見出し画像

「純ジャパ」でもできる!英語でIR

 私は海外経験なし、留学経験なしの純粋ジャパニーズ(そういう人を「純ジャパ」と呼ぶそうです)。そんな純ジャパの私でも、年に数百件の海外投資家との面談を英語でやっていました。なんとかなるものです。どう「なんとかしてきた」のか、元同僚とLiveチャットしたので、そのエッセンスをまとめます!【Liveチャットの動画は↓↓最後↓↓にありますので見てください!】

英語の学習履歴

 純ジャパの私は、大学卒業時のTOEICスコアは600くらいでした(90年代)。すごく悪くもないですが、すごく良くもないです。
 英会話学校にも通い、IRをはじめた頃でTOEIC700強くらい。とはいえ、スピーキングは上手ではなかったです。(最後の方は英語力も上がりましたが、今思うと怖いもの知らず。)

IRで使う英語の覚え方

 どう一歩を踏み出したか。最初は、基本、真似です。まず文章の真似。まずメーカー時代は、IPO時に海外投資家に配布する資料である英文目論見書(もくろみしょ)の文章を真似することからはじめました。特にSummaryとして最初に載っている会社概要の部分と、MD&A(*)と呼ばれる業績分析の部分です。
 そしてIRの経験が長く英語ができる先輩や上司がいたため、先輩たちの口調を真似することも重要なことでした。
  (* MD&A: Management's Discussion and Analysis; 経営者による財政状態及び経営成績の検討と分析)

初めて一人で英語でIR対応した時

 初めてメインスピーカーとして英語で対応したのは、確か楽天に転職後です。英語堪能な上司が海外転勤し、一人でやらざるを得なくなった時のこと。背水の陣でした。度胸だけでは玉砕したことも何度もあります。が、数少ないフレーズを使いまわすことでなんとかクリアするようになりました。よく使ったのは、MD&Aにあった業績分析のフレーズです。

① A increases (decreases) by X% due to ...
② A consists of B and C. B is accounted for Y % of A.
③  We expect that ....

  IRの会話って①売上や利益が何パーセント伸びてその要因は何かということ、②その内訳は何と何で、何パーセントを占めるか、それと③今後の予想、が話せればだいたいなんとかなるんですよ。英文目論見書にも何回も出てきたフレーズでしたから、それを使うしかないと思ってやってました。

会社概要は「型」を作っていた

 初めて会う投資家には、業績説明の前に、会社概要など定性的な説明が必要です。それには、説明の「型」を作っていました。これも英文目論見書のExecutive summaryを参考にしました。IPOならエクイティストーリーの部分です。それをパターン化して覚えてしまうのが勝ちです。パターン例を挙げます。次のような要素があれば、業種を問わず、対応できるはずです。

一言でいうと: We are one of the top-class XX companies in Japan.

歴史・理念: The company was founded in 19XX.  The purpose of our business is.....

ビジネスモデル(顧客層・対象市場・収益化)
Our customers are..., Our target available market is  ....
We receive commission fee to the X transactions and monthly fixed fee...

強み (シェア): Our strength is...., Our market share in X market is XX%。

成長戦略: There are three points in our growth strategy. Firstly..., secondly..., lastly...

 たぶんこれ、一番大事です。ただ、私の場合は、なんとなく作っていたので、ネイティブチェックもそこそこでした。これから取り掛かる方は、是非一度、10分か15分くらいのナレーションとしてスクリプト(文章)に書き出し、ネイティブチェックを細部まで行ったものを作ってください。今思えば、単語の選び方やSの有無など、細かい点にも気を配るべきだったかと思っています。そして何度も何度も声に出して練習し、内容を覚えると良いと思います。考えなくても口をついて出てくるくらいです。可能なら、同僚相手にロールプレイングしてみてください。もしあなたがベテランなら、若い人にもこのプロセスを経てチャンスを与えてほしいです。

いかに英語力以外のところで勝負するか

 もうひとつ意識していたのは、英語力以外のところでいかにわかりやすくするか。IRの会話は、因数分解が大事!いかにロジカルかつシンプルに説明できるか頭をフル回転させていました。(英語を話す回路とパラレル処理で大変ですけどね。)
 たとえば質問は営業利益 (Operating Profit, OP)の傾向とすると、売上高(Sales)と営業利益率 (OP Margin)に分解して、それぞれの増減要因を due to とか because of とかを使って説明していけばいいわけですよ。(それが上の①とか②です)それをセグメントごとに話していけば最後まで説明できます。
 定性的な説明では、構造が命。上記の成長戦略でも、ポイントは3つです、と先に伝えることで、相手が理解しやすくなります。私の場合は自分が言いやすくシンプルな  There are three points などのフレーズを多用していましたが、できればネイティブにきちんと見てもらった方がよいです。

 それから、よく使うトピックは、あらかじめ英語の資料を準備し、聞かれたらパッと見せられるようにしました。たとえば市場規模や競合他社との比較表。日本独自の規制。決算説明資料には載せないけどよく聞かれること。口頭で説明すると時間もかかるし不正確に伝わる怖れもあるので、紙で見せることにしました。そうして英語力のなさを他で補っていたのです。

今だから思う、最初にやっておくべきこと 

 軽視しがちですが、まず発音。というか音読。私の場合は、リスニングに課題がありました。きちんと発音できないことには、聞き取れない。スピードという観点でも、早口で話せないと、早口のネイティブスピーカーの会話は聞き取れない。昨年、発音矯正レッスンを受けました。子音、母音の基礎からやり直し、短い文を繰り返し早く話す練習もしました。正しく早く英語を話せるようになると、だいぶ聞き取りできるようになりました。もちろん自分の話を聞き返されることも減っています。これを20代台前半に身に付けていたらこんなに苦労しなかったのに、と思います。

 そして丁寧語の英語。仕事ですからNoと言わなければならない時もあります。I'm afraid I have to say,... などの表現をもっと使えていたらよかったです。

 どちらも、英語の格が上がります。例えていうと、外国人で日本語ペラペラなんだけど、発音がたどたどしくかつタメ口だと、真剣な内容でも重みが伝わりづらいことがありますよね。それと同じことです。会社の代表として話すのであるから、きちんとした印象を与えたいものです。
 そして、発音と丁寧語に自信が持てると、英語で話すことにためらいがほぼなくなります。英語で外国人とビジネスをすることに心理的な抵抗が下がることも大きなメリットではないかと思います。

もっとも重要なこと

 最後に重要なこと。英語が下手でも、果敢に挑んでいった自分の姿勢だけはほめたいと思います。ミーティングルームには海外投資家と私だけ。会社の実情を伝えられるのは私だけと覚悟しました。その前提として、会社への愛があることだと思います。ベタですが。ほんとこれです。

動画はこちら!!

 元楽天IRの同僚で、現在、自己肯定英語トレーナーをつとめるJBインターナショナル代表の千葉絵里子さん。実は、上述の私の英語の発音レッスンの先生です。私の発音とリスニングをを劇的に改善させ、その後も英語学習を楽しむようスイッチを入れてくれました。そんな彼女もIR担当者時代、英語のミーティングには心理的抵抗があったそうなのです。ふたりで「あの時、こうやっていればもっと英語のIRが上手くできたのに!!」と、振り返っています。ご覧ください!


ー END ー


   

 


IR(インベスター・リレーションズ)の経験などに基づいたテーマで記事を書いています。幅広い層のビジネスパーソンにも読んでもらえたら嬉しく思います!