『ビール傘』 # 毎週ショートショートnote
おめでとうございます。
第一志望の球団に見事決まりましたね。
ありがとうございます。
子供の頃から、この球団のエースになることを夢見てきました。
この喜びを、誰に伝えたいですか?
父ちゃ…いや、父です。
父と2人で目指してきました。
僕が野球を始めたのも父のおかげです。
そう言えば、そのこうもり傘、いつも身につけていられますね。
ああ、これですか。
僕の父も、プロを目指していました。
しかし、ケガで断念したのです。
そこで、僕にその夢を託しました。
で、その傘は?
僕は来る日も来る日も、父を相手に投げ込みました。
そんなある日、父はこの傘を僕に差し出しました。
お前は、これを手放すなと。
その傘をですか?
プロの優勝と言えば、何ですか?
ビールかけですね。
そうです。
お前は、高卒ルーキーとして優勝に貢献する。
しかし、その時にはまだ未成年。
この傘を、パッとさしてビールを防ぐがよい。
その日を夢見て手放すな。
名付けて…
名付けて?
父と子のビール傘です。
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