『ジュリエット釣り』 # 毎週ショートショートnote
「どうだい、ジュリエットは釣れたかい?」
「そう簡単には見つからないよ」
彼の名はロミオ。
悩める女子からの恋愛相談を受け付けている。
その中から、ロミオにふさわしい、いわばジュリエットを探し出そうという魂胆だ。
「君、ついにジュリエットを見つけたよ」
ある日、ロミオから連絡が入った。
「おめでとう」
「いや、そうでもない。ジュリエットには夫がいる。決闘しなくてはならないんだ」
河原で向かい合う2人の男。
一方はジュリエットの夫。
もう一方は、ロミオ。
2人の間でつむじ風が舞う。
その時、土手の向こうからひとりの婦人が走ってきた。
「ミツオー!」
ロミオはその声に振り向くと、その場に座り込んだ。
「ロミオ、その女性は?」
ロミオに代わって婦人が答えた。
「この子の母です」
そして、ロミオの肩を揺さぶった。
「あなたはロミオじゃないのよ。坂口三夫なの」
坂を省いてロミオか。
決闘はもちろん中止された。
そして、ロミオになりたかった男の物語も終わりを迎えた。
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