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【俳句】冬を惜しみながら〜碧 萃生

粉雪や古紙回収の「罪と罰」

半ドンの子ら風花を眉に受け

雪雲に包囲されたり敵味方

駅までを妻と歩みし寒月下

硬球の音らくらくと春隣

血管の図に似てゐたり枯桜

作業着のポケット多し春隣


古紙回収の朝、この冬一番の寒気み見舞われ、粉雪が待っている。
古新聞や雑誌に混じって、「罪と罰」の文庫本が出されていた。
新潮文庫の米川正夫訳。
それも、表紙にドストエフスキーの顔が印刷された、今から40年くらい前に出回っていた版で、僕もそれで読んだ。
出された方も、僕と同じくらいの年齢なのだろうか。
そうだとしたら何故今になって手放すことになったのか。
粉雪の中、僕は仕事場に急いだ。

幾たびも妻に訊かれて春来る

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