『告白雨雲』 # 毎週ショートショートnote
告げられた思いは、それが叶おうが叶うまいが、空高く昇っていく。
しかし、告げられなかった思い、胸の奥深く秘められたままの思いは、湿気を含んだまま、空の低いところにとどまる。
高さで言えば、スカイツリーの少し上あたりだろうか。
見る人が見ればわかる。
あれが告白雨雲だと。
告白雨雲は、本来なら、あと何億年かはもつと考えられていた。
しかし、昨今の、温暖化の影響はここにもおよんでいた。
もう、いつ降り出してもおかしくないと言われている。
もし、そこから告白が降り出すようなことになれば…
「ありがとう。私のことを思っていてくれたのね」
「そうなんだ。もっと早く告白すればよかったね」
こんな祝福の雨になるのか。
それとも…
「あなた、これは何よ。君のポニーテールって、誰のことよ。私、そんな髪にしたことないわよ」
「いや、それは、違うんだ。それは、そのー」
こんな涙雨、いや、地獄の雨になるのか。
私はもう少し、あの告白雨雲に思いを馳せていたいのだが。
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