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便所の中でも・・・ (マスター キートン) 2006-05-24

 私の趣味に読書があるが、実はマンガもたいそう好きで小学校の頃からずんぶんと読んできた。
私は気に入ったマンガを何度も読み返すタイプなので、手放さずに持っているものもいくつかある。その中でも「MASTER キートン」(マスターキートン) は、「おそらく一生手放さないだろう本」に分類されるマンガだ。

 考古学者であり続けようとする平賀キートン太一は、学会で認められない自説を持ち、いつかその発掘を夢見て研究を続けている。考古学者としての地位はなく、月3万円程度の報酬で大学の講師と研究と生活のために副業として保険の調査員をしている。
その調査中に起こる様々な事件を「自分を見つめ直すために」志願して入ったイギリス軍隊時代の経験と考古学の知識で見事に解決していく。そんなストーリー。

 私がキートンに出逢ったのはいつ頃だろう・・・。
単行本の周りが茶色く変色しているのを見て、けっこう長いつきあいだなぁと感慨に耽ってしまった。
思えば、この本からたくさんの勇気をもらっている。

 数年前、私は悩んでいた。身の回りでいろいろなことがあり、法律の勉強をしたいと考えるようになったのだ。しかし、どう考えても私には時間がない。無理に決まっている。まず、嫁。で、母。そして仕事を持っている、しかも自営。いっぱいいっぱいの毎日で、いったいいつ勉強できるというのか。
誰にも言わず、一年近くそんな葛藤を続けていたある日、キートンのお父さんが私にこう言った。

「学問はどこででもできる。便所の中でもな…」

勉強を始めてから今年で6年目になる。
自分の志さえしっかりしていれば、たとえ少しずつでも学ぶことはできるのだ。

 去年、私は勉強にのめり込み、仕事、家庭、子育て…
すべてのバランスを崩してしまった。
「大切なものたちを失う前に、勉強を諦めた方がいいのかもしれない。
私が勉強することで家族に負担がかかっては本も子もない。
途中で止めたからといって何の不都合もない、今まで通りの生活が待っている。」
考えた末、しばらくの間早朝に起きて2時間だけ勉強するという方法をとってみた。
案外に事が上手く進んで狐につままれたような気持ちになった。

 年が明けた時に、私の決めたミッションステートメントは「均衡・調和」。
牛歩でもいいから確実にコツコツと積み重ねていこうという気持ちは、
もちろん今も変わらない。
挫けそうになったときは、キートンのお父さんに励ましてもらおうと思っている。

 メンターとは、必ずしも「実在の人」とは限らない。
「MASTER キートン」のなかには私にとってのメンターが何人も存在する。
キートン、キートンのお父さん、そしてキートンの恩師であるユーリー・スコット教授。
教授はこんな言葉を残している。

「人はいつでも、何からでも学ぶことができる。」

「MASTER キートン」 全18巻   勝鹿北星 浦沢直樹

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