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人のいるところに行きたい人たち

オーバーツーリズム、観光公害が問題になっている。
対策のひとつとして、観光客を他の地域に分散させることがあげられる。
他にもいいところがありますよ。
こちらにも来てください。
今なら、空いていますよ。

でもこれって、効果的なのだろうか。
あの人たちは、人のいないところに行きたいのだろうか。
例えば京都にしたって、観光地に行くまでの、すでにバス停からの混雑が何度も報道されている。
そして、観光地の混雑。
それを、知らないはずはない。
知っていていくのだ。
それでもあそこのお寺を訪れたい、あの仏像を一目拝みたいと言うのならわかるが、そんな巡礼者のような観光客は少ないだろう。
それならば、考えられることはひとつ。
あの人たちは、人のいるところに行きたいのだ。
穴場があろうが、そんな誰もいないところには行きたくもない。

先日、句会の会場が宇治のとある場所に変更になった。
せっかくなので、近くの満福寺でも見てみようと早めに出かけた。
黄檗山萬福寺。
インゲン豆で有名な、隠元禅師が1661年に開創。
日本三禅宗のひとつ、黄檗宗の総本山。
ちなみに、日本三禅宗とは、曹洞宗、臨済宗、そしてこの黄檗宗。
これまでに、JR東海の「そうだ、京都行こう」のCMにも入り上げられている。

さぞかし、混雑しているだろうと思って出かけてみたが、なんのことはない。
並ぶこともなく、すんなりと入れた。
ちらほらと観光客はいるが、はっきり言ってガラガラだ。

総門から

映えるポイントもある。
例えば、天主堂には弥勒菩薩が祀られている。
弥勒菩薩というと、広隆寺の弥勒菩薩半跏思惟像が有名だけれども、萬福寺の弥勒菩薩はこちら。

なんと七福神のひとり、布袋尊。
また大雄寶殿には十八羅漢像があり、その中の羅睺羅尊者がこちら。

自分のお腹をかっ割いて、仏の顔を見せている。
人の心の中には必ず仏が宿ると、自ら見せているらしい。
今回は萬福寺の宣伝が目的ではないのでこれくらいにするが、上げていくとキリが無いほど、他にも見所はたくさんある。
でも、誰も訪れていない。
誰もいないから、さらに誰も行かない。

昔は、観光地では、知っている人に穴場を聞いて訪れたりしていたものだ。
しかし、今の観光客は、穴場など関係ないのだ。
今の観光客が求めているのは、みんなと同じところにいる安心感。
だから、萬福寺の境内でのんびりと、緑の中を吹き抜ける風を感じる。
そんなことは、誰も求めていない。

このことを理解していないお役人や政治家が何をやっても解決はしないような気がする。
これは、東京人口集中の問題とも通じるのではと思っている。
人は、みんなの行くところに行きたい。

さて、黄檗山萬福寺、穴場でおすすめですよ。
京都駅から奈良線で黄檗駅まで約20分、黄檗駅から徒歩5分。
平等院はひと駅先の宇治駅ですが、こちらは結構混雑しているようです。

※タイトル画像は、黄檗山萬福寺斎堂の開梆かいぱん

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