『サラダバス』 # 毎週ショートショートnote
バスに飛び乗ると、アナウンスが流れた。
「本日はサラダバスをご利用いただき誠にありがとうございます」
乗客は僕ひとり。
運転手さんの後ろの席に座った。
動き出すと、運転手さんが話しかけてきた。
「今日は、どうされました?」
僕は話し始めた。
ある人と一緒に暮らしていたんです。
でも、その時の僕は、季節の変わり目も気づかないほど、病んでいたんです。
その人にも辛く当たってしまって、その人は、自分の国に帰ってしまいました。
でも、僕も変わりました。
今ならやっていける。
そう思って…迎えに行くんです。
景色は町から海岸、そして高原に変わる。
運転手さんが話し始めた。
きっと大丈夫です。
朝起きたら、2人でカーテンを開けなさい。
フクロウの鳴き声でさえ怖い夜もありますよ。
でも、2人が心を開けばきっと乗り越えられます。
バスは高原の中で静かに停車した。
着きましたよ。
「サラダの国」です。
さあ、迎えに行ってらっしゃい。
2人の夢と心をかごにいっぱい詰めて。
※「サラダの国」はもちろん、イルカさんの「サラダの国から来た娘」からです。
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