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令和5年度行政書士試験を受けてみて


 先日、行政書士試験の合否発表がありましたが、無事196点獲得で一発合格することができました。


 今回は、そんなR5行政書士試験を実際に受けてみた感想を簡単に振り返りつつ、自身の反省点とこれから受験される方にとって少しでも役に立つ情報を書いていきたいと思います。まずは、自分の簡単なプロフィールについて。

自分のプロフィール

年齢:30代
学歴:私大法学部卒 途中からパチンコにも法律(遊技機規則)があることを知り、そっちにハマりだす
仕事:フルタイム勤務だが、ほとんど在宅ワーク
勉強方法:予備校のフォーサイトを利用
勉強期間:昨年4月頭~
補足事項:その前に宅建の勉強を1ヶ月弱していた

 大学受験以降ギャンブル三味で勉学というものからだいぶ遠ざかっていたし、勉強が苦手な凡才なので、これは独学での合格は難しいと判断して予備校を利用することを即決。この判断が大正解だったと本当に思います。

 余談ですが、一部受験生の中には独学にこだわり続けるというか、独学での合格に付加価値を感じている方もいらっしゃいますが、それで早期合格できる人は、他の法律系の資格をすでに持っていたり、もともと勉強ができる秀才や地頭が良い人であって、これらに該当しない若しくは凡才であることを自覚している方は、そんなこだわりなど抹殺して予備校へ通うことをオススメします。もちろん、金銭的な事情でそうせざるを得ない方は例外ですが、もしお金に余裕があってさっさと合格したい方はなおさら予備校の力を借りるべきだと思います。

行政書士試験とは

 ここからは試験内容について。すでに勉強されている方はご存知かと思いますが、科目は大きく分けて

・基礎法学
・憲法
・民法
・行政法
・商法会社法
・一般知識

 の6つ。こうしてみると、意外と少ないじゃんと思います。最初は自分もそうでした。

行政法

 ところが、行政法に関してはさらに細かく分けることができ、

・行政法総論
・行政手続法
・行政不服審査法
・行政事件訴訟法
・国家賠償法
・地方自治法
・その他(国家公務員法など)

 と、それなりのボリュームになります。そのため、試験で出題される問題数も一番多い分野で、この行政法をクリアできるか否かが合否のカギを握っていると言っても過言ではありません。

民法

 その行政法に次いで多く出題されるのは、みんな大好き民法。これに関しては、条文の数だけで1000条オーバーのうえに判例の数も多いし、その判例問題の中にはかなりムズイのもあったりするので、一通り理解するためには行政法並みに時間がかかります。

 ちなみ、民法をジャンル別に分けると、

・総則
・物権
・債権・債務
・家族法
・相続法

 詐欺や勘違い(錯誤)、金銭・物の貸し借り、お家を借りるときの賃貸借契約…等々、お上と国民の関係を定める行政法よりも身近な法律なのでイメージしやすく、他の科目よりも比較的楽しい法律だと思います。いうて自分は大の苦手でしたが…。

憲法

 これに次いで多いのは、今年の試験で大波乱を巻き起こした憲法。いわゆる日本の最高法規であり、国民の権利・自由を守るための法律になっています。こちらは細かく分けるまでもないですが、基本的に

・基本的人権
・統治機構

 という構成になっていて、条文数は100程度。これに判例が加わる形となり、基本的人権は判例問題、統治機構は条文問題が中心になります。試験対策としては、ほぼすべての条文を暗記する、判例の結論と文中の言い回しをひたすら頭に叩き込みことになるわけですが…。

 今年の試験に関していえば、これまでの試験史上最強クラスの難問揃いだと言われており、試験に向けて準備してきた努力が「ほぼすべて無駄になった」という方も多いことでしょう。もちろん自分もそうです。正直心が折れかけました。もし自分がハンマーおじさんだったら、即試験放棄からの、ドア城門突破、その足でパチ屋に向かい黄金騎士へ転生していたことでしょう。

商法会社法

 その名の通り、商売に関する法律&会社に関する法律で、毎年5問ほど出題されるのが定番パターン。比率でいえば商法1〜2,会社法3〜4 となっているため、基本的に会社法の勉強がメインになってきます。

 その会社法ですが、一通り理解するためには膨大な時間と労力がかかる科目だと言われており、実際自分もめちゃくちゃ苦手でした。会社の設立、株式、機関…等々、どれも馴染みがない方にとってはなかなかキツイ科目になる可能性大なので、頑張りすぎには要注意です。もっとも、会社法に関しては、ある程度勉強すれば2問ぐらいは解けると思うので、出題頻度の高い分野(=上記の3つ)に絞って勉強することが推奨されています。

基礎法学と一般知識

 残るは基礎法学と一般知識。前者は、法律用語だったり法律の歴史や運用方法的な問題が毎年2問出題されます。これに関してはほぼ対策が不可能なので、無視する受験生もかなり多いかと思います。

 後者の一般知識も同様、基本的に対策のしようがない科目で、高校・大学受験で出題されるような日本史・世界史、時事ニュース、個人情報保護法・著作権法・公職選挙法といった法律問題、そして毎年恒例の文書理解から出題されます。

 例を挙げると、令和4年の試験では「日本の森林率は中国の森林率より高いか否か」といったようなほとんどの人が知るわけがない問題が出たり、それよりも前の試験では、日本史でお馴染みの「張作霖爆殺事件」に関する問題が出題されたりと、受験生の反感を買うような奇問が多いです。

 さらに、この一般知識には「足切り点」というものがあり、法令科目と同様に一定のラインを超えることができなければ、その時点で不合格になってしまいます。もっとも、昨今の試験で足切りを喰らう人はごく少数みたいなので、さほど気にする必要はありません。とはいえ、これも大事な得点源になるので油断は禁物です。

 ここまでが基本科目となります。一方で、回答方法については、

・問題の大半を占める「5肢択一式」(4肢の場合もあり)
・空欄に正解のキーワードを当てはめる「多肢選択方式」
・問いに対して40文字程度の作文を書く「記述式」

 の3つで構成されています。当たり前ですが、この中で一番難しいのが「記述式」です。正しい知識を正確に覚えることはもちろん、それを短い文章でまとめないといけないので、日本語能力と素早い処理能力が求められます。

 ちなみに、自分が受けた令和5年度では、

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Y市議会の議員であるXは、2023年7月に開催されたY市議会の委員会において発言(以下「当該発言」という。)を行った。これに対して、当該発言は議会の品位を汚すものであり、Y市議会会議規則α条に違反するとして、Y市議会の懲罰委員会は、20日間の出席停止の懲罰を科すことが相当であるとの決定を行った。Y市議会の議員に対する懲罰は、本会議で議決することによって正式に決定されるところ、本会議の議決は、9月に招集される次の会期の冒頭で行うこととし、会期は終了した。これに対し、Xは、①問題となった当該発言は市政に関係する正当なものであり、議会の品位を汚すものではなく、会議規則には違反しない、②予定されている出席停止の懲罰は20日と期間が長く、これが科されると議員としての職責を果たすことができない、と考えている。

9月招集予定の次の会期までの間において、Xは、出席停止の懲罰を回避するための手段(仮の救済手段も含め、行政事件訴訟法に定められているものに限る。)を検討している。次の会期の議会が招集されるまで1ヵ月程度の短い期間しかないことを考慮に入れたとき、誰に対してどのような手段をとることが有効適切か、40字程度で記述しなさい。

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 という問題が出題されました。これでも簡単な方だと言われていますが、基本的に記述式では知識の習得のみならず「書く訓練」をしっかりしておかないと、余程の秀才でもない限り30点以上の高得点を取ることはかなり難しいと思われます。問題と複数の肢をみて「正解を選ぶ」択一と、問題の意味を理解して「0から答えを書きだす」記述では、勉強した内容が同じでも解き方の性質が違うので当然といえば当然。そういった意味でも、記述式の難易度はかなり高いと感じます。

今年の試験はどうだったか?

択一難易度

 先述した通り、自分は運良く一発で合格できたのでリアル試験は今回だけです。なので、これまでの試験と比較することはできませんが、個人的(世間含む)に感じた難易度は以下の通り。

・基礎法学→知らん
・憲法→激ムズ
・民法→苦手な自分ですら簡単に思える難易度。一部難問アリ
・行政法→普通ぐらい?
・商法会社法→マイナーな問題はほぼなし。そういう意味では、やや易しめ?
・一般知識→政経社は例年通り?文書理解はクソ簡単

 といった感じ。特に印象的だったのはやはり憲法。繰り返しになりますが、勉強した努力がほぼすべて水の泡になるほど難しく、行政書士試験のみを受ける受験層(自分含む)では太刀打ちできないレベルの難易度だったといえます。ただその反動として、来期の試験はさすがに難易度を落としてくると思われるので、これからの受験生にとってはそこまで心配する必要はないかもしれません。

 なお、今年の択一難易度は例年よりもやや難しいらしく、予備校によって多少前後しますが、いずれも令和4年度より平均点は低かったはずです。

記述式難易度

 大半の受験生が「これ待ち」=点数次第で合否が変わる記述式ですが、難易度的には「やや易しめだったかなー」って思います。合格圏内(ギリギリ落ちてしまった方も含む)の方であれば、問題で何を問われているのかはある程度分かったことでしょう。行政法の問題では、親切な誘導もありましたし。

 とはいえ、試験中は極度の緊張と疲労の板挟みで簡単な論点でも難しく感じてしまい、なかなか頭が働きません。実際、自分は一問も完答することができませんでした。具体的には、

・行政法→「Y市に対して(被告適格)」〇
     「差止め訴訟を提起」〇
     「仮の差止めを申立て」△

 △は仮の差止めを”申立て”ではなくて”求める”と書いてしまったので多少減点されているかもしれません。

・民法①→「物上代位」×
     「払い渡す前に」〇
     「債権を差押え」〇

 この問題は過去問の焼き増しで、【「払い渡す前に」「債権を差押え」】という要素に、「物上代位」という新要素が加わっただけの問題になっています。そのため、過去問をしっかり解いてた人にとっては「物上代位」以外の要素はしっかり書けたと思いますが、だからこそ「物上代位」が書けたなかった場合の大幅減点が懸念されていました。一部では「物上代位がない=バッサリ0点」と予想する人もいましたからね…。

・民法②→「契約不適合責任」×
     「代金減額請求」〇
     「損害賠償請求」〇
     「契約解除」〇

 こちらも重要キーワードである「契約不適合責任」を書くことができませんでした。なので、いわゆる鬼採点であれば、先の民法①と同様にバッサリ0点の可能性もありましたね…。

 この記述式のせいで合格発表まで((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル状態だったわけですが、いざ点数が開示されると、まさかの「42点」。予備校の採点予想(36点)を上回る結果だったので、今となれば過剰に心配し過ぎた感は否めません。

 それもこれもすべて、超鬼採点で有名なネット試験官のせい。これから初めて受験される方で、特にストレスに弱いタイプの方はネット掲示板(5ちゃんねる)などは絶対に見ないようにしましょう。信じるべきは予備校、特にLEC!!

自身の反省を踏まえて…

前日の夜まで勉強するな!早めにクソして寝ろ!

 運良く合格した身分なので偉そうことは言えませんが、仮に落ちていたとして、自分の勉強方法についてどう反省していたかな~って考えると、真っ先に思いつくのが「試験開始の直前まで勉強」してしまった点です。これはどの受験にもいえることですが、脳も肉体と一緒ですから疲労困憊の状態では本来のポテンシャルを引き出すことができません。なので、試験直前はさっさと寝て休みましょう。

 ちなみに自分は、「諦めたら試合終了」精神で当日の朝方まで勉強&当日の試験会場でも新しい論点を覚えようとしたりと、今思えばかなり無茶なことをやってしまいました。

 そして、いざ試験が始まると問題が全然頭に入ってこない…単純な間違い探し(例 権利行使の年数)であればスラスラ答えられるのですが、複雑な事例問題だったり捻りに捻った問題にぶち当たると、「あれはあ~で、これはこ~で」と整理するまでかなり時間がかかってしまいました。試験慣れしていないというか、だいぶブランクがあったがゆえの失敗だったといえます。

過去問の周回ばかりではダメ!?予備校の模試も受けろ!

 一部では「肢別信者」という方がいらっしゃいます。これは、各予備校が出している肢別過去問題集を何回も解くことが「合格への近道」と考える人達のことです。もちろん、それで受かっているのであれば、その人たちにとってはそれが正義だということは十分に理解できるのですが、実際に自分が試験を受けて率直に感じたことは、

「過去問だけではちょっときびしくね?」

 過去問の反復は基礎を固める上で最も効果的な勉強方法といえますが、実際の試験では基礎的な問題のみならず、かなり捻った問題も出てきたりします。この捻り問題をクリアするためには、その場の応用力が必要になってくるわけですが、過去問だけでそれを高めることができるのかというと、個人的にはちょっと難しいかなって思います。これも秀才であればもちろん例外ですが、普通レベルの能力しかない(自分含む)のであれば、過去問で基礎を固めつつ新しい問題も解いて応用力&対応力を高めていく必要があると感じました。その方が運要素が軽減し、より合格圏内に入る確率がアップするのではないかと思います。

 自分自身別に肢別信者ってわけではないものの、過去問&択一問題集を最低5周以上回して、予備校の模試も何回か受けましたが、もっと模試や本試験レベルの予想問題を解いておけばよかったなと、本試験直後はかなり後悔していた記憶があります。

 そう思える理由は2つあって、ひとつめは先述した通り「捻った問題に対応できる能力が身につく」こと、ふたつめは「模試で出た論点が試験でも出題されるかもしれない」…ということです。

 特に後者がかなり重要で、実際に今年の行政法(差止め訴訟)の記述問題が、どっかの予備校の模試か予想問題集なんかで出た問題と酷似していたらしく、その模試さえ受けていればほぼほぼ完答できたっていうケースもあるからです。「自分は試験に慣れているから別にいいや」「過去問完璧だから…」というプロ受験生の方も、できる限り模試を受けておいた方がいいかもしれません。

 逆にこれはやっといてよかったなと思うのが、

・条文の読み込み・条文を音声で聞く
・各予備校が出している判例&解説動画をチェック

 探せばまだまだあるかもしれませんが、とりあえずこのふたつはやっておいて損はなかったかなと。条文問題は定番中の定番ですし、新たな判例問題も出たりするので、何度もリピートして耳で覚えておけば、いざ本試験で出題されても対応しやすいです。

オススメの動画

 自分が使っていたリンクを貼っておきます。興味のある方はぜひ見てみてください

【見逃し配信】憲法を読む、全条文総まとめ編!〈作業用BGM!?〉【福澤繁樹・五十嵐康光】

【見逃し配信】行政法を読む【行政代執行法】まとめ編!〈作業用BGM!?〉

【見逃し配信】行政法を読む【行政手続法】まとめ編!〈作業用BGM!?〉

【見逃し配信】行政法を読む【行政事件訴訟法】まとめ編!〈作業用BGM!?〉

【見逃し配信】行政法を読む【行政不服審査法】まとめ編!〈作業用BGM!?〉

 この中でも、憲法と行政手続法は特にオススメです。

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 といったわけで、一通り試験について振り返りました。参考にならない薄ぺっらい内容になりましたが、これから初受験される方、リベンジ組の方、来期の試験で一人でも多くの方が合格されることを祈っております。







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