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読書記録#97 心理学


図書館にて拝借

心理学部に通う学生、専門家を目指す人向けの本格的な心理学の教科書だそう。

もはや読書というよりかは、心理学の学習という感覚に近い。

●読む目的

・読書記録#96同様、人間の本質を探りたい。
・自己理解のため。自分をコントロールするために、人間の心理的、肉体的なメカニズムを知る。→レジリエンス(弾力性)強化

●読書記録


・情動性

情緒的な激しさの傾向を「情動性」と呼ぶ。情動の経験が強い傾向であり、また、ものごとに対して情動的に反応しやすい傾向である。そのもとには、個人の気質的な個性があり、その傾向は生まれてから大きくなってもあまり変化することはない。プラスの情動もマイナスの情動も強く感じ、反応するのだが、特にマイナスの情動を激しく感じやすい場合に、適応上不利になりやすい。
一方、情動制御の対処については学習が可能であり、そのやり方によって、かりに情動性が高くても不利に働かないようにある程度持っていくことができる。情動制御とは、内的な情動状態とその生理学的過程の発生と強度と持続について、それを開始し、維持し、調整し、変化させる過程である。
制御が弱いタイプの場合のなかで、行動の制御や環境に道具的に対処する能力が低く、とくに、注意や認知の過程を通じて情動を制御するのが苦手な者は、外に向かう種類の問題行動、つまり、非行とか暴力などの問題を起こしやすい傾向がある。



・欲求不満

欲求に基づく行動が、何らかの妨害要因(前節のストレッサーと考えてもよい)によって阻止されている状態を欲求不満という。欲求不満に陥ると、人はイライラしたり、無意味な行動や無駄な行動を繰り返したりする。また、人にあたりちらしたり、急に涙をこぼしたりすることもある。人がこのような欲求不満を解消し、適応を維持するためにとる行動を適応の機制というこれらの行動は、半ば無意識的に行われるものである。
欲求不満に耐える力を欲求不満耐性という。どの程度欲求不満に耐え、それをどのようにして解消するかは精神的健康を考えるうえできわめて重要である。円滑な社会生活を営むためには、人は適度に欲求不満に耐える力を養い、適切な方法で欲求不満を解消する習慣を身につけなければならない。どの程度の耐性が必要かは、時代やその人が所属する社会や文化によって異なる。


・目標達成の欲求

人は成長するにつれて、自分らしさを求めるようになる。親元から離れて自分の力で生活してみたいという自律の欲求、大学受験や就職など、目標としていることを成し遂げたいという成就または達成の欲求などはかなり高次な欲求である。すでに述べたように、これらの成長欲求が起こってくるのには、より下位にある欲求がある程度満たされていることが必要である。そうでなければ、それらの欲求を実現することはかなり難しい。
やる気が起こるかどうかということ、自分のしたい目標を現実的かつ具体的に決められるかどうかということはおおいに関係がある。バンデューラとシャンク(Bandura&Schunk, 1981)は、より具体的で身近な目標を立てた場合の方が遠い大きな目標を立てた場合よりもセルフ・エフィカシー(後述)が高まり、課題の成績がよくなったと報告している。したがって、たんにいい成績がとりたいというよりも、どのレベルの成績をとりたいのかがわかっている方が動機づけは高まるといえる。
→セルフ・エフィカシー(自己効力感)


・感情と適応

原始社会では見知らぬ他者はおおかた外集団であり、敵である可能性が高かったから、見知らぬ他者に出会って緊張し身構えることは適応的であった。だが、今日、親睦パーティで初対面の人に対して後込みしたり、採用面接官の前で緊張のあまり何も考えられなくなったりするのは、適切な行為とは言い難い。感情がしばしば認知を妨害するするものと見なされているのは、適応すべき環境が変わってしまったのに、心の設計図は必ずしもまだそれに十分対応できるようになっていないことが関係しているかもしれない。



・自尊感情と自己評価

自尊感情は自分自身を全体として肯定的に評価することであり、人間が心理的に十分に機能するための基盤を支えるものとして、これまで多くの関心を集めてきた。すなわち、自尊感情が高い場合には、ストレスが低く情緒的に安定し、困難に直面してもあきらめず積極的に対処しようとし、達成へ強い動機づけをもち、人に対する緊張が低く周囲の人々から好意的に評価される。反対に、自尊感情が低く、自分を十分に尊重できない場合は、学習への動機づけや親和性、人生満足度などが低く、非行や抑うつ、攻撃行動などさまざまな問題が生じやすい。


・重要他者と自己評価

自己評価は、自己に対して自分自身が下す評価である。しかし、そこには他社も関わっている。社会的比較理論が提唱するように、他者が自己との比較の対象となるだけでなく、他者はまた自己評価の視点や基準をも提供する。自分の愛する人が側にいたら何と言うかを考えながら行動するのは、重要な他者が提供する基準を参照しながら、自分のあり方を評価し制御していることを示唆している。



・親密関係の意味

私たちが社会的関係から得ているものはさまざまある。

①安心と心地よさ
(最も親密な他者との関係において得られる愛着)

②所属感覚
(友人や同僚関係などにおいて、態度や関心を共有するなかで得られる社会的一体感覚)

③自己価値の確信
(自分が役に立つ価値ある人間だということを、他者が認めていてくれること)

④同盟・同肌感覚
(必要時には協力・援助を提供してくれる人がいるという感覚)

⑤指導
(教師や友人などとの関係において助言や適切な情報を得られること)

⑥養育の機会
(私たちを必要とするものに対してその安寧に責任をもつことにより、自己の重要性に気づくこと)
実際、相互の情緒的心理的親密感で結ばれた社会的絆が幸福や人生満足の主要な源泉であることで、多くの研究が一致をみている。



・結婚状態と抑うつの関係

→「同棲」の抑うつ率が高いのが意外だった。

友人、家族、地域との結びつきの程度や頻度が高い者は人間関係が乏しい者に比べて、明らかに疾病率や死亡率が低く心身の健康度が高い。それは、親密関係がたんにストレスによる悪影響を防御するだけでなく、未知への冒険、成長、達成を促進する機能を持っているからだと考えられている。


・身体的魅力、裁判所にて

公正さが求められる裁判においてさえ、魅力的な被告はより寛大な判決を受ける傾向がある。


・パートナー選びにおいて

伴侶選択には性差があることが知られ、男性は女性よりも年下で身体的魅力を備えた相手を望み、逆に女性は年上で経済力のある相手を選好する。これらはそれぞれ生殖可能性と子の成長により望ましい環境を提供することに関連する要因とされている。


・排斥→抑うつ等マイナス感情

拒絶や無視はその対象者に、抑うつ感情、孤独感、不安、疎外感など強い忌避反応を引き起こすだけでなく、最近の研究は、対象者は身体をもってそれを受け止めることを明らかにしている。排斥された人は、そうでない人に比べて室温を低いと感じ、スープなど温かい飲み物をより肯定的に評価する。実際に指先で測定された体温は低下し、温かいスープを手にして暖をとった場合は冷たいカップを握った場合より否定的感情が改善した。

→落ち込んでいる人がいたら、温かい飲み物が入ったカップを渡すといいかもしれない。


・抑うつと自殺行動へのルート

否定的な自己評価と低い自己尊重感と抑うつには関連がある。自己尊重感と抑うつお絶望感が1つの因子(抑うつ/適応[合成]変数)としてまとまることが見出されており、この因子が自殺企図を予測すると考えられている。抑うつと自殺行動の間にも強い結びつきがあり、これらの発生要因には生物学的規定因、疫学的関連要因、社会心理的ストレッサーがある。
特にこの第3者のリスク要因に焦点をあててみると、6つの異なったルートが抑うつ/適応[合成]変数につながっていることが明らかになっている。

①重要な領域において(身体的魅力と社会的コンピタンスと学業成績、さらに社会的行為)コンピタンスが低く、不適応である。

②仲間および親から受け入れられていない。

③重要な領域においてコンピタンスと適応を欠いているが、親からサポートを得ていた。

④仲間にとって重要な領域で低い自己評価をしているが、他の学業や社会的行為では肯定的自己評価をしており、親からの賛意も得ている。

⑤仲間に重要な領域で成功しており、だが、親にとって重要な領域(学業や社会的行為)での不適応を重視している。

⑥仲間と親にとって重要な領域で、低い成功であっても、賛意を得ていると感じている。ただ、きわめて自己批判的で高い非現実的な基準をもっている。


・心の健康とは

健康とは、個人の持つ心身の機能が十分に発揮されていて、体中に活力がみなぎり、ものの考え方に柔軟性があり、ものごとに積極的に取り組め、幸せを感じることのできる状態である。それは、たんに体が健康であるばかりでなく、心も健康であり、対人的・社会的にも受け入れられ、認められている状態である。

→昨今、こんな上記のような完璧な人間はかなり少ないのでは?

私たちの周囲には、見るからに健康そうに見える人もいるが、その一方で、何か不安げでわ言いたいことも言えず、寂しそうにしている人もいる。このような人は、どこか健康を損ねているに違いない。



・心が健康な状態とは?具体的に

⑴現実認識の的確さ
心が健康な人は、不健康な人に比べて自分の捉え方や他者への見方が的確であり、現実的である。自分を過大に評価したり、過小に評価したりすることが少ない。不健康の度合いが大きくなると、自分の捉え方が不確かになりわ自分自身や周囲の人々に対する見方が歪んでくることが多い。

⑵セルフ・コントロール
心が健康な人は、適度に自分の行動を抑制し、社会的に受け入れられる振る舞い方をする。過度の攻撃性や性的衝動をそのまま行動に移すようなことはせず、その場にふさわしい形でそれを表現することができる。心が不健康になると、そのような抑制機能が失われ、自分でも後悔するような、その場にふさわしくない振る舞い方をしてしまうことがある。

⑶自尊感情
心が健康な人は、自分の存在と価値を認め、ありのままの自分を受け入れることができる。誰が他の人の考えに支配されたり、意のままに動かされたりしない。心が不健康になると、誰かの考えを気にしたり、常に誰かが喜ぶようなことを言ったりして、ありのまあの自分を見失いがちになる。

⑷親和的関係の形成
心が健康な人は、人と親しく交わり、他者を認め、人と交わることによって自分を高めようとする。人と交わることに喜びを感じ、互いに楽しもうとする。心が不健康になると、自己防衛的になり、自分の殻に閉じこもる。周囲の人と親密になることに抵抗を感じ、人に恐れを抱くようになる。

⑸生産性
心が健康な人は、何ごとにも積極的に取り組み、受け身で仕事をしない。効率よく仕事をこなし、生産的である。忙しいときでも、仕事に生きがいを感じ、自分が取り組んでいることに積極的な意義を見出すことができる。心が不健康になると、余計なことに気を使い、一つのことに熱中することができない。その結果、つねに緊張感や疲労感を感じ、仕事の効率が悪くなる。


・ストレッチマネジメント

ストレス事態を克服するために、さまざまなストレッチマネジメントプログラムが開発されている(Auerbach&Gramling, 1998)

ストレッチマネジメントには、瞑想、筋弛緩によるリラクセーション、自立訓練、ストレス免疫訓練、動作法など、さまざまなものが含まれる。筋弛緩によるリラクセーションとは、身体各部の筋肉を緊張させたり弛緩させたりしながら、徐々に身体を弛緩させ、心身ともにリラックスした状態へと導いていくものである。自立訓練は自己暗示を用いてリラクセーションを誘発するものである。ストレス免疫訓練は、マイケンバウム(Meichenbaum,  1985)によって開発された予防的なストレス対処法である。これはリラクセーションやストレス事態への認知的評価の修正、対処行動の習得、環境調整などを用いる総合的な訓練法である。いずれもストレス事態を解きほぐし、生理的・身体的なバランスを回復することによって、ストレス反応を予防しようとするものである。

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