今年読んだ本_観たドラマ

2019年 読んだ本・観たドラマ 2選ずつ

今年も残り少なくなりました。2019年の振返りとして、印象に残った本とテレビドラマを二つずつ。(昨年以前の出版も含みます)

FACTFULNESS 

 ハンス・ロスリングなど著、上杉周作・関美和 訳 の『ファクトフルネス』がひとつめ。データとグラフが色々な思い込みを捨てさせ、読者の世界を見る目を開かせてくれる本です。先進国の人たちにとって、新興国のイメージは何十年も前のものに縛られていたり、生活習慣や価値観には差異があるものだと思い込んでいたりしたことを気づかせ、打ち破ってくれます。人間は住む地域や人種が違っても、そう大きくは変わらないのです。

 この本のいいところは、それらの思い込みが、どういった本能から生まれるのか、を解説しているところ。
 たとえば、パターン化本能や直線化本能。ビジネス上で様々な分析をする際も、ついつい過去の延長線上の直線で考えたり、過去の成功例や失敗例と同様のパターンと決めつけてしまったりすることがあります。物事を悪くとらえがちなネガティブ本能は、仕事相手がネガティブで困ったことを思い出しました。自分や誰かが、思考停止状態になったときには、「それは単純化本能だよ」などとつぶやいて事実(ファクト)をしっかり見るよう教えてあげたいな、と思います。 手元において、ときどき読み返したい本。

会計の世界史

 田中靖浩著の『会計の世界史』は2018年9月出版です。「会計」も「世界史」も堅苦しいテーマですが、それに美術や音楽やビジネスのエピソードを上手に取り合わせていることで、とても読みやすく面白い本でした。タイトルは会計と芸術の世界史、でもいいんじゃないか、と思うくらい。

 会計の起源は、儲けを分配する目的、つまり「自分のため」の会計だったのが、いずれ「他人のため」に説明責任を果たす財務会計に進化し、さらに再び「自分のため」の管理会計も出現する、という理念の進化のツボを、誰にでもわかるようなことばで書いています。会計の起源がイタリアだったのが、オランダ、イギリス、アメリカ、グローバルへと広がっていく流れもあいまって、旅行記を読んでいるような気分になります。

 その上で、大事なポイントは芸術家や実業家のエピソード(父子が多い)を交えて書かれているので、楽しいです。知らなかったこともたくさんあって、「へー」を20回くらい言いました。私のお気に入りは、「ヨーコ的コスト」と「マイケル的リターン」。これ以上は、本を読んでみてください!

まんぷく

 ドラマ編のひとつめは、NHKの朝ドラから。日清食品グループ創業者の安藤百福とその妻・仁子(まさこ)の生涯を描いたもの。今まで観た朝ドラの中で(そんなにたくさん観てないけど)一番面白かった。

 「面白い」のポイントは、ビジネスエンターテインメント的なところ。安藤百福(劇中は長谷川博巳演ずる立花萬平)は、今でいうシリアルアントレプレナーです。22歳でメリヤス販売会社を立上げたあと、幻灯機の製造、炭焼き事業、バラック住宅の製造、製塩や学校の設立など、さまざまな事業を手がけました。50歳で理事長を務めていた信用組合が破綻し、一文無しになります。そこから借家の自宅の台所で開発をはじめたのがチキンラーメン。すごい・・・。
 途中には今でいう「ベンチャーあるある」的なエピソードがたくさん出てきます。調子のいいことをいって騙す友人、従業員の離反、役所の無理解。資金繰りの困難、破綻、世間の非難。ゼロからの製品開発の苦渋、マーケティングの失敗。そして大成功。つまづいてもつまづいても立ち上がる、その執念は「人の役に立つことをする」という強い想いから生まれていることも描かれています。
 危機を乗り越える百福のそばには、いつも妻の仁子(劇中は安藤サクラ演ずる安藤福子)がいて、のんびりとした空気で場を和らげ、またしっかりと支えていました。安藤サクラ、演技が上手いな~と思いました。あと世良役の桐谷健太がいい味を出していました。

参考:安藤百福クロニクル

STAR TREK DISCOVERY

 最後は、CBS All ACCESSによるアメリカのSFドラマ、スタートレック ディスカバリーです。私はCSのSuper Drama!で観ています。スタートレック自体は1966年にはじまったものすごく古いSFドラマシリーズで、22世紀から24世紀を舞台に、地球人や異星人が宇宙空間で戦ったり恋愛したりするドラマです。今回のディスカバリーは6作目で、最新映像技術を駆使してSF感が100倍グレードアップ。並行宇宙や、胞子ネットワークが出てきたりする概念は、企画・製作総指揮を執るアレックス・カーツマンが別で手掛けた『Fringe』シリーズと似ています。ちなみに音楽の使い方も似ています。

 好きなのは、ソネクア・マーティン=グリーン演じる主役のマイケル・バーナム。シリーズ初のアフリカ系女性の主役ですが、理論的なバルカン人に育てられた地球人という設定で、普段は非常に知的で冷静ですが、たまにほとばしる感情的な面とのコントラストが素晴らしく、かっこいい。

 昔のシリーズでは違和感を感じた白人男性至上主義から一変し、多様性に富んだキャスト・役割設定であることも評価のポイント。ダイバーシティやインクルージョンの行く先を見せてもらっているようです。平和とは?家族とは?幸せとは?も考えさせられます。
 Super Drama!ではまだ放映途中です。息つく暇もない展開で緊張感があり、とっても面白いです。

気になっているもの

 多読という方でもなく、ドラマも家人が見ているものをなんとなく一緒に見ているだけなので、まだまだ気になっていて手をつけていないものもたくさんあります。

 主なビジネス書は、本の要約サイトのflierで内容をつかむことができます。(拙著も要約していただけました)。ここでチェックした中では、『Think Civility』『82年生まれ キム・ジヨン』などは、要約だけでなく全文を読んでみたいと思っています。

 また、小説家では宮部みゆき、三浦しをん、恩田陸などが好きですが、彼女たちの本もまだまだ読んでいないものがたくさん。

 来年はもっと本でひきこもりたいと思う年の瀬でした。

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IR(インベスター・リレーションズ)の経験などに基づいたテーマで記事を書いています。幅広い層のビジネスパーソンにも読んでもらえたら嬉しく思います!