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誰のための「人生100年時代」

「人生100年時代」とよく言われる。
CMでも、よく流れてくる。
多分、健康関連や保健のCMが多いのだろう。
国の政策でも、それを前提にしているかのようなものが飛び出してくる。
定年の延長、年金支給年齢の先延ばし。
特に年金なんかは、そのうちに70歳支給になりそうな勢いだ。
70歳でもらい始めても、100歳まであと30年はもらえるよ、と。

本当に100年生きるなどと、そんなことを考えてはおられないだろうか。
2022年の日本人の平均寿命は、
男性 81.05歳
女性 87.09歳
これは、言うまでもなく2022年に生まれた人の平均余命だ。
それ以前の人は推して知るべし。

とても100年時代には程遠い。
人生100年時代というのは、もしかすると100年生きるかもしれない時代ということだ。
ほとんどの人は、そのずっと前に亡くなってしまう。
これのいったいどこが100年時代なのだろうか。

厚生労働省の資料によると、1960年生まれ、今年64歳になる人が、あと一年生きて65歳になった時、その男性が100歳まで生きられるのは5%、女性では少し増えて17%らしい。
つまり「人生100年時代」を享受できるのは、100人に5人、または17人。
大学入試でいえば、なかなかの難関校だ。
あなたは、この5人、あるいは17人に選ばれる自信があるだろうか。
そんなに運のいい人生だっただろうか。
100年時代などと大きな声で言えるのは、せめて半数以上の人がそこまで生きられて初めて言えるのではないか。

「ライフシフト」という本がベストセラーになった。
副題が「100年時代の人生戦略」だ。
僕も読んだが、この考え方を否定するするつもりはない。
こうして前向きに自分の人生を設計していくことは大切だし、むしろ若い人にこそ読んでもらいたい本だ。
少なくとも、先輩世代よりは長生きする可能性が高くなっているのは事実なのだから。

しかし、この自分のための人生設計を、油断していると誰かにいいように利用されてしまう。
利用しようとする誰かの第一番目が国だ。
最初にも書いたように、あたかも誰もが100年生きることを約束されているかのような政策。
国民はいつまでも働きたがっているなどと、都合のいい解釈をして、定年の延長、合わせて、年金支給年齢の先延ばし。
もちろん働きたい人もいるだろうが、大半は働かなければならないから働く、そんな人だろうと僕は思っている。
僕も働いているが、国が言うほど働きたがっているかといわれれば、それほどでもない。
年金支給も、いったいどこまで遅らせるのだろうか。
このまま70歳支給なんかになってしまうと、仮に20歳から50年支払い続けて、年上世代を支え続けて、自分が支えてもらうのは10年にも満たない、そんなケースが増えてくる。
働くということはそういうものだと言われればそれまでだけれども、実感としては、なかなか納得できない。

100年生きて、増えた老後の時間をみんなでゆったりと過ごしましょうと言うのなら大賛成だ。
しかし、今は老害だ、暴走老人だ、働かないおじさんだと罵られて、長生きはちっとも歓迎されていない。
国の言う100年時代とは、
「100年生きて働いて、しっかり税金と年金を納めましょう。年金は納めるもので、もらうものではありません」
そう言うことだ。

万が一100年生きても大丈夫だと思える備えをすることは大切だが、それを誰かに利用されないようにしよう。
くれぐれも、100年時代なんて言われて浮かれてしまうことのないように。
むしろ、国に知られないようにこっそり100年生きた方がいいかもしれない。
油断していると、一生搾り取られて、まだ足りませんなんてことになりかねないから。

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