にする場合も、自分が描こうとしているどの部分が現実とは違うのかを、子どもに言葉にしてもらうなど、意識を向けさせています。

 実験や製作に失敗した場合は、親子のモチベーションが下がってしまうこともあるかと思います。
 成功するまで何度もやり直し…は、低学年だと厳しい場合も多いです。
 でも大丈夫。実は、失敗を自由研究としてまとめるのも、「科学」の観点ではマル!なのです。
 お手本の成功例と手元の失敗例は何が違うのか(紙の折り方、パーツの留め方、使っている道具、作業時間など)を比べて考えるだけでも、科学的な取り組みの一歩です。

 我が家も子どもが作りたいと言った「リンゴ飴」を作った時は、飴にならずに失敗。(砂糖の状態変化は温度と濃度のコントロールが難しいのです)
 別の年には、子どもがやりたいと言って取り組んだ鍾乳洞作りで、溶液の濃度が薄くて失敗。

 でも、どちらも「どうして見本のように完成しなかったのか」「どうやれば見本のようにできたのか」の簡単な考察を付けて、夏休み明けに提出しました。

3.まとめ方は料理のレシピをお手本に

 制作するものをテーマとした場合、作り上げることに精一杯で、完成品を提出して終わりとなりがちです。
 ですが、自由研究として提出する時にはもうひと頑張りして、A4用紙1枚程度のレポートにまとめたいところです。
 とはいえ、小学校低学年では文字だけでA4用紙1枚を埋めるのは大変だと思います。

 そこで、自由研究を仕上げる際には料理のレシピを意識しました。
 始める前に材料一式を並べて撮影した写真や、取り組み中の写真をL版プリントにして紙に貼り付けます。
 余白を埋めるプレッシャーが少なくなり、子どもにとっても写真を見ることで工程を思い出して、まとめに取り組みやすくなります。

 我が家ではA4やB4の用紙に写真を数枚貼り、その前後に子供が短い文章を入れました。
 製作や実験の工程の撮影(スマホのカメラで十分です)は、失敗したとしてもあとから考察する手がかりとなり、リカバリーにもなります。

 一番のおすすめ撮影シーンは、子どもが手を動かしている場面です。
 手を写真の中に入れるだけで人の動きを感じ、取り組みの流れを想像しやすくなります。

子どもが手を動かしているおすすめ撮影シーンの例:ホイップクリームの絞り出し(筆者撮影)

4.成功でも失敗でも「まとめ」はできます

 実験や工作で上手くいかなかった場合にも、その理由を子供なりに考えて残すことが、「科学の芽を育てる」ために大事だと思います。
 子どもによっては、本のようにうまくいかないことや、綺麗に仕上がらないことを嫌がって、取り組みが進まないこともあると思います。
 その場合には「失敗はよくあることで、むしろ考えるチャンスを貰えたんだ」という大人からのポジティブなメッセージをぜひ伝えてください。
 工作が無事に完成した時や実験が成功した時には、出来上がったものが社会でどのように使われているか、条件を変えるとどうなるかなど、親子で会話をしながら、イメージを広げて、まとめに書けるパーツを増やしてほしいです。
 自由研究に前向きなお子さんの場合は、科学館や美術館に行き、スタッフ(出来れば学芸員)の方と話せると考察が深まり、より充実したまとめになるでしょう。

5.自由研究で研究のしっぽを捕まえる瞬間

 自分の子どもが小学校に入学するまで、自由"研究"と言うからには、たくさんの実験を行い、たくさんの事例を収集し、その結果から法則を見つけ出すというような「研究」のプロセスを体感してほしいと思っていました。
 しかし、実際に子どもと取り組む中で、それはかなり高いハードルであると自覚しました…。そして、そこを目指したために実験や工作を嫌がっては本末転倒という思いを強くしています。
 今では、自由研究の素材やテーマは身近なものを取り扱いながら、完成に辿りつくプロセスを経験して(自由研究の取り組み時に成功しなくてもいい!)、考えるきっかけになれば良いと思っています。
 取り組みの中で、自分の考えをまとめられるんだという達成感や、すごい!またやりたい!というような目の輝きが一瞬でもあれば、それが、自由研究を通じて「研究のしっぽ」を捕まえた瞬間であり、小学校の自由研究として満点の役割を果たせているのではないかなと思います。

(おまけ①)おすすめグッズ

 とはいえ「うちの子が興味を引くテーマ」がわからない!という人も多いのではないでしょうか。そんな時に役立ちそうなグッズを紹介します。どれも、我が家で実際に活用したものです。

・「理系アタマがぐんぐん育つ 科学の実験大図鑑」

 細かく手順や分量が記載された実験本も多い中、この本はサイエンスショー的なインパクトある写真で目を惹きつつ、分量はあえて詳細な記載がないのが特長。親も一緒に試行錯誤が楽しめます。

・hacomoさんの段ボールキット
 安価で、組み立てしやすく、プリントが無いので水彩絵の具をはじきません。自由に色塗りがしやすいのでおすすめです。(私のおすすめはです)

・水産研究・教育機構キッズページ:魚のペーパークラフト
 サイトに掲載されているPDFを丈夫な紙に印刷して組み立てます。リアルさを重視した細かな折りがあり、難易度は高め。手先の細かな作業が得意な子ども向けです。

・東急ハンズやロフトなど、画材専門店の絵の具
 原理的には、どんな色でも小学校の標準絵の具セットで色を作ることが出来るはずですが、混ぜるほど透明度が低下してしまいます。同じ配分でできた色を何回も再現するのは、小学生には難しいものです。
 だからこそ「塗りたい色とぴったり同じ色」の絵の具チューブを用意すると、仕上がりの成功率があがり、おすすめです。

 そして、絵の具はぜひ親子で一緒に買いに行きましょう。沢山並ぶ絵の具を目の前にして、テンションの上がる子どもも多いです。
 私の子どもも、学校では使っていないアクリル絵の具や、メタリックカラーのペンなどを購入して使うことが楽しいようでした。
 高学年では、絵の具の原料(金属や岩石など)に思いを馳せると、科学のものの見方に近づきます。

画材屋さんではこの写真のように絵の具がずらっと並んでいます

(おまけ②)夏休み前後、おすすめの取り組み

 小学1年生の夏休みを乗り越えて余裕が出てきたら、夏休み前後の仕込みをしておくと、自由研究の幅が広がります。
 私が取り組んでいることを紹介します。

・工場見学、予約漏れ防止!

 食品の工場見学は人気があり、早いところでは6月の予約開始後、すぐに埋まってしまいます。
 対象学年が細かく分かれているイベントも多く、タイミングが合わないと、縁の無いまま小学校生活が終わってしまうこともあります。
 工場見学に興味のあるご家庭なら、5月頃からホームページをチェックしておくと良いと思います。
 私は手帳のマンスリーページに「▲月▲日○○工場見学(対象:○年生~○年生)予約開始(令和4年度のスケジュール)」などメモを残し、手帳更新時も書き写しています。

・夏休み明けの教室リサーチ
 夏休み明けは教室に自由研究を飾っていると思います。参観や懇談など学校に行く機会があれば、他の子がどういった課題やテーマに取り組んでいるかをメモしています。次年度の自由研究のヒントのストックにもつながります。

・自由研究コンテストや絵画・書道などのコンクールに挑戦
 全国規模でなくとも、自治体主催の小規模なものも励みになると思います。私の子どもは絵画を習っているわけではないのですが、参加賞目当てで絵画コンクールに時々応募しています。結果が分かると、受賞作品にはこういった工夫があるんだという刺激ももらっています。

 この記事を読んでくれた皆さんの自由研究が、親子で楽しく、ちょっぴり有意義なものになれば嬉しいです!


このnoteでは社会人大学院での研究経験、そして技術職・研究職として働く日々から生まれた、子どもと科学へのまなざしを綴っていきます。 サポート頂いた気持ちは、私の研究やアウトリーチ活動を広めていくための学びに使わせていただきます。