【俳句】夜業 夜長 金木犀
二階より夜業の父の帰り聞く
受験生の頃、2階の自室で深夜まで勉強していると、残業の父がガタゴトと玄関の鍵を開けて帰ってくる。
母と妹はもう寝んでいる。
下りていくと、父は「おう」としか言わず、こちらも、「お帰りなさい」が照れ臭くて、「うん」と返事をする。
黙って、急須にポットから湯を注いだ。
いい話子に語らせて夜長かな
父は仕事から帰って来ると、時々、
「何かええ話ないか」と尋ねてきた。
当時、反抗期の僕は、
「そんなもんないわ」とツッパっていた。
しかし、後年、いろいろ行き詰まった時、
「何かええ話ないか」と娘に尋ねている自分がいた。
そうか、あの時の父もきっと同じ気持ちだったのだ。
残り香と思いし理由は金木犀
最後は少し大人の句。
金木犀の香りを残り香と感じたのは、かの人の香水からなのか、あるいはその時に金木犀の香りがした思い出からなのか、それとももっと動物的な何かなのか。
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